第8話 先導しているようです
「エミリア、大丈夫か?」
「ええ、やっぱり少し疲れてるのかもね」
私はため息を吐いて、頬をぐにぐにと
さすがに理由もなく、あんなふうに悪意をぶつけられるのは嫌な気分だ。
エリックも私に釣られるようにしてため息を吐いた。
「昨日、伯爵さまにいただいた本を私も読んでみたんだ」
「ああ『巡り合う運命』ですか。序盤は面白いんですけれどね」
「いや、あんなもの……侮辱以外の何物でもないだろう? 特に悪役のレミリア! エミィをモデルにしてるっぽいのが気にいらないね!」
「そこですか?」
「エミィをモデルにしてるなら、彼女の悪事の程度は低すぎる!」
拳を握って力説するエリックの様子に私はほっとした。
馬車に乗った時には、怒りのあまりに倒れてしまうんじゃないかと思っていた。今は元気を取り戻したようだ。
「ふふ、そうですね。私はあんな
エリックの様子に私も何だか元気が湧いてきた。
私たちがやることは一つ、あのマリアベルをぎゃふんと言わせることだ!
というか、彼女の場合は一度とことん分からせないと理解してくれないだろう……。
「行先を勝手にうちにしてごめんね。でもうちには今、第一皇子殿下がきていらっしゃるから」
「どうして殿下が?」
「そりゃ弟の尻ぬぐいの為さ」
第一皇子であるアーサー殿下は、幼い頃から正義感が強いと有名だ。皇太子になってからは貴族の不正を暴き、正しているという。
婚約者も淑女の鏡とデビュタント《社交界デビュー》から評判だったクロディーヌさま。
二人ともとてもお似合いで、
「皇太子殿下はお忙しいのではないかしら?」
「身内の後始末さ。かわいい弟を反逆者にしたくないんじゃないか?」
エリックとアーサーは
それより……。
「やはり、あれは暴動を誘導してるととられても仕方ありませんよね……」
「あんなの
そう言われればそうなんですけれど。
私のはっきりしないような様子にエリックは、声のトーンを落としてじっと私と目を合わせた。
「エミィは分からないだろうけれど、マリアベルは……あの子は言葉で聞いて理解するような子じゃないよ……」
「まあ……そうでしょうね……」
言って分かるなら、今まで何度も私とエリックが口頭注意した段階で聞いてくれただろう。
暗い雰囲気のまま、馬車はアングラード公爵家へ到着した。
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