機人、外交デビューする

 数日して、ポトポトにイギニス大使館がひらかれた。

 そこで仕事をするのは、ペーランドで出会ったチャールス全権大使だ。


 豆腐ハウスだと、さすがに国際問題になりそうだから、ドワーフとケムラーに頼んで作ってもらったのだが……。


 ドワーフのTHE要塞っていう建物に、オーマの伝統様式が追加された室内。

 実に奇妙だ。アーサー王が第二次世界大戦に参加してたら、こんな感じか? 


 まあいいや、一応ポトポトの中じゃ、一番上等な建物なんだから。

 これで我慢してほしい。


 エルフ達の一部は、まだ一部豆腐ハウスに住んだままなんだからな!


「ンッンー!素晴らしい執務室ですな。まさに仕事をする為の空間。」

「この部屋に比べれば、イギニスの執務室などッ、ホテルのような物です!」


 うーん、チャールスのディスり具合からすると、満足度20%ってとこだな。

 ちょっと付き合ってわかったが、イギニス人は面と向かって文句は言わない。

 ただその代わり、とても回りくどくディスる。まるで京都人だ。


 こいつらの価値観では、いかに相手をディスるかが重要事項なのだろう。

 ともすれば、出世の基準になっているとしかおもえん。


「……では、早速仕事に取り掛かってもらおうか」

「議題は、我と友邦関係を結ぶにあたって、何を取引するか、だ」


「ンッンー!素ン晴らしいッ!……単刀直入、実にイイ!」


「では機人様に、ズバリ申しましょう!」

「インダから飛来し、イギニスを襲う古代竜、これを討ち果たしてほしいのです!」


 わぉ!古代竜!?なんか凄そうなの出てきたなぁ……?


 いや、まてよ?ダンジョンの謎生物はバッテリーの材料のカウントを、ちょっとだけあげた。ひょっとして古代竜ともなると、すっげーカウント上がるのでは?


 となると、この古代竜をしばくのは、俺にもメリットになるかもな。


「こちらの見返りとして、ポトポトをイギニスの友邦として迎え入れ、南インダ会社の株券の5%を、機人様に差し上げます!」


 株券だぁ?……ふーむ、こういう経済の話は全く分からんぞ。

 もっとこう、わかりやすいモノが良いんだけど。


 あとイギニスの金銭価値観、これが全然わからん。聞いてみよっと。


「その株券を金に換えれば、イギニスでは何が買える?」


「ンッ、ポトポトほどの村が1ダース、そのままそっくり買えるかと。」


 うーん、うさんくさい。


 こう、すげえ鼻と顎の尖ったキャラクターが出てくる漫画のアレみたいに、いろいろと難癖付けてきそうなんだよなあ、こいつら。


 物資じゃなくて、株券とか金っていうのがもうね?


 この力と食い物以外、まるで意味が無さそうな世界で、お金サイコーってやってるの、逆にやべー連中なんではなかろうか?


 となると、うん、こうしよう。


「……古代竜の討伐ともなると、即答はできん」


「……そこで、まずは外交を行うとしよう。外交関係を結ぶというのなら、国主同士で話し合うのが筋だ。ソデザベス女王と合わせろ」


「ンッンー!全権大使である、この私では不足と言うのでしょうか!」


「……イギニスがどれだけ被害を受けているのか、見せたくないのか?我の同情を引けば、割引してもらえるかもしれんぞ?」


 チャールスはその額を汗で光らせている。ほうほうほう?


「……ですが、その、ええ、すぐという訳には、陛下にも予定が建て込んでおりますし。犬の散歩だけでも5時間はかかりますから。えぇ!」


――ほう、これはかなり困っている御様子。5%は吹っ掛けてるな?もっと価値のある取引だとおもってたよ。


「……すぐという訳にはいかないが会えるという事だな?」

「そうだ、口約束でもいいが、約束は守ってくれないとな?」


「……それはそれはもう!」


 しかしあれだわ、ムンゴルよりたぶん、技術的には進んでいるであろうイギニス。

 そこがてこずる相手の古代竜。これは思ったより大事になりそうだな。


 時間稼ぎしてる場合ではないだろうから、イギニス本国からの連絡は、すぐ来るだろう。しかしちょっと時間が空いたな。


 なら、俺に対して敵意を強く持つ、オーマの市民感情に対して、手当でもするか。

 こういう時に、最も有効な手段、そうアレでだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る