ブォンブォンブォン
ブォンブォンブォンと音をさせて、俺は光る刀身を振り回している。
金属製の筒の先から出ているのは、高熱のよくわからない青い光だ。
このマジテンション上がる光線の刀身が、俺の手で振り回されて空気を切り裂くたびに、ブォンブォンとカッコいい音をたてるのだ。
まさかこの騎士たちが持ってきている物資の中に、こんなものがあるとは思わなかった。どうみてもこれは「ライトセイバー」だ。
騎士、ケムラーによるとこれは100年前、機人にとどめを刺した武器だそうだ。
なるほどね、さすがにこんなもんで切りつけられたら俺の機械の体もただではすむまい。当時何があったか?そこまではわからない。
たぶんライトセイバーをパクられて、そのままやられたってところだろうか。
このライトセイバーに、凄い切れ味と、それ以上に格好いいという以外に問題はない。問題は、この剣を振り回したことで、俺の立ち位置がなんかすげえややこしいことになったのだ。
人間いわく、おれは魔王らしい。その魔王が、人間たちの使えなかった、勇者の使う剣を使えました。すると、どうなるか?
そう、光と闇が両方備わり、最強に見えるようになったのだ。
全く意味が解らんけど、そう言う事になってしまった。
騎士たちは光の剣を持つ勇者にして、エルフ達の王、世界の調和者だ!とか言い始めてる。うーむ、これ大丈夫か?どんどんスケールが大きくなっていってないか?
騎士たちはぶっちゃけ、肉食獣とそんな変わらないから、あまりポトポトの中にはいれたくないんだけどなぁ。こうなると追い出すのもちょっと気がひけるようになってしまう。
エルフ達はエルフ達で、鉄格子と磔台はいつ用意しましょう?とか言い出してるし、うーむ、これはややこしいことになってきたぞ。あちらを立てればこちらが立たず。何か誤魔化すうまい方法はないか……?
……こういう時はアニメやゲームに学ぶのがいいだろう。というかそれ以外にこんな状況になった事がないわ。思い出せ、エロゲの選択肢を。
こういう時に大体バッドエンドになるのは、両方の顔を立てるだけ立てて、何もしないことだ。”問題をぼかして、時間稼ぎ”といってもいいな。これは大体後で両方から刺される。
行動を起こすにしても、両方の希望をかなえようとすれば、八方美人となって信頼を失う。好感度をまんべんなく上げると、大抵はどうでもいいエンディングに行くか、バッドエンドだ。
なので敢えてやる方向性は、尖った部分を生かして、対立させることだな。
両者の対立を怖がってはいけない。お互いの必要性を認識させて、共通の問題を解決する。それこそが本当の融和だ。
例えば、エルフは遠距離戦闘は強いが、白兵戦には弱い。人間を肉盾にすることのメリットがある。あとは、人間の処罰や監督をさせてもいいな。
そして人間は宗教的問題を抱えている。その教えは、主に相手から何かを奪う事を正当化するのを中心に組み立てられている。
厄介なことに、隣人もその対象だ。どうにかなるのかコレ?とおもわれるが、簡単だ。人間は奪っても良い相手を必要としている。常に敵が必要なだけだ。
となると大体語るべき内容が定まってくる。よし、試しにやってみよう。
「……この剣は、100年前に機人より奪われた剣に違いあるまい」
「へへぇー!人間ってのは、とんでもねえ連中でがすね!?」
ミリアの合いの手にも慣れたが、何語なんだかなぁ。続けよう。
「うむ、その罰としてわが軍の先鋒を命ずる。しかしその勇気を示したならば、乱取りの権利も認め、我らの先触れとして戦うなら、その命も安堵しよう」
乱取り、というのは手当たり次第に略奪してオッケーよと言う事だ。
「ハッ御意のままに!我らの大罪、この身をもって償いといたしまする!」
こいつら割とドMだな。まあ勝手に納得してくれるなら、ちょうどいい。
「へえ、肉の盾になってくれるってんなら、かまいませんがね、逃げようとしたら、背中の風通しが今よりもっとよくなるでゲスよ」
「この身を惜しむなどと言う事があろうか、いやない!血肉となるまで戦う所存!」
騎士共は意外と煽り耐性が無くて、その気になっておるわ。まあちょっと喧嘩してるぐらいがちょうどいい。俺は最終的には、エルフの肩を持つが。
さて、2つの軍を破壊して、結構資材も手に入ったし、もう一回拠点を弄り回してみるとするか。騎士たちの住処を壁の外に作りたいしな。
2個の軍団を失って、そろそろオーマ側も動揺がひどくなっているはずだ。
しばらくは動きが無いだろうし、拠点をいじくりまわしていこう。
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