ゴブリンに近代兵器はオーバーキルだと思うの
俺は自分のいた廃墟っぽい建物を出た。
廃墟の外は緑にあふれた森の中だった。
小鳥はさえずり、どこかで水の流れる音がする。
しばらくあっけにとられていたが、あっと正気に返って後ろを振り返る
自分が居たのはどういうところだったのかしら?という確認のためだ。
俺がいたのはコンクリート製の建物で、脇には朽ちかけた看板があった。
その看板の文字はもうかすれてしまってよく読めない。
ナントカ病院的なものだったのは確かなようだが、それ以上の事は解らなかった。
「よし、何もわからん!考えるの終わり!」
何もわからないことをウダウダと考えていてもしょうがない。
だってわからないのだもの。
とりあえず水が流れているってことは、流れる先に行けばなんかがあるはずだ。
俺は詳しいんだ。なんてったって文明や町作るシミュレーションゲームでは、川、湖、とにかく水の近くに町を建てるのが鉄板だからな。
「ドナウ川にだって文明が出来たんだ、いけるいける」
俺は水の流れる音がする方向に歩いていくことにした。
「しっかし気持ちわりいなコレ」
何が気持ち悪いって視点の高さだ。
俺の人型兵器の体は、やたらに身長だけは高い。
それのせいで普段見慣れない高さの光景を見せられるので、違和感が半端ない。
だが視界だけは良い。こうやって見回すと、ほら、なんか人が見えた。
俺の視界の先には小柄で肌が茶色く、目の赤い人型の何かが居た。
どう見ても人間じゃないです、ありがとうございました。
その茶色い小人は、何かのハラワタらしきものを川の水で洗っている。
あっこれはやばそう。
うーん、この小人の次の行動を見て決めよう。
スマイルなら挨拶、それ以外ならミニガンで撃っちゃおう。
小人は、手に持ったハラワタを陸にあげると、刃物を取り出した。
次にこちらに対して、威嚇のような行動を取って叫んだ。
「ウンバボー!ウンバァァァ!」
アッハイ、射殺で。
俺は右手を小人に向け「ファイア!」と短く発言する。
すると右手首のガトリングガンから炎の筋がはしる。
たちまちに奴は岸に置かれたハラワタとまじりあって、区別がつかなくなった。
「思った以上の破壊力だな、こりゃひどい」
銃声を聞きつけたのか、先ほどの小人の仲間らしきものがワラワラとやって来る。
手には鉈、黒塗りの弓、どうやら中世レベルの武器しか持ってないようだった。
「弾がもったいないし、弓以外は普通にパンチとかでやっちゃうか」
俺は左手の9㎜サブマシンガンで小人をササっと始末すると、白兵戦を挑んできた小人たちをふんずけて蹴散らす。機械の体にかなうはずもなく、軽く振り回した腕に当たるだけで小人は吹っ飛んでいく。
吹っ飛ばすと効率が悪いな、意外と死んでない。
俺は腕を振り回すのをやめて、踏みつけるのを優先する。うん、いい感じだ。
だいぶ人間的な感情が失われている気もするが、機械の体に引っ張られてるのかな?まあ細かいこと考えても仕方がない、警察が居なさそうな世界なんだから、どう考えたって、これは正当防衛だ。
小人どもをあらかた片づけた、いや、散らかした後、俺は気付く。
ハラワラを引きずったであろう血の跡が、森の奥へと続いている。
俺はその血の跡をたどって森の中を進んでいく。
するとその先には血の饗宴の後があった。
わーぉ、こりゃひどい。
やられてるのは小人じゃなくて人間サイズの連中だ。人間と違うのはちょっと耳が長いってとこだ。ファンタジーなゲームで言うところのエルフっていう種族だ。
しかし、腹を裂かれていたり、目をくりぬかれたり舌を抜かれたりで、まあ一目で死んでるなってわかる。ちょっとグロ注意過ぎませんかね、この世界?
しかし、俺はそんな死体の山の中で一人無事な人間を見つけた。
縛られている女の子だ。
他の連中は男だから、まあそういうアレで生き残ってるんだろうね。
少女は金髪で背中までの長さの髪をしている。体はスレンダーながらも下半身の肉付きは非常によろしい。もちろん食物ではなく性的な意味で。胸はうむ、もっと盛るペコ!というものもあろうが俺にはこの程度が収まりよくていいだろうと評価できる大きさだった。
女の子はそんなクソみたいなことしか考えていない俺を見上げる。
意外なことに、割とスプラッタな感じになっているであろう俺の姿にもかかわらず、歓喜の色を見せる。
「機人様、衆生をお救いになるために目覚めたのですね」
あら、割と信仰対象らしいね俺、どうしたもんだろうか?
こういう時、どういう顔すればいいかわかんないし、なんていえばいいかもわからないの。
……えーっと、とりあえず神っぽく偉そうに喋るか?
「娘よ……委細を、話せ……」
うん、漫画とかゲームやら小説の神様キャラっぽく話せたと思うわ。注意点としてはス〇エニ系の神様は真似しちゃだめだな、ファ〇シが〇シでで何言ってるかわかんないから。
「はい、我らは……ゴブリンに襲われ、供回りは皆殺されました」
うん、それは見ればわかるわ、つぎつぎ。
「続けよ……」
「わが村は人間により圧迫されてます、それで機人さまの降臨を賜ろうと祈りをささげに参りましたところでした……」
エルフの少女は手から何かを出す。
俺の視界はそれを捉えると『MK3核融合バッテリー』と表記を出した。
いや、そんなもん捨てなさい。めっちゃやばい奴やんそれ。
いや、待てよ?俺の動力かもしれん、一応受け取っておこう。
「娘よ、我に捧げよ……」
「は、はいっただいま!」
バッテリーを受け取って体に入れると、ブィィーンという音とともに俺の体に光がともって消えた。わお、余計なゲーミング演出付き。いるかこれ?
案の定エルフの少女は俺を見て歓喜と尊敬の入り混じった表情になってる。
うーん……どうすんのこれ?
ひとまず人里に下りない事にはどうしようもないか。
少女にお願いして連れてってもらうか。
「娘、我を汝の里に案内せよ……」
「は、はいっ機人様!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます