第12話:世界で一番強い奴
「ホド皇国からの招待状だぁ?」
「ええ、王子に是非とのことです」
スラム街で暴れまわって数ヶ月、シール先生から一通の手紙を渡された。
中身はいつも通りの本題までが遠い並び立てられた美辞麗句の数々……そして肝心の内容はといえば―――。
「決闘大会かッ!」
栄光の名を冠しているホド皇国では、様々な大会を開催している。
確か去年が野球で、その前が将棋だった気がする。
……ほんと、この文化汚染を誰かなんとかしろよと思わないでもないが、今はどうでもいい。
決闘、チート、優勝、まさしく俺の求めていた異世界転生もののイベントだ。
もしかしたら姫騎士やら出てきたり、優勝したらホド皇国の姫とのフラグも立つかもしれない。
……いや、あそこの皇子は男だったな。
まぁそんなものは些細な問題だ。
ホド皇国が大々的に開催する決闘大会……もしかしたら俺と同じくらい強い奴も出てくるかもしれない。
そう思うとスラム街を半壊にした時よりも盛り上がってきた。
そして一ヵ月後、その願いが叶わなかった事を知る。
確かに決闘大会の招待状は俺宛に届いた。
だから俺が出場するのだろうと思っていた。
だが冷静に考えれば他国の王子を戦わせようとするだろうか?
『第87回目となるホド皇国決闘大会、優勝者はタイローック!!』
≪ワアアアアアァァ!!≫
「クソッタレがぁ!」
そう……俺の奴隷兼従士であるアルビノのサベージ、タイロック。
そして謎の種族であるキリエに出場してもらう為に、主人である俺に招待状が届いただけであった。
「あら、ご自慢の従士が並み居る強豪を打ち倒したというのに、嬉しくないのでしょうか」
「奴隷なんぞが勝とうが負けようが俺にゃどうでもいいんだよ!」
ちなみにこの大会にはクソ親父の入れ知恵によってメレクも同行している。
デートがどうのこうのと言っていたが、こんな場所に雰囲気もクソもねえだろ。
「クスッ……負けても気にされないだなんて、キリエさんの為なんですね」
「あぁ?」
そういえば準決勝でキリエが負けていたか。
相手は剣からビームが出る初見殺しの札をいきなり切ってきたんだったな。
まぁそれが分かっていたからこそ、タイロックが勝てたのだろう。
『さて、ここでサプライズです! ホド皇国に舞い降りた異世界転生者、タイクーン皇子が剣を交える栄誉を授けるとのことです!』
「ナニ!?」
俺以外の転生者が、しかもホド皇国の皇子だと!?
つまり……奴も持っているということか、チート能力を!
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