○○視点 入学式③

……とは思いながらも、たかくんの笑っている姿を見て強制的に心を落ち着かせ考える。


(あの女は誰だ。たかくんの彼女か?たかくんの反応を見る限り、親しい間柄であるのは間違えない。でも、彼女にしては……何か違う気がする。これはもう少し様子を見る必要がありそうね)


そして、たかくんの後ろをつけていき、クラス分けが書かれた紙の前まで来た。



「やった」



たかくんと同じクラスだった……

正直、たかくんと別のクラスになるかもしれないと思ってたけど、運は私に味方してくれた。


(よかった。たかくんと同じクラスになれた……嬉しい。これで偶然こいの出会いを演じなくて済んだし、休憩時間のたびに話しかけることだってできちゃう。これも全部毎日たかくんのことを思ってたおかげね)


そんな、たかくんと同じクラスである喜びに浸っていた私にたかくんの声が聞こえてきた。


「お、みんな同じクラスだな」


…………は?


あの泥棒猫も一緒のクラスなの?



たかくんは新入生代表挨拶のために職員室に向かい、私は泥棒猫と小さい子の後ろに続いて教室に入った。


(そうね。まずは、たかくんと同じクラスになれたことは喜びましょう。そして、あの泥棒猫をどうしょそうかしら)


私は泥棒猫に憎ましげな視線を送りつつ考える。


まずは本当にあの泥棒猫がたかくんの彼女なのか確かめないといけない。

もしそうなら……自分でも自分を抑えられる自信がない。



私は休憩時間に思い切って、橘夏樹泥棒猫さんに話しかけてみた。


「こんにちは。堀口秋江です。よろしくお願いします」


「あ、委員長になった子か。私は橘夏樹。気軽に夏樹って呼んでね。よろしく」


私は今笑えているのだろうか。内側から溢れる殺意を全力で抑えつつ、本題に入る。


「そういえば、夏樹さんは孝憲たかくんと仲が良さそうでしたが、付き合っていらっしゃるのですか?」


「え、え⁉︎わ、私とあいつがそ、そんなわけないじゃない」


え、


「で、では、どのようなご関係なのですか?」


「た、ただの遊び友達だよ。そ、そう。それこそ今日だって帰りにげ、ゲーセンいく約束してるし」


よかった……たかくんの彼女じゃなかった。


(やったーーーーーーーーーーーーーー)


私は心の中では狂喜乱舞きょうきらんぶしながら夏樹元泥棒猫さんと話を続ける。


「では、楽しそうなので私も一緒について行ってもいいですか」


「も、もちろんいいよ」


よし、これでたかくんにも近づくことができる。今日はなんていい日なんだろう。



「堀口秋江です。私のことは委員長と呼んでください。これから1年間よろしくお願いします」


(た、たかくんだ。夢にまで見た、たかくんが今私の目の前にいる。か、カッコいい。)


私はたかくんの顔を食い入るように見つめながら自己紹介をした。そして、一応、名前から私だと勘付かれないように委員長と呼ぶように伝えておく。


(たかくんも昔は私のことをあきちゃんって呼んでたからあんまり私の名前覚えてないと思うけど……で、でも、私があきちゃんだって気づいてくれたならそれはそれで嬉しいし……でも、別れる前は避けられてたし、き、嫌いって言われたらどうしよう……)


そんなことを思いながら私はたかくんの返答を待った。


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大変長らくお待たせいたしました。くりからです。長らく失踪していましたが、身の回りがひと段落着いたので、これからは定期的な投稿を心がけていきます。


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