入学式の朝

ドス!


空から女の子が降ってきた。


そして、馬乗り状態のまま、彼女は告げる……


「起きろー、朝だ、入学式だ!」


「おお、我が妹よ。どうして君は朝っぱらから私に向かって飛び込んでくるのだ」


「だって、仕方ないじゃん。お兄ちゃん全然起きないもん。ていうか、今日から学校だよ!」


そう。今日は高校生になってからの初登校であり、つまるところ、入学式の日である。


「お母さんもう下でご飯作って待ってるからね。早く起きてきてね。初日から遅刻したら、本棚に別のカバーをかけて隠してる薄い本のこと、お母さんに教えちゃうぞ♡」


なぜそのことを知っているのか是非とも今からでも話し合いたいところだが、朝は忙しいので一旦はよしとしよう……


よくないけどね!


ここで僕が誰と話しているのか紹介しよう。


多分、内容的にほとんどの人はわかると思うが、彼女は僕の妹である金木優香かねきゆうかちゃんである。


優香は今年から中学生で、僕と同じく今日入学式がある。そのため、いつにも増してテンションが高い。せめて朝くらいはゆっくりはさせてほしい。


ちなみに、第1話の最後の方の異世界転生のくだりは、高校に行きたくない僕のただの妄想である。


だから、あんまり気にしないでも大丈夫だ。


お詫びと言ってはなんだけど、僕の2回目の失恋の後日談でも話そうか。


1回目の失恋ほどではないけど、車に乗って、街から離れていく内に失恋したんだなっていう実感が湧いてきて……まあ、うん。

後悔と喪失感が襲ってきたわけだ。


だから、それを紛らわせるためにも、今までと同じように、何かをしようとした。


そこで、自分を磨くこと以外もやってみようって気になって、ライトノベルを始めて読んでみたら、どハマりして、現在はオタク街道をまっしぐらに進んでいる。


なんで自分を磨くことしかやってなかったかというと、もっとカッコよかったらあの子から好きって言ってもらえたかもしれないのに……という後悔からだ。


当時はだいぶ拗らせてたから、仕方ない。

仕方ない……のか?



「おはよう、母さん」


「おはよう、あんた、さっさと準備しなさい。初日から遅刻したら、本棚に別のカバーをかけて隠してる薄い本のことお父さんに教えるわよ」


だから、そのことをなぜ知っている!

優香が教えたのか?


「驚いたって顔してるけど、母は息子のことに関しては基本何でもわかるのよ♡」


母と妹に逆らうのはやめよう。

強くそう心に誓った。


朝飯を食べて、学校に行く準備して、はあ。

面倒だけど行くか……入学式


(ちなみに、妹はリビングでテレビを見ていて、父さんは夜勤で職場に泊まっているためこの場にはいない。頑張れ、父さん‼︎)

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