第61話 『悪役』とみんなの成長
「タイタン君、約束してくれ。《ポイズン》を人に向けて撃っちゃ行けないって」
「分かってますよフルル先生……これは人に撃っちゃいけないやつです」
俺とフルル先生は『不自然に動くブルカウ』を見て呆然とそう呟いた。四肢がバラバラに動いてるブルカウが気持ち悪すぎる、後ろ足で地を蹴って前足を地面に付けることで前に進むという単純な行為すらも出来ていない。
「見てよアレ、のたうち回ってるよ。もうボク見てられないんだけど」
「といってもあんなに暴れられたら近づけないですよ、あ。泡吹いて倒れた」
毒が視神経にまで届いたのか、ブルカウは目を回しながら倒れる。その後10秒ほど苦しい息づかいをした後……ブルカウはドロップ品を残して消えていった。
俺がやった神経に《ポイズン》を流し込むという方法は確かに有効だった、『思っていた以上に』。こんなの人に向けて撃ったらグロ映像確定だな……
「《ポイズン》ってこんなにも危険な魔法だったのか、《アンチ・ポイズン》を撃っても傷ついた神経はすぐには戻らないし……」
「もし回復魔法で治癒しても一度崩壊した身体の動かし方はすぐには戻らない……ヤバいですね、《ポイズン》」
「タイタン君、絶対にこれを口外しちゃダメだよ。もちろん使用することも」
ええ、分かってますよ先生……流石に人を再起不能にするには一撃必殺過ぎる。使えるけど使えない技が出来てしまった俺は、フルル先生と言葉少なに学園へと直帰した。
その道中、フルル先生が重い口を開く。
「なんというか、君が剣技の講義を真面目に受けていて本当に良かったとボクは思うよ」
「?」
「もし君があの
間違いない、君が君で良かったとフルル先生は確信を持ったように言う……なんか、性格そのものを褒められたもんだからむず
でも確かに分かる、俺の才能は『主人公にもない才能』だ。今の
だが、そんな主人公にもない
「俺も、激情に流されないように気を付けます」
「本当に頼んだよ……でも君はまだ若い、ボクがこれからいつも以上に目に掛けておくから。
「っ……お願いします」
俺はフルル先生に軽く頭を下げる、聞いたか?『
対人戦には使えない魔法になってしまったが、今まで通り武器破壊のために《ポイズン》を使っていこう。2年になればこんなこと悩む前に『新しいデバフの魔法覚えよう』で済むのだが、今のところはこの2つのデバフで無数の死亡フラグを
なんか死亡フラグ、ゲームの時より増えてるし速く来ちゃうし。
「アンデルセン王に人員の追加を言っておかないとなぁ……」
俺がフルル先生の言葉に感動している中、フルル先生は考えるように
そして俺は、次の日にフルル先生の『いつも以上に目を掛けておく』という言葉を真の意味で知ることとなる。
朝、いつもどおり朝練をしようと訓練場に行くとシアン姫とユノ……そしてヒサメが既に来ていた。
俺が最後か?と思うと後ろから眠そうなフルル先生が訓練場に入ってきた、そんなに眠いのなら寝てても良いんですよ?
「おはようございますタイタンさん!あっ、その武器……」
「ん、剣作るの失敗した?」
「おぉタイタン殿!ささっ、
シアン姫とユノが俺の腰に下げられているシミターを見て不憫そうな目を向ける中、ヒサメはちゃんとシミターの事を知っていたのか俺にそう問いかけてきた。
そうだぞ、これは
「おっ、ヒサメはこれ知ってるんだな」
「一応
「ふわああ……おはよみんな。ボクも昨日タイタン君から聞いて実際に戦ってるところを見たけど強かったよ」
フルル先生が欠伸をしながらヒサメの疑問に答える。ヒサメが目をキラキラさせながら俺の方を向くが……すまん、いきなりは無理だ。
「先にランニングだけさせてくれ。昨日のモンスターでの戦闘でかなり体力を使うことが分かったからな、今の俺だと朝練だけで一日の体力を全部使ってしまう」
「ぬぅ……そんなに激しい戦い方か、ならば致し方あるまい」
「別に連戦がダメってだけだからランニングした後なら戦ってやるよ」
本当か!?といきなりテンションが上がる《バトルジャンキー》。任せろ、『投資』したことを軽く後悔させてやるレベルで圧倒してやる。
「私も昨日はヒサメ様と一緒に《瞑想》をしつつ練習したんですから!ね、ヒサメ様」
「うむ、シアン殿の焦りが矯正されて堅実に戦えるようになっておるぞ。タイタン殿がすぐに戦えぬのは残念じゃが……早速、昨日の成果を見せ合おうとするかの」
「ユノも昨日新しいナイフ買った。
あれは元からハゲだぞユノ……って、ユノもベアのおっさんのところで買ったのか。いやハゲの鍛冶屋って思いつくのがベアのおっさんしかいないから他にもハゲてたら知らないけど。
そんなことを思っていると、フルル先生も何かを思いだしたかのように人差し指で上を指した。
「あ、そうそう。ボク今日からタイタン君専任の
フルル先生のその言葉に周りが凍り付く。えっ、は?専任!?俺が混乱している中、フルル先生はイタズラが成功したかのような子どもっぽい笑みを俺に向けて浮かべていた。
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