第36話 『悪役』と勝負
「今日は初回と言うことで先生に君たちの実力を見せてもらおうかな!あぁ、ケガは心配するな!回復のエキスパート、モーレット先生がいらっしゃるので存分に戦って欲しい!」
「フルル・モーレットだよ。どうせ3年間お世話になるんだから気軽にフルル先生と呼んでくれたまえ」
ジャージを着た男の教員が、フルル先生を軽く紹介する。そこかしこから『あんなに小さい子が?』とか『大人ぶろうと白衣着ちゃってる、可愛いー!』といった声が飛び交ってフルル先生の目が死んでいた。
「あ、もちろんこれは『剣技』の講義だから魔法を使えるやつは使うなよー?じゃあ強い順から行きたいし、A組から……」
「せんせー!A組に強くないやつがいまーす!」
早速始めようとしたところで、生徒からそんな声が上がる。そいつの方を顔を向けると、明らかに
先生は困った顔で頬をポリポリ掻いている、初っぱなから授業進行を妨害されて大変だな先生も。
「最初のクラス分けでは総合的な戦闘能力を測るために行われたものだ。もし君の言う『強くない』が剣技の事だとしても、他が強かっただけかもしれないぞ?」
「いえいえ、俺が言いたいのはもっと前の話ですよ……A組に
ついに名指しで来たわ、他の生徒もざわつき始める。『あれがその……』『貴族の権力でA組の席を奪った……』と聞こえる中、俺は周りの声を聞いて静かに殺気を出している
ユノはさっきから「俺が貴族の権力でA組の席を奪った」という事実を聞いたときに貴族嫌いが発動して襲ってくる。
『自主練』でいくらかガス抜きは出来たようだが、またすぐ襲われる危険性がある以上ユノから目を離すのは自殺行為だ。
「俺もそう思うぜ先生。A組は強い順から入るという事で間違いないんなら、
ハルトも煽りに賛同して俺を責めてくる、うるせぇからこいつらの
シアン姫は眉をひそめて怒っているし、フルル先生もムッとして不満顔だ。ユノに関しては……うん、無表情だけどヒシヒシと殺気を感じる。やっぱりユノから意識を逸らしちゃダメだな。
だがおかしいな、殺気の方向性が俺だけじゃなく周りにも出ているような……?
「といっても、これは公平に決まった事だからなぁ……」
「先生も貴族の言いなりなのか!?もういい、タイタン・オニキス!」
「あ?」
「昨日果たせなかった『決闘』、今ここで受けてもらうぞ!」
俺がそんな事を思っていると、ハルトが先生を無視して俺にそう言ってきた。おいおい、授業中だぞ……
「断る」
「ふっ、やっと受けて……はぁ?断るだと!?」
「当たり前だ、今は授業中だぞ」
俺はハルトから視線を外して先生の方を向く。というか
それを周りはビビっていると勘違いしてまた騒ぎ出す、先生はどうすれば事態を抑えられるのかとアワアワしていた。
「だったら授業になればいいんだろ!?先生、こいつと俺で試合をさせろ」
「な、なるほど分かった!それで良いなみんな!?」
「「おおおおおおおおっ!」」
ハルトのその提案に乗っかる先生。ハルトはニヤリとほくそ笑んでいた……授業の一環だから魔法は使えない、俺は純粋な剣の腕だけでハルトと相対しなければならない。
そして純粋な剣技なら、俺に才能はない。ッチ、先生のやつ事態の収拾が早くつくからって簡単に乗せられやがって……
「よぉよぉ雑魚、昨日から散々コケにしてくれたな、あぁ?」
「……さっさと剣を構えろ野蛮人。戦場でお喋りしていたら、死ぬぞ」
「はぁ?ははっ、おい聞いたかよみんな!いっちょ前に戦場だってよ!」
ハルトが周りに同意を求めて、それに応えるかのように笑いが起きた。シアン姫とユノ、そしてフルル先生は例外だったが。
シアン姫はフードの男の一件があったからこそ、俺の言った意味が理解出来るのだろう。それでも何も言わないのは俺が反論しないからか……はっ、可愛い奴め。
ユノもここで笑えば周りと同じになってしまう、そうすれば自分の復讐は達成されないとでも思っているのか、ジッと俺を見ていた。
フルル先生は……俺が死にかけていたところを見ていたからだろうか?口をきつく結んで、ハルトを責めるような目を向けつつ黙っている。
そういやフルル先生、ハルトに《アンチ・パラライズ》かけてなかったな。もしかして単純にハルトのハーレム発言に腹を立ててハルトの言うことに賛同したくなかっただけかもな?
「だったらお望み通り……ボコボコにしてやるよ!」
「才能の上にあぐらを掻いている貴様に、『現実』を叩き込んでやるよ
ハルトが剣を構える、昨日もさっきも《パラライズ》で完封していたから純粋な剣での勝負は初めてだな……俺はフッ!と短く息を吐いて気合いを入れた。
剣の才能はないが、俺には15年間タイタンがしてきた努力がついている。どこまで通じるか分からないが……少なくとも勝てない相手ではないッ!
そして次の瞬間、俺とハルトの剣が交錯する――
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