第4話 『無限収納の腕輪』
「これが……、無限収納の腕輪か?」
箱がふたたび開くと、綺麗な宝石が埋め込まれた細かい細工の施された腕輪と紙が置かれていた。
早速、俺は左手に腕輪を通すと、紙を見る。
どうやら腕輪の説明書らしい。
「開け」
手をかざすと、目の前の空間が裂けて暗闇が現れた。
「本当に……大丈夫なんだろうか?」
目の前の闇に圧倒される。吸い込まれてしまいそうで恐怖を覚えたのだ。
ひとまず、こうしていても仕方ない。このアイテムの効果を確かめるためにも、何か入れてみるべきだろう……。
自分の手元を確認する。
俺が長年愛用している剣、長年愛用しているマント、先程手に入れた『回復石(小)』今の時点では何も入れたくない。
俺は外に出ると石を拾ってきて、暗闇に放り込んだ。
急に暗闇が戻って腕が斬れるのではないかという恐怖心があったからだ。
「入ったよな?」
目の前には相変わらずの暗闇がある。次の瞬間視界の端に半透明の枠が出現し、メッセージを表示した。
『石を1個保管しました』
どうやら、問題なく保管されているらしい。不思議な光景だが、焦る俺はひとまず説明に書かれている通りに取り出す方法も実践してみることにする。
俺は、おそるおそる手を突っ込むと『石を取り出す』と念じてみる。
次の瞬間、手元に石が戻ってきて、
『石を1個取り出しました』
とメッセージが浮かんだ。
「説明の通りに使えるようだな」
ホッと一息吐く。
「なら、他の準備もするとするか」
俺は手元にある金をすべて箱へと入れ、買い取りを行った。
『残高2640ptです。継続してお売りいただけますか?』
どうやら金貨は1000ptらしい。手持ちを全部放り込むのには抵抗があったが、今はこちらが最優先。
「もしあっさり戻ることがあったら無一文だが、トーリに貸してもらおう」
これで外を探索していたり、何かの拍子に元の場に戻ると無一文になるのだが、その時は親友に頭を下げることにした。
これからの行動で、何がどれだけ必要か考えなければならない。
俺は改めて『食べ物』と『飲み物』を見る。
『食べ物』
・ランダム定食A-1個 価格5pt……10種類の中からランダムで1つの料理が入っている。
・ランダム定食A-7個 価格30pt……10種類の中からランダムで1つの料理が入っている。
・ランダム定食A-15個 価格55pt……10種類の中からランダムで1つの料理が入っている。
・ランダム定食B-1個 価格7pt……15種類の中からランダムで1つの料理が入っている。
・ランダム定食B-7個 価格40pt……15種類の中からランダムで1つの料理が入っている。
・ランダム定食B-15個 価格75pt……15種類の中からランダムで1つの料理が入っている。
『飲み物』
・水樽(18リットル) 価格10pt……水が入っている。
・麦酒樽(18リットル) 価格30pt……麦酒が入っている。
・葡萄酒樽(18リットル) 価格30pt……葡萄酒が入っている。
まず、食べ物だが、説明を見る限り定食Aと定食Bがあり、それぞれ出てくる料理が違うらしい。
ランダムということで食べたい物を選べないらしいのだが、この価格に関しては一食分としてなら今のところ投入した通貨と価値にそれほど差がない。
アゴに手を当てて考える。まずこの小屋をでたあとで森に行く必要があると考えている。
森がどれだけ広いのかもわからないので、食べられる食物や水の確保ができない場合、それなりに多めに食事を用意しておいた方が良いだろう。
とりあえず、それなりに広いという想定で考えて万が一を考えて60食の20日分を用意することにしよう。
ptに関してもお金がない現状では次にいつ手に入るかわからないので温存しておくことにする。俺は『ランダム定食A-15個』を4つ購入した。
箱の中に大量の弁当が現れる。何度使ってみても不思議な光景だ。
四角くて軽い容器に入っているせいか、持ち上げると暖かさが伝わってくる。
良い匂いが漂って食欲を刺激するのだが、今はやるべきことを優先する。
俺はすべての食べ物を腕輪に納めた。
『ランダム定食Aを60個保管しました』
「あとは飲み物に関してだが、水樽を5つあれば足りるかな?」
こちらに関しては安いし、途中に川などがあれば補充もできそうだ。
『水樽(18リットル)を5個保管しました』
「酒に関しては……呑むのは危険だよな?」
これが仲間との探索なら、野営の時に呑むのはありだが、現状ここがどういう場所なのかもわかっていないし……。
「よ、よしっ! 安全な場所があるかもしれないし、一応……なっ?」
『麦酒樽(18リットル)を1個保管しました』
『葡萄酒樽(18リットル)を1個保管しました』
「後は怪我を負った時に治すため……」
もしくは、街に辿り着いて金策とするため……。
『回復石(小)を5個保管しました』
『解毒石を1個保管しました』
ひとまず、これだけ用意しておけば良いだろう。
これから始まる周辺調査を考えると、俺は緊張し、気を引き締めるのだった。
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