第4話 ヒールがあるだけで




子供が出来てから

履くことがなくなっていたハイヒール。


息子が3歳になって、

幼稚園にも通い出して、

「母親」としてではない、一人の時間が少し出来た。


それは、ただの買い物だったり、通院だったり。

大したものではない。

大したものではないけれど、

そんな時に、ちょっといつもと違うオシャレをするだけで、心が躍る。


今日がまさにそうだった。

いい天気。

風は冷たかったけれど、青空が広がって、太陽も溌剌としていて。

そんな日に通院だった私は、何気なく、ヒールのあるブーツを履いた。

それは、1ヶ月前に、これまた何年振りかに買ったオシャレなブーツ。

たまたま、お気に入りのピアスをつけていた。

お気に入りのストールも持っていた。

そして、歩く度に聞こえる、ヒールのコツコツという音に、胸が高鳴る。

ただの通院は、ウキウキとしたひとりの時間に大変身した。


ただそれだけのことが、なんとも愛おしい。

そうして晴れない気持ちを吹き飛ばしながら、

私は、明日も歩いてく。

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