カオス戦国~18禁乙女ゲームの世界に転生しました・ただし攻略される武将として~
白瀬
第1話 ゲームのはじまり
「こんな事を
大きな掌が、私の頬に優しく触れる。
私は涙を止められないまま、こくんと頷いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
気が付いた時、私はひとり 薄暗い山中に立っていた。
朽ち果てた枝が、昏い空を引っ掻くように伸びている。
闇深い森の奥。そこかしこで
壊れた
恐怖に竦む侍女と、傷つき倒れた男たち。
その前では、赤い5つの目を光らせた巨大な蜘蛛が、耳障りな音を立てて威嚇している。
ひと際大きな赤目に、少女を抱き締めた侍女が映る。
それを獲物と見定めた妖蟲は、鋭く尖った前足を無造作に振り下ろした。
ああ、私はこのシーンを知っている。
先日、改訂版が発売された乙女ゲーム『
通称『カオス戦国』の冒頭シーンだ。
鋭利な爪が侍女を裂く寸前、前足が斬り飛ばされて、宙を舞った。
右手に持った槍を握りなおし、私はもう一、度跳躍する。
土蜘蛛の弱点は、額の中央にある ひと際大きな赤い目だ。
そこに思いっきり槍を突き立てると、ずぶりという嫌な感触とともに、十文字槍の先端が赤目に沈み込む。
と同時に。
のたうち回っていた巨体が 煙のように消え失せた。
*************** ***************
震える侍女が抱いていたのは、小柄で
このゲームの主人公、
卵型の小さな顔に、小動物を思わせる大きな瞳。
髪飾りをつけた髪は、薄闇の中でも柔らかく輝いている。
誰がみても
さて、ここで選択肢が出るはずだ。
① 誰……?
②
③ (気絶する)
この場合、当然②が最良選択肢だ。
雪村は五年ぶりに再会した幼馴染だから、これを選べば“好感度+5”になる。
ちなみに①は好感度変化なしで、「お忘れですか? 昔、尼寺でよく遊んだ雪村です」とちょっと寂しそうな表情になり、③だと好感度-5になる。
それなら選ぶ選択肢は『②』しかないだろう。
えい。
と思っているのに。
目の前の桜姫は ゆっくりと気絶した。
何で!?
慌てて倒れかけた姫を抱き支え、そこでやっと気が付いた。
桜姫があったかい。
そして姫を抱く腕は、間違いなく男のもの。
取り落とした赤い
ゲームでこのアングルは見たことはないけど、この所持品は間違いない。
私、
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