第17話 図書委員の仕事
「この本ってどこしまうか分かる?」
「あぁ。それか。哲学のとこだから……あっちの書架かな。貸して。片付けとくよ」
「えー、いいの?」
「うん。ちょうどそっちの方行こうとしてたから」
「でもなつきこれ以外仕事ないし、一緒についていくよ。早く本のしまう場所も覚えたいし」
図書委員の仕事もいい感じに始まった。
凪月は本を受け取ると、隣をひょこひょこと歩いている。
「錦小路って図書委員の仕事に詳しいよね」
「あぁ、中学の頃やってたからかな」
内心冷や汗を流しながら答える。図書委員だったのは前世だ。別にバレるわけじゃないのに、なんかすごい決まりが悪くなるんだよな。
「なるほどなぁ。これからも分からないことあったら聞いてもいい?」
「うん。何でも聞いて」
「よっしゃ。なつきには心強い仲間ができました」
「ははっ。なんだよそれ」
「んー? 最近やってるゲームのやつ。面白いんだよね。あーあ、ゲームの世界にいけたらいいのになぁ」
「……そうだな」
本当にそうだ。勇者とかの立場でゲームの世界に行けたらどんなにいいことか。
俺もできることなら主人公サイドに転生して、ヒロインとキャッキャウフフしたかったぜ……!
「錦小路……? これってここであってる?」
「あ、あぁ。そこだよ」
凪月が背伸びをして本棚に本を入れようとする。けど、あとちょっとで届かない。
「貸して」
凪月から本を受け取って、俺は本棚に入れた。
「ありがとう!」
「また届かない時は言ってよ。それに俊一もいるし。あいつ、俺より背が高いからもっと届きやすいと思うし」
一瞬自分の言った言葉を反芻して、ヤバさに気づいた。慌てて成田のことを話に出す。
これだったら自分から関わりにいってるようなもんじゃん! そりゃもちろん、届かない時はいつでも呼んでほしいけど。
「うん。マジでありがとう。成田くんとも仲良くなりたいし、その時はお願いします」
「いやいや、こちらこそ」
変な遠慮のしあいみたいになって、2人でふふっと笑う。
「今日人少ないね〜」
「図書室ってあんまり利用する人いないんだな」
さっきからほぼ人が来ずガラッガラだ。おかげで仕事がめちゃくちゃ少ないんだけど。
「にしてもラッキーだったね。知り合いの人もいたし、仕事は楽しいし。図書委員選んでよかった!」
「確かに。4人1組もすぐ組めたし」
「実はなつき、体育委員と悩んでたんだよね。ゆかっちに断られてやめたんだけど」
「まぁ体育委員は……わりと人前に出る仕事多いからな」
俺が真っ先に候補から外したやつだ。
「図書委員ってやったことなかったし、ほら、今まで運動ばっかりしてきたわけじゃん? だからこういう系初めてだったの。マジでやってよかったよね。こんな楽しいと思わなかった」
「だなぁ。俺もなんか前より楽しいっていうか……」
前世の高校でやってた時は、もっと委員会の人数が少なくてなおかつ仕事量も多かった。あと、雰囲気的にもこう、友達になろうとかいうよりもただただ仕事って感じが強かったし……
「そっかぁ。じゃあ良かったじゃん!」
「そうだな。あっ、また本溜まってる」
返却コーナーには3冊ほど置いてあった。2人でまた本を整理しに行く。
ちょうど本棚に入れたところで、キーンコーン、と予鈴が鳴る。
「今日はこれで終わりか」
「早かったね〜」
「昼休みって意外と短いよな」
成田も仕事が終わったらしく、本棚の向こうから出てきた。そのまま2人で教室まで戻る。
よし。なかなか上手くいってるんじゃないか?
今のところフラグは立っても叩き折ってる気がする。このまま頑張るか。背筋を伸ばすと、コキッと音が鳴った。
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