光速の走り屋・大崎翔子番外編 BCNR33の逆襲

まとら魔術

ACT.プロローグ キャラメルズ

 BCNR33型スカイラインGT-R……1995年に登場するも、大柄なボディと大人しいデザイン、漫画や事件のせいで失敗作という呼び声のある車だ。


 一方で根強いファンも多く、海外で知名度を上げたことや他のGT-Rより安く買えることもあって再評価が進んでいる。


 しかし、未だに嫌う人がいた……。


 この物語はBCNR33乗りとそのクルマを嫌うドライバーとの戦いを書いた物だ。


 2015年2月15日……。

 ここは神奈川県Yokohama市Tsurumi区にある大黒ふ頭パーキングエリアーー。 24時間365日、クルマのたちが集う聖地だ。


 今日も集っている……。


 私たちはライブのために大黒ふ頭へ来ていた。


 自己紹介しよう。

 私はアイドルグループ・キャラメルズの田井中好子。 青髪ポニーテールとタレ目、高い身長が特徴の女の子だ。


「うわあ今日もクルマが一杯だね、スーちゃん!」


 赤髪ツインテールで、身長の低い女の子がミキちゃんこと美樹村フジちゃん。 同じくキャラメルズのメンバーだ。

 親に反対を押しきって、アイドルとなった子だ。


 スーちゃんとは私の愛称だ。 好子の「好」は「すき」と読めるから。


「ここはクルマの聖地だからね、ミキちゃん。 クルマが一杯じゃあない日はないよ」


「はいはいこの話はおいといて、早く会場へ向かいましょ。 ライブで来たんだから」


 金髪ストレートロングへアで、私とミキちゃんと間の身長の女の子が、ランちゃんこと伊東星蘭ちゃん。 キャラメルズのセンターを務めている。

 メンバー最年長だけあって、しっかりしている。


 私たちはライブ会場へ入る。


 無事成功し、大盛況のまま終わった。


 ただし、事件は後で起きる……。


 ライブを終え、それぞれ停めているクルマの元へ向かう。

 私はBCNR33型スカイラインGT-R、ミキちゃんは前期型180SX、ランちゃんが前期型S14型シルビアの元へ向かった。

 3台共、レーシングカーを思わせる外観をしている。

 私たちはアイドルだけでなく、アイドルドライバーとしても活動しているから。 普段はトレーラーの中にいるけど。


 私たちの前にファンが一杯流れていき、愛車の前で写真撮影する。


「ハイ、チーズ」


 ファンに、車の前で楽しそうにするポーズを撮ってもらった。


 だが、和気あいあいした雰囲気は後で崩壊する。


 私のBCNR33の前に、2人の女性が立つ。

 女性は紫のストレートロングへアをした女性で、身長は私よりやや低め。 清純派の印象のある人だった。


 もう1人は同じく紫の長い髪をしているものの、青みがかかり、ツインテールに纏めている。

 年齢より幼く感じる見た目だ。


 彼女たちの事は知っている。

 パープルギャルズというアイドルであり、走り屋やクルマ好きの間ではAKBやももクロより人気を得ている。

 清純派の印象のある女性が桑木ケイさんであり、ストイックな姿勢をしているアイドルだ。

 もう1人が根元未唯ちゃんで、元子役の経歴を持つアイドルだ。


 しかし、ケイさんは苛立った表情で私のBCNR33を見つめていた。


 冷たく言い放つ……。


「最悪なクルマね………情けない目をしているわ」


 私の耳に聞こえてくる。

 言葉を聞くと、心の中で何かが砕けた感じがした。


「おい、スーちゃんのクルマに何を言うんだ!」


 それを聞いたファンからケイさんにブーイングが飛ぶ。


「悪く言ってしまって、悪いねぇ~。ケイちゃんはR33嫌いなんだよ」


 未唯ちゃんは口を開いた。

 謝っているようだけど、軽い言葉に聞こえる。


 ケイさんにR33を悪く言われた事を私は気にしないフリをしていた。

 だが、私に大きなダメージを与えることになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る