第38話 発覚③
「協力します……いや、させていただきます……」
「ならよかったです!」
ルンルンの笑顔で体を弾ませながらそういった藤堂さん。お胸様もシャツ越しにルンルンしてやがる……!!
「と、ところで、いろいろやばい内容が多すぎて、完全に聞くの忘れてたんですけど、俺が『名無しの
「そーーーうです!! その話、私もしようと思ってたんです!!」
バルルンッ、とお胸様を机の上に乗せながら身を乗り出した藤堂さん。
「なんであの時隠してた……んじゃなくって、自覚が無い……んでしたね」
「よくわからないんですけど……はいぃ……」
むぅーと、可愛らしい声を出しながら悩んだ様子を見せる藤堂さん。しばらく、自分の顎を撫でた後、あ、と間抜けな声を出して言った。
「最近、え、え、えっちぃ……な、サイト見たり……した?」
「み、見てませんよ!?」
「本当かなぁ……?」
どうして今えっちなサイトの話になるのか不思議だったが、その俺のことを信用していないような視線に晒され、思い出した。
そうだ、この人、警察だ……。
ということは、これは実質取調べのようなものなのでは……?
じゃ、じゃあ、嘘をついてしまったら……!?
「みっ、見ましたっ!!! すいませんガッツリ見ました!!!」
「えっ、えぇっ!? あ、そ、そうなんだー……」
自分から聞いたのになんでちょっと引き気味になってるんですか。てか、気持ち頬が赤くなってるようにみえるし。
「そ、それで、変なウィルスに感染したりしなかった……?」
「ウィルス……ですか……あ」
「!? 覚えがあるでしょう!?」
「覚えがあるにはあるんですけど……」
「それを教えてっ!! どんなのサイトのどんなジャンル見て!?」
ジャンルて。
そんな詳しいところまではいらなく無いですか? という言葉を喉元で押し留め、真実を語る。
「実は、俺じゃ無いんですよ。ウィルスに罹ったの……」
「……今更嘘はダメですよ?」
「いや、ほんとですって……だって、ウィルスに罹ったの、隣の家の幼馴染が…… 加賀美風花ですから……」
「…………へ?」
ーーーーーーーーー
風花がウィルスに罹ったこと、それを俺が助けて尚且つそのウィルスの元まで壊滅させたことなど、なるべく詳細に藤堂さんに話すと、時々顔を紅潮させながらも真剣に聞き入っていた。
「なんですかそれ、えっちですね」
「……えっちじゃ無いです……」
俺の言葉を聞いてふふっと上品に笑った後、「冗談はここまでにして」と前置きをして、次の言葉を発した。
「完全に信用したわけでは無いですけど、無自覚だったんですね。そりゃ犯行声明も出さないでしょうし、ああいった二つ名になったのもなんとなく頷けます」
「1ミリたりとも自覚は出てこないですけどね」
というよりも、言われてもしかしたら、と考えるけど、規模が大きすぎて、自分な訳が無い。という考えが交互に降ってくる感じだ。
だけど、俺が『名無しの
そんな俺を見て、藤堂さんは少しだけ笑ったような気がした。
「それじゃあ、時間も時間ですし、そろそろ帰ることにします。詳細は、また後日話します」
「はい、色々とすいませんでした……」
藤堂さんが立ち上がったのを見計らって、俺も遅れて立ち上がる。
そして、玄関先まで見送り、藤堂先生がハイヒールを履いて、俺の方を見て近づいてきた。
何事かと俺はぼーっと藤堂さんを見ていると、手を差し出して、俺の顎をクイっと、いわゆる顎クイなるものをしてきた。
「と、藤堂さんっ!?」
「そう言えば、言うのを忘れていましたけど、これは極秘です。くれぐれも口外はしないように。いいですか?」
「そ、それはもちろん」
この時、俺には、見えていた。だが、この状況ではどうにもできなかった。そう、声を大にして言っておきたい。
「これは、私と九十九君との極秘の関係なんです。いいですか? だから、ここから一歩出れば、私とあなたはただの先生と生徒。誰にもこのことは口外してはいけませんよ? いいですか?」
「…………先生、口外しちゃって……ます……」
藤堂先生が「え?」と間抜けな声を漏らしながら振り返ると、そこには大きく開かれたドア。そして、そのドアの目の前には、状況を掴めていない2人と、持っていた荷物を全部落とした1人が立っていた。
もちろん、ナツキちゃん、シーナ、そして風花だ。
俺と風花は同じ高校の同じクラス。と言うことはもちろん。
「と、藤堂……先生、ですよ、ね?」
藤堂先生を知っているのは、当然だ。
この状況、俺が何か下手なことを言えば炎上するのは火を見るより明らか。だからこそ、俺は藤堂先生の言葉を待った。
恐らく藤堂先生のものであろう、ゴクリ、という唾を飲む音が聞こえ、少しして藤堂先生が震える声を出した。
「こ、これっ、これっ、は……その……ご、誤解? というか? その……私と九十九君は……ただの秘密の関係と言いますか……ね?」
いや、なんの「ね?」なんだ????????
一瞬で場が凍りつくのを感じた俺は、どうにかこの状況を打開する策はないだろうかと考えていると、ナツキちゃんが緊張感もなく、ぽそりと呟いた。
「えっちだぁ…………」
と。
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