ゼンパンの素質とウィークリーガチャスキル

第148話 いざ原初の森へ

『明日には原初の森に向かうのかい? 』


「そうですね。シルフィーも待ってるだろうし、リルの為にもそろそろフェンリル様の所に行かないといけませんから。」


ガイア国から帰ってきたラッキー達は、すぐに原初の森に向かわずにアルカディアでゆっくりと過ごしていた。


ラッキーは実家であるストライク家で、マリアはフロンダール家に、シルフィードはリスボン家に戻ってそれぞれの時間を過ごしていた。リルはもちろんラッキーと一緒だ。


これは、アルカディアに戻ってきた時に、3人で話し合って決めた事だった。サラマンダ連合国で四国会議に参加し、ガイア国でオーディールダンジョンに挑戦したラッキー達は次にフランダル魔法国に行こうと話合っていた。


シルフィードは魔法に興味があったし、ラッキーは転移魔法と火魔法が使える。マリアも光魔法と治癒魔法が使える。全員が魔法を使えるので、魔法国で魔法の知識を高める為だ。もちろんラッキーの転移魔法が一度行った所に瞬時で行けるので他国に一度行っておくという理由もあった。


ラッキーはシルフィードとマリアと別れてから、毎日転移魔法でガイア国の霊峰オーディールのアークドラゴンの元へ来ていた。目的は自身の強化の為だ。


アークドラゴンからの話を聞いて、強くなるのはレベルよりも熟練度が重要だという事を思い知ったラッキーはアークドラゴンの元でドラゴンを相手に自分の持つ素質の強化に努めていた。


転移魔法の事をアークドラゴンが知ってる事も大きい。普段はアルカディアの王都にいるので、他の町に転移する訳にはいかないしダンジョンに直接転移する訳にもいかない。


その点、霊峰オーディールであれば、結界が張られてるので、ラッキー以外に人が入って来れない。ラッキー自身は転移魔法で移動できるので、周りを気にせず鍛錬する事ができる。更に相手はドラゴンだ。鍛錬相手に十分すぎる程の相手だった。


『あんたもここに来て随分強くなったじゃないか。』


「まだまだですよ。まだレッドドラゴンには全く歯が立ちませんし。それに1カ月ぐらいしか鍛錬してませんよ。」


『何言ってるんだい。グリーンドラゴンとブルードラゴンは一人で倒してるじゃないかい。十分すぎる成長だよ。』


霊峰オーディールに来た当初は、霊峰にいるドラゴンの中で一番弱いグリーンドラゴンにも歯がたたなかったラッキーだが、毎日毎日ドラゴン相手に剣術、身体強化、火魔法、転移魔法などの攻撃に使える素質を中心に使う事で、レベルは上がらない代わりに熟練度がドンドン上がっていた。逆に言えばレベル上げに頼らなかったからここまで強くなれたと言っていいだろう。


霊峰のいるドラゴンは、グリーンドラゴン、ブルードラゴン、レッドドラゴン、シルバードラゴン、ゴールドドラゴン、ブラックドラゴンと強くなっていく。ちなみにオーディールの50階層に出るボスがレッドドラゴンだ。倒す為には、レベル50の冒険者が3人~5人はいると言われている。


そのレッドドラゴンに対し、歯が立たないとは言っているが、一人で戦う事のできる所までラッキーは強くなっていた。ラッキーのレベルはオーディール30階層に挑戦した時から変わっていないのでレベル30だ。それを考えるとラッキーの凄さがわかるだろう。


まさにステータスでは現れない強さを身に付けたラッキーだった。


「鍛錬に付き合ってくれてありがとうございます、アークドラゴン様。」


『アタシも良い暇つぶしになったよ。リルの坊やもいるしけっこう楽しかったよ。又いつでもきておくれよ。』


「はい。今度はレッドドラゴンを倒してみてます。」


『楽しみにしてるよ。フェンによろしく言っといておくれ。』


「わかりました。リルーーー。そろそろ帰るぞ。」


『わかったんだぞー。』


霊峰を駆けて遊んでいたリルがラッキーの元に戻ってきた。リルを抱きかかえてラッキーはアルカディア王都のストライク公爵家の自分の部屋に転移した。


『行ったか・・・。よくもまああそこまで鍛錬できるもんだね。普通はレベルを上げて強くなろうとするもんなのにラッキーときたら・・・あれは大物になるね。覚醒の宝玉の事を教えたのは間違いじゃなかったみたいだね。世界で唯一素質のレベルを3にあげれる人物・・・きっと勇者とともに再度オーディールに挑戦するだろうね。それまでは誰にも取られないよう守っておかないとね。』


自宅へと戻ってきたラッキーは、


「ふ~。1カ月長かったようで短かったな。リル、明日にはフロンダールに向けて出発だ。フロンダールでマリアと合流、リスボンでシルフィーと合流したら原初の森でリルのお母さんに会いに行くからな。」


『おー。母ちゃんに会うの久しぶりなんだぞー。』


「俺も今の自分が原初の森でどれだけ通用するか楽しみだよ。」


『ラッキー。今日は丁度ウィークリーガチャスキルの日なんだぞ。コロッケパン、今日も出してほしいんだぞー』


「おっさすがリル。覚えてたんだな。わかった。ちょっと待ってよ。」


そうして、ラッキーは新しく手に入れたウィークリーガチャスキルを使うのだった。

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