第104話 王国武道会決勝戦
「ラッキーはどっちが勝つと思う?」
「ライアン教官に勝ってほしいけど、さすがに厳しいんじゃないかと思ってるよ。」
「天剣ザッカス・・・準決勝は圧巻でした。」
「うん。どちらもすごく強い。それに剣の技術も高い。」
(どっちが勝つかなんて想像もつかない。2人を見ていたら俺なんてまだまだだ。もっともっと剣の腕を磨かないと・・・)
「お待たせいたしました。それでは只今より王国武道会決勝戦を開始致します。まずは、冒険者ギルド所属のライアンーーー。劣れを感じさせない剣術はまさに神業。今日はどんな剣術を見せてくれるのか。対して、王国騎士団団長のザッカスーーー。もはや説明は不要でしょう。天才とはこの人の事を言う。天剣の二つ名を持つ天才剣士です。」
「師匠。お手柔らかに頼みますよ。」
「何を言うザッカス。お主の方が実力は上じゃろ。」
「いえいえ、私はまだ師匠の全盛期には遠く及びません。まあ今の師匠になら勝てると思いますが。」
「その減らず口も変わらないな。」
「性格ですので。」
「まあ良い。俺も折角決勝まできたんだ。手は抜かないぞ。」
「もちろんです。それでなくては面白くない。」
ライアンとザッカスは闘技場の中央まで歩くと、観客席に礼をして、剣を構えて対峙した。その時点で観客は大歓声だ。
先に動いたのはライアン教官だった。先手必勝とばかりに剣技を発動する。ラッキーが上空に逃げた疾風切りだ。
地面を這うように飛んでくる斬撃にラッキーは上空に逃げるという選択をしたが、ザッカスはライアンと同じように剣技を発動し、ライアン教官の攻撃を相殺した。
「そううまくはいかぬか。」
「もちろんです。あなたの技は僕は全部知っていますから。」
「さすが天剣じゃな。」
そこからは決勝戦にふさわしい試合が行われた。お互い一歩も引かずに攻めては守り、攻めては守り、もはやどちらが勝ってもおかしくないような内容で、その激しすぎる打ち合い、早すぎる打ち合いに観客は言葉も忘れて見入っていた。
(これが最強の剣士同士の戦いか・・・準決勝までの戦いが霞んで見えるな。それでもやっぱりライアン教官の方が分が悪いな。)
ラッキーの言う通り、拮抗しているように見えるが、ザッカスの攻撃する場面が増え、ライアンは防戦一方になっていた。
「やはり年は取りたくないもんだ。身体が付いてこん。」
「僕とこれだけ打ち合えれば、師匠もすごいですよ。さすがです。」
「ふん。お主がいれば王国も安泰だな。」
「ええ。久しぶりに全力を出せましたよ。でもそろそろ終わりにしましょうか。」
ザッカスは距離を取って、剣技を発動した。
「剣技!アシュラ。」
すると、ザッカスの剣が光り、すばやい動きでライアンに連続で切りかかる。ライアンはザッカスの剣を防ぐ事が出来ず、その場に倒れた。
「勝者!ザッカス。」
その言葉とともに観客はスタンディングオベーションだ。ラッキーももちろん立って2人に戦いに拍手を送っていた。
「天剣が勝ったわね。」
「ああ。でもライアン教官もすごい強かった。俺・・・王国武道会に参加してよかったよ。前に見た時はあまり何も感じなかったけど、自分で参加してみて、改めて凄さがわかったっていうか。」
「ラッキー様。決勝戦が終わったからそのまま表彰式に向かいますよ。ラッキー様も準備しないと。」
「あっ。そうだね。行ってくるよ。」
ラッキーは観客席を後にし、闘技場へと向かった。
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「それでは王国武道会の閉会式を執り行います。」
その後、国王より優勝者のザッカス、準優勝者のライアンが称えられた。ラッキーは本選出場者として闘技場にあがっており、拍手で称えた。
「そして、次は敢闘賞の発表です。国王陛下お願いします。」
「うむ。使い手の少ない転移魔法をうまく戦闘に取り入れ、準優勝のライアンとの激しい試合を行ったラッキー・ストライクに敢闘賞を授ける。」
「えっ!?」
ラッキーは不意に名前を呼ばれて驚いた。だが、周りの注目を浴び国王の元へと歩いて行く。
「ラッキー。これからも王国の為にその剣を磨け。期待しておるぞ。」
「ありがとうございます。」
実は、ラッキーの父親がラッキーの事を王城へと報告に上がった時に、国王と打合せをし、敢闘賞をラッキーに授ける事が決まっていた。これは、希少な転移魔法使いを他国へと流さない為だ。ラッキーはストライク家に戻ったとはいえ、冒険者を楽しんでいたことを父親は見抜いていた。公爵家を離れる可能性を考えた父親からのサプライズのプレゼントだった。
「ちょっと待った!!!」
そして、表彰式が執り行われている最中に大きな声とともに一人の男性が壇上に降りてきた。そう剣聖の素質をもっており、ラッキーに初戦で敗れたメルト・ストライクだ。
「メルト・・・。」
「みんな騙されてるんだ。ラッキーは俺との試合で不正をした。おいラッキー。俺ともう一度ここで勝負しろ。お前が不正をしてたって、大勢の前で証明してやる。」
「いやいや不正って・・・」
「衛兵!何をしている。その者を捉えよ。」
国王が叫び、衛兵に指示を出す。
「そうかよ。皆ラッキーに騙されてるんだな。わかった。俺が皆の目を覚ましてやるよ。」
メルトはそういうと手に持つ赤い種を飲み込んだ。
すると・・・
メルトの身体は大きくなり、皮膚を突き破り角が生え、目は赤くなり、爪が鋭くなっていく。
「なっ!?」
赤い種を飲んだメルトは、大勢の見ている前で、大きな魔物へと姿を変えたのだった。
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いつも読んでいただきありがとうございます。
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