第98話 王国武道会開催・・・初戦の相手は⁉

王国武道会は3年に一度行われるイベントで、王国で行われるイベントの中で最大級の規模を誇るものだ。参加者は王国全土から集まる。上位入賞者は高額な賞金や高価な商品、貴族の騎士になれたりするものもいる。


王国での戦力面の強化。更には、毎勝負毎勝負どちらが勝つかの掛け事も行われており、経済効果も大きいイベントだった。


参加者が勢ぞろいしている闘技場に、ラッキーも同じように立っていた。


(メルトもいるけど少しやせたか?といってもあの体形で本当に剣なんか振れるのか?剣聖の素質ってそこまですごいのか?それに父上も母上もスイートも見に来てるな。1回戦で誰に当たるのか・・・それが重要だな。)


ラッキーが他の参加者や観客席を見渡していると・・・


「おい!お前ラッキーじゃないか。どうしてお前がこんな所にいるんだ?」


とメルトが声を掛けながらラッキーに近づいてきた。


「メルト・・・。」


「ここにいるって事はお前も本選参加者なのか?お前が参加するぐらいのレベルなら武道会も大したことなさそうだな。これは剣聖の俺が優勝するのも当然だな。」


「メルト・・・。そんな事思ってると足元すくわれるぞ?」


「ははは。俺が?剣聖の俺が?誰に足元すくわれるっていうんだ?もしかしてお前にか?ないないないない。無能のお前なんか目をつぶっても倒せるぜ。」


(コイツ!元々嫌いなヤツだったが、ここまで言われちゃ黙ってるのも違うよな。)


「お前みたいなデブなんかに負けるかよ。剣聖?はん!オークかと思って討伐する所だったぜ。」


「なっ何!?お前・・・誰に喧嘩売ってるかわかってるのか?公爵家に喧嘩を売ってどうなるかわかってるのか?」


「公爵家?お前は家の力を借りないと喧嘩もできないのか?ああそうか。いや悪い悪いオークだから頭が悪いんだったな。」


「この!!無能のくせに!」


「やめんか!!!」


ラッキーとメルトの言い争いがヒートアップしそうな所でライアン教官が2人を止めた。


「すいません。ライアン教官。」


「ふん。俺は悪くないぞ。そっちの無能が絡んできたんだ。」


「どちらが悪いとかではない。今から武道会が始まる。静かにせんとどちらも失格になるぞ。」


(そうだ。こんなとこで失格になったら今までの苦労が水の泡じゃないか。それにシルフィーやマリアにも言われてたっけ。ダメだな。冷静にならないと。)


ラッキーは観客席にいるシルフィーとマリアを見てもう大丈夫。とうなづいた。


メルトは面白くないのかその場を離れて行った。


「ライアン教官。先程はありがとうございました。」


「うむ。あれは剣聖だったな。知り合いか?」


「まあ、はい。色々ありまして。」


「そうか・・・おっそろそろ始まるみたいだ。」


『お待たせ致しました。只今から第104回王国武道会を開催致します。』


司会の開会の挨拶とともに武道会が始まった。王様の挨拶や大会のスケジュール、来賓の挨拶と進んでいき、出場者の紹介へと移って行く。


出場者は名前を呼ばれたら前へ出て、抽選のクジを引く。


最初に前回優勝者の王国騎士団長のザッカスが呼ばれた。さすが、前回優勝者、堂々と歩いて行く。ザッカスが歩くと観客の歓声がすごい。


次に呼ばれたのはメルト。公爵家で剣聖の素質を持っていると紹介されていた。


ザッカスは32番、メルトは1番、二人は丁度トーナメントの両端に名前が書かれる。二人は本戦からの出場の為、クジを引かずにはじめから場所は決まっていたみたいだ。


次々に参加者が呼ばれていき、トーナメント表が埋まって行く。


『続いては冒険者ギルド所属のラッキー!冒険者ランクはCランクですが、去年冒険者になったばかりの期待の新星です。』


(メルトの隣はまだ空いてる。できれば2を引きたい。31番も空いてるがそっちは引きたくない。神様・・・お願いします。)


ラッキーは抽選箱から数字を引く。


出てきた数字は・・・


2だった。


(よし!よしよし!ありがとう神様。)


全員がクジを引き、トーナメント表は埋まった。その後も開会式は続いていき、閉会の挨拶ととも、開会式は終わった。


本戦は明日から行われる。

初日と二日目で行われる初戦に、勝てばベスト16だ。ラッキーは2を引いたので明日の第一試合がラッキー対メルトの試合になる。


ラッキーは開会式が終わると、メルトに絡まれないようにささっと宿に戻るのだった。



そして、開会式の様子を観客席で見ていたストライク公爵家のロート、クッキー、スイートは・・・


(あれはラッキー!?なぜここに・・・。しかもCランク冒険者?どういう事だ・・・。メルトの相手がラッキー。クッキーが言ってた事はこれか?クッキーはラッキーが出場するのを知ってたのか?)


「クッキー・・・。あれは・・・。」


「あなた。全ては明日、明日決まりますわ。私も公爵家の人間ですが、家族を幸せにできない者がどうやって領民を幸せにできるでしょう?私は母としてラッキーを応援致します。」


「お前・・・。」


「あなた。見栄も大事ですが、人間失敗もあります。間違いを認める事も、上に立つ者には必要だと思いますわ。」


(ラッキー。私はあなたを信じていますよ。あの時の目は本気の目でしたから。)


「・・・」


(間違い・・・か・・・。明日の結果次第では俺も考えないといけないな・・・。)


ストライク公爵家はそれぞれに明日の試合を期待するのだった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る