🌋遭難

オカン🐷

遭難

 えっ、ウチが、そ、それを着るん?

 だって、ショッピングピンクやない。

 ああ、ショッキングピンクね。

 どっちにしろ嫌や!

 もともとショッキングピンクしかあらへんて。

 わかった、わかった。

 ショッピングピンクやろ。

 いくらウチが若こう見えるからって、それはナイわあ。

 やめてよ、その上、パンツはヒョウ柄?

 ウチにチンドン屋やれって言うてるん?

 あらま、チンドン屋を知らんて。

 難儀やなあ。そこから説明せんとあかんの。

 昔、派手な服着て宣伝して回る鼓笛隊がおったの。

 鼓笛隊?

 もう、いちいち引っかかるなあ。

 そんなんやと、海の中で暮らしていけまへんで。

 そうやな、あんさん魚とは違いますな。

 エラ呼吸でけへんしって、立派なエラがありますやん。

 その顎の上の方に、ほうら。

 それはエラとちゃいますのん。

 耳の下のそれ。

 そうそう、それ、それ。

 失礼なって。

 まあ、どうでもよろし。

 ウチが言い出したことやって。

 そない細かいこと気にしなさんな。

 ともかく、ウチは純白な衣装を身につけ、文学の神様にこの身を捧げるんや。

 ああ、神様、愚直にコツコツと毎日筆を執っております。

 ほれ、この通り。作品はようけありますのんや。

 白紙に綴ってますやろ。

 どうか、どうか、日の目を見させてやっておくんなまし。


 ある日、気付いたらウチは作品に埋もれていた。

 誰か~、誰か助けて~

 ウチを引き上げて~~~~~~~


 もっと目立つ色の服を着ていたら、早く助けられたのに。

 残念や……。

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