第6話 【曽呂門町の神様 3】

消費者金融からお金を借りて、リリスに会いに行った。


リリスが給仕するBAR、リリスが出演するライヴハウスやLIVEチャットに顔を出し、リリスと過ごす時間を楽しんだ。


最強のメイドを謳うリリスの人気は僕の想像以上で、曽呂門町では相当な有名人だった。


天真爛漫なゴスロリが彼女の世界観。


彼女はコインロッカーの中で生まれ、16歳から時が止まったから、永遠に少女だと主張する。


恋愛をすると彼女の止まった時が再び動き出し、愛されている間は女神になり、愛が終わると世界を滅ぼす魔女になるそうだ。


でもリリスは永遠の少女でいたいから、今まで誰とも恋愛をしなかった。


孤高の存在として全てのファンを下僕と蔑みながら生きていく事をモットーとしていた。


僕たちファンはそんなリリスのメンヘラ的なファンタジーを共有して、彼女のパフォーマンスを崇めた。


接客トークは常にユーモア全開、リリス自身が作詞作曲した楽曲はどれもプロ顔負けのクオリティで、彼女のライヴ会場は常に満員だった。


リリスがSNSに時々アップする趣味のイラストも評判が良く、ノリで作った『Lunatic party』というネットショップが10代、20代を中心にゴスロリ系の新しいブランドとしてバズっている。


ただその人気の裏には金儲けのために何でもやる女だという黒い噂もあり、彼女のSNSにはアンチによる攻撃的なコメントも多く見かける。


リリスの全てが気になる僕はそんなコメントも一つ一つチェックして、何が本当で何が嘘か分からないまま彼女に対する幻想をどんどん膨らませていった。


リリスはファンに貢がせた金でホストに貢いでいる。


リリスは金持ちのオッサン相手にパパ活をしている。


リリスのライヴの運営は反社な人たちばかり。


リリスは曲を作る時に大麻を常用してハイになっている。


リリスの両親はダムに車を転落させて不審な自殺を図って死んでいる。


リリスの元彼も彼女と付き合いだしてから精神がおかしくなってアパートの屋上から飛び降り自殺をしている。


リリスは境界性パーソナリティで、学校でもアルバイト先でも次々とトラブルを起こす社会不適合な人間だ。


リリスはとある有名人の隠し子。


リリスの人気はそのとある有名人のバックアップがあるからで彼女の実力ではない。


リリスは曽呂門町の神様に魂を売った。


リリス (Lilith) は、ユダヤの伝承において男児を害すると信じられていた女性の悪霊である。


僕の頭は四六時中リリスの事を考え、今にもパンクしそうだった。


リリスに関する事が全てホントでも僕には関係がない。


リリスと僕は月とスッポン。


どう頑張っても恋愛に発展するような関係じゃない。


自暴自棄で始めた推し活でしかないから、僕の人生はこのままリリスに捧げると決めた。


借金が膨れ上がりもう首が回らない。


僕はリリスと心中する。


それが僕の最後の願い。


リリスのように僕もこれから曽呂門町の神様に会いに行く。





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