第42話
今回に関してはサキを活躍させて勝利するのは難しいな。普通のデッキでは勝てないからな。
とりあえずブリリアントソードを使われて負けることが無いように対策を取りつつ時間を稼ぐか。
「『音神ラブ』を召喚。ブリリアントソードは一旦待ってもらおうか」
「別に良いけど、盤面が大変なことになるだけだよ?」
「そうだな。だが少し待て」
私は相手の呪文を封じ、手札が整うのを待った。
こちらの呪文を封じる手が止まれば勝利だと確信している二人は私の妙な行動の対策をすることもなく、ただ盤面を広げていた。
カードプールを知っているが故の油断だろうな。1枚で盤面を崩せるカード等存在しないと。
「ではゲーム終了の時間だ。『絶望の星』を使用——」
私はループを始動した。
「うそん」
「それ本当に使う人居るんだ……」
するとすぐに二人は私が時間稼ぎした理由に気づいたらしく唖然としていた。
まあ仕方ない。これは一般的には5種類のカードが必要なループだからな。まともにカードを揃えようとすると時間がかかりすぎて弱すぎる。
しかし、私にはサキが居るからな。序盤に何もできなかったとしても特に問題は無い。
「というわけで私の勝ちだ」
一度始動したループを私が間違える筈もなく、何事もなく特殊勝利条件を満たし、私たちが優勝した。
とそんな過程はどうでも良い。勝利して優勝賞品を獲得した、この事実が何よりも大事なんだ。
私たちは優勝賞品としてペア旅行券を貰い、無事に案件は終了した。
「さて、何がどうなっているんだ?」
それから数日後、正式に受け取ったペア旅行券を利用し私は神奈川県に来ていた。
勝利した私とサキが海に居るのは理解できる。私たちが行かなければ嘘だからな。
そして、
「いやあ、海なんていつぶりだろうか」
私の隣に次葉が居ることも分かる。流石に付き合ってない男女二人で旅行に行くのは健全じゃないだろうという判断で私が呼んだからな。
しかし、
「どうしてお前が居るんだ?」
「どうしてって誘われたからに決まっているでしょ」
「誘われたとしても普通来ないだろ。あの案件の時に私に何を言ったか忘れたのか?」
「何の事?別に変な事を言った記憶はないけど」
冴木、どうしてお前がここにいる。
「配信業を引退してほしいって言ってただろうが」
「ああ、アレ?確かに配信業は今でも辞めてほしいとは思ってるよ」
「ならなぜ来たんだ」
そのくらい嫌いな人が居るならふつう来ないだろう。絵馬と違ってサキの大ファンとかでも無いだろうに。
「それは勿論ファンだからに決まってるじゃないですか」
「サキか?」
「違うよ、優斗さんだよ」
「は?」
「え?」
「私のファンなのに私に配信業を辞めてほしい?」
「うん。ファンなら当然でしょ」
「は?」
何を言っているのか一切分からない。誰がどうみても矛盾しているだろ。
「というわけだからよろしくね」
「というわけじゃない。ちゃんと説明しろ」
「説明したでしょ?」
「どこがだよ」
「うん、私が代わりに説明しようか」
全く理由を説明しようとしない冴木に代わり、次葉が何故か理由を説明してくれた。
「そうかそうか!!!今日はよろしくな!!!!!!!!!!!!!!」
いや、まさかそういうことだとは思わなかった。
だから私は冴木の気持ちに気づけなかったお詫びの意味合いで全力でファンサをすることにした。
半分くらい私が嬉しいからという理由もあるがな。
「うん、気持ちが伝わってくれて良かったよ。だけど、そういうことは求めてないかな……」
硬く握手を交わした後、肩を組んで一緒に写真を撮ろうとしたのだが、冴木は何故か嫌な顔をしていた。
「そうか、好きな相手と距離感が近いのは恥ずかしかったか。すまなかった」
ついついやりすぎてしまった。嬉しいことでも過剰だと辛いか。
「そういう意味じゃないと思うよ……」
と反省をしていると、サキが何故か呆れた顔をしてそんなことを言っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます