第124話黄金のレオンとレックスの溶岩パスタ

  八百万 パスタの日 

 

 パスタの日はパスタの日なのだが、今日は楽したい斗真が大量に作って放出する日ではなく、ちゃんとしたパスタ料理の日。 

 

 その名も溶岩パスタ。 

 

 紅玉トマト、異世界のトマトの中でも王様ランクで果物の様に美味しく、そのまま食べれる程人気で街をあるきながら食べている人もいるくらい人気なトマト。 

 

 このトマトを使ってミートソースを作る。 

 

 肉にはダンジョン産、睡眠牛、地上に近い階層に生息する睡眠牛は、敵対者を眠りに誘いそれはもう快感になるほどの快眠をさせる。 

 

 寝起きすっきりで体調がよくなる者もいる。 

 

 人懐っこく、他の魔物や人間に乱獲される心配から、狩猟制限がかけられ保護されている牛である。 

 

 肉質は柔らかく脂も極上で、素人が塩振って焼いただけでも小便漏らすほど美味い!と言われたダンジョンが誇る美味なるモンスターの一頭でもある。 

 

 そのトマトと肉を使ってのミートソース!ちょっと大きめの鍋っぽい厚めの器にミートソースを敷き詰め、そこに今回はホワイトソースを入れ、その上からチーズをもう冗談だろ?ふざけてるの?ってくらいドバァっとかけ、チーズの海に沈めたら、表面に焦げ目をつけて完成である。 

 

 黄金のレオン 

 

 いつの間にかS級に昇格、SS級は複数の国に認められなければいけないので他国を回るのが通例となっているが、八百万から離れたくない上にS以上の世界は単なる実績の評価の世界なので、Sで個人の武はSSSクラスなんて人も沢山いるので、国による優遇措置や力関係的にSSSランク欲しいって人間もいるが、力の証明なんてめんどくさいので自国で認められればいいやと言うSランク止めの人間は多い、レオンもその一人である。 

 

 パスタの日!みんな大好きパスタの日である! 

 

 でも今日はいつもとちょっと違う、溶岩パスタ!名前は仰々しいが初めて聞くパスタに冒険者ギルドも商業ギルドも大興奮!列にはいつもの奴らがずらり、俺と言えばレックスと一緒に列に加わった。 

 

 「溶岩パスタなんて想像つくか?」 

 

 「溶岩って言われて俺も驚いた、インパクトはばっちりだな。どいつもみんなわくわくしてる。あそこにはグラナダの姐さんとガウェインさんが、うへぇ・・・アテナ率いる十二星座団の少女隊長が勢ぞろいで列にならんでるぞ」 

 

 「フィガロさんやルーカスさんにギムレッドの旦那、クリスタ姐さんにニーアお嬢はいいよなぁ、何せ八百万を始める事を斗真の旦那に進めて、優遇してた人らだ。列に並ぶまでもなく超VIP扱いってか、家族扱いで家の中でみんなで飯くってるって話だもんなぁ」 

 

 「そうそう、たまに店の方にも顔出したりするよな、ガンダルフ様にマーリン様、エスメラルダ様とフラメル様も斗真の旦那を孫の様に猫可愛がりしてるし、ねねちゃんやリリちゃん、孤児院の子達とも楽しそうにしている姿をよく見る様になった。伝説の皆様方は姿みれるだけでもレアなのに、八百万に普通にいるからな、伝説の皆さんを目当てに突撃してくる奴なんかもいたもんなぁ」 

 

 「まぁどいつもこいつも無法者はクラウスさんにあしらわれてるんだけどな・・・・・」 

 

 「あの人宿のオーナーやってるのに、斗真の旦那やねねちゃんリリちゃんが危ない目に会いそうなとき一瞬で現れるよな。正直怖すぎるんだけど・・・・・」 

 

 「見た目は完全に初老の紳士執事だからな、あの見た目で5大英雄まとめて転がせるなんて誰か想像つくかよ」 

 

 「従者部隊の一桁のナンバーズの中でもトップ3位まではいかれてるって聞いてたけど、あの人の上は伝説のマーリン様に無敵のルーファウスだもんな、画面端に叩きつけられた後に、ジェノサイドなカッターを出しそうなあの人だもん・・・・」 

 

 「仏滅部隊の殺意のなんとかで有名なあの人との直接戦闘はそりゃ凄かったって語り継がれてるくらいだもんなぁ」 

 

 と適当に話しているとあっという間に自分達の番に、溶岩パスタ!楽しみだ。 

 

 「いらっしゃいませ!レオンさん!レックスさんも!今日は溶岩パスタの日、特に食べ方なんかはないけど、とっても熱々だから火傷には気をつけてね!」 

 

 「おう!ねねちゃん、よろしく頼む!いやぁ、ねねちゃん達の元気な姿を見に来てるようなもんだしな、孤児の子らもみんな元気そうでよかった」 

 

 「今じゃ街のお助け部隊だもんなぁ、ちょっと前に比べれば本当に良くなった」 

 

 孤児たちを見て、二人とも目を細める。 

 

 自分達が子供だった頃に比べたら、今の子達は幸せだ。 

 

 冒険者の一人二人が大金寄付した所で、一時しのぎにはなるが、結局は継続的な支援と未来に向けての準備や無理のない支援などが必要なんだよな。 

 

 法や制度なんてのは俺達にはどうしようもない、領主の領域だ。 

 

 アーサー様は俺達領民の事を考えてくれるいい領主だ。 

 

 そんな事考えていると、デカめの鍋みたいな器を子供達が運んでくるが、それが見てて怖い、力や体力アップなんか魔道具なんかで補っているんだろうが、見てて怖いものは怖い。 

 

 静かにどっかりと置かれた鍋の中ではチーズが重くごぽごぽと泡が溶岩の如く出てる。 

 

 チーズ!チーズの海!なるほどと思いながら、長めのフォークで下にある麺をすくいあげる。 

 

 まずチーズにホワイトソースが絡まって、美味い!ダンジョンの街では酪農なんてやってる奴がいないから、乳製品ってのは本当に贅沢な品なんだ。 

 

 濃厚な味!チーズの味!玉ねぎやマカロニなんかが入ってて美味い! 

 

 次は麺、嫌でもチーズに絡まり赤いソースが見える。 

 

 トマトのソースの酸味、肉の強い旨味、それがチーズの濃厚さと絡まり、それを一つに麺にまとめて食べると一つ一つ孤立してた個性が、一本の縄の様に絡み合って頑丈な一本の荒縄の如く芯が一筋通った味わいになる。 

 

 八百万恒例の沈黙タイム、カチャカチャと食器の音と子供達の仕事してる音や会話だけになり、客はもくもくと静かに食い始める。 

 

 誰が始めたわけでもない、みんな額に汗かきながら一心腐乱にただ味に没頭する。 

 

 時に勝手に笑みになりながら、時には真剣に睨みつける様に、目の前の料理を個人個人黙々と食べる。 

 

 それでも時折声がもれる。 

 

 んん!?とかうまっ!あっつ!と満足そうなんふ~とか声が静かに色んな所から漏れ出る。 

 

 チーズもさることながら、メインはこのミートソース!このトマトと肉の相性が抜群で滅茶苦茶美味い!美味すぎるぐらい美味い!そんな口いっぱいにしてちゃんと噛めるのかとかそんな事もどうでもよくって、もう夢中で口パンパンにしながら、口の周りはトマトソースで赤くなる。 

 

 たまんないよ!こんなの幸せを一つの皿に全部詰め込んだみたいな料理、上品に食べてなんていられない。 

 

 子供の頃に戻ったかのような感覚、もう目の前の料理の味が新しすぎて夢中で食べた日の記憶をそのまま再現するかの様に、ガツガツと食べ進める。 

 

 一食事にこんなに幸せを感じる事ってある?感謝しながら、うまいなぁなんて考えながら、幸せだななんて思いながら皆は食事しているだろうか? 

 

 つくづく思う、人生の内日に3度、つまり人生で食事をする回数とはある程度個人差はあれど、決まっているものなのである。 

 

 時には病気になり、健康を気にして、油ものを避け、塩分を気にし、満足のいかないもので腹を満たす時だってあるだろう。 

 

 だからこそ、自分の好物や好きな物を欲望のまま貪る時は幸せでなければいけない。 

 

 食事で幸せな味を味わえる回数は限られているのだから。 

 

 俺達は幸せである。 

 

 毎日違う料理を出してくる、びっくり箱みたいな店 八百万があるのだから。

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