第83話超大国オルレアン 十二神軍 第一将軍セラフィムのドティ オムライス

 ここは八百万、世にも珍しい稀人、異世界人が経営する飯屋である。 

 

 稀人事、店主の八意斗真は大大陸王国ブリタニアの大領地ウェールズの街に急に現れた異邦人である。 

 

 斗真氏が食事処を初めて、最初にメニューに乗せた料理の材料が、なんとこの世界では貧民も食わないと有名なイールを美味しく食べれると言う事から始まり、内臓の料理、生の魚を使った料理、生肉の料理、など今まで生食しなかった物、腹を壊す恐れや最悪死に至るものまで安全に食べれる様に処理、または神の加護がある料理人である。 

 

 また異世界の酒、しかも上等な酒や高品質な酒なども安価で飲ませてくれる事も最近では有名になり、また宿やその周辺にある娯楽設備は世界的にも例はなく、子供から大人まで遊べるまさに一大テーマパークであり、しかも薄暗くどちらかと言えば黒いイメージや暴力的な組織とのかかわりが深いと思われる、賭博行為を健全化し、国で運営する事でギルドカードと連携して個人的中毒者や破産者を減らす事や、税金として福祉や国民の為に使うなど活気的なアイデアをもたらした。 

 

 ウェールズの街、と言うかブリタニア自体が元々は裕福で貧民の少ない国だったが、邪神討伐戦後、戦いに向かった大人達が大勢死んだことにより、孤児、または四肢の欠損などの傷病者が増え、大人が少なくなった事に対して路頭に迷う子供は多かったが、子供達を取りまとめての教育が始まり、様々な職業に就ける様に国が補助する制度なども始まり。 

 

 国庫も回復、世過剰分を地方の街や都市に分配するなど少しずつではあるが、安全な社会が成立していた。 

 

 その政策に異邦人の斗真氏が関係しているかはわからないが、八百万が誕生してから、冒険者や街に住む人間はもちろん、有名な異名を持つ者達の意識改革が行われたのは確かな事だと思われる。 

 

 殺伐として、個人を大切にしていた人々が他人を気遣う事や、優しく声をかける、そんな都市に変身していたのだから。 

 

 ウェールズの八百万の話は、隣国ミドルヴァースはもちろん、ブリタニア大陸から下に存在する国ハイエルフが治める他種族混成国家オルレアンにも、その名は広まりつつあった。 

 

 超大国オルレアン 十二神軍 一の将セラフィムのドティはブリタニア大陸に面白い宿が出来たと聞き、真っ先に国に休暇届けを申請して遊びに来た人間の一人である。 

 

 また派手で自信家の多いオルレアンの人間は、こそこそする事が嫌いでむしろ目立ちたがり屋なので、よく周りの人間に「俺はオルレアン十二神軍の第一将軍!セラフィムのドティってもんだが、知っているかい?」などと自分から正体を明かす始末、いい意味でも悪い意味でも豪快な人間だった。 

 

 ドティ 

 

 八百万の宿を利用して以来、国に帰る気がしない。 

 

 はっきりと言おう!ここは世界の楽園だぞ!俺は真っ先に休みをとってバカンスに乗り出した自分の行動をほめてやりたい!それ程に宿はもちろん街自体が綺麗だ!汚物の匂いなど全然しない清潔な街、この世の物とも思えない美味い料理を出す店!遊び場にギャンブル!酒!花や緑もあり、動物とも戯れられる!。 

 

 ここが極楽じゃなくってどこが天国だというんだ? 

 

 はっきり言おう!俺は色々な国、街、飯を食ってきたと言う自信がある。 

 

 移動大陸が発見されれば遊びに行き、極東の島国が発見されれば遊びに行き、天空挺国家が発見されれば遊びに行き、浮遊大陸が発見されれば遊びに行き、幻想界が発見されれば遊びに行き、精霊界があれば遊びに行き、無人の大陸すら遊び、海底国家にも遊びに行き、およそ俺以上に世界の娯楽や飯、酒などに詳しい人間は、あの情報屋トムソンにすら負けていないだろう。 

 

 ここはこの世の全ての娯楽が詰まっているかの如く、まさに天国といっていい人類の宝たる楽園の一つだろう! 

 

 少しだけ文句があるとすれば、美人が多いのは結構なのだが、どの子も気が強い所が中々に惜しい!ドティは顔に手形を付けながらも笑う。 

 

 そしてこの大陸の人間も中々に油断できない人間が多い、私にとって強者が多く存在する事は楽しみが増えたと言っていい事なので大歓迎だ! 

 

 そして飯!何よりは飯!ここの飯は世界一だろう!故郷の味や母の味もそりゃあ好きさ!だがここの店、八百万の飯は飛びぬけて毎回美味い!一見庶民が食べる物だと思う料理が、癖になるほど美味かったり、時には優雅に味を確かめながら食べるべきものもあれば、本能のままに貪り食うものやマナーなどそんなものも忘れ無我夢中になるものまで、色々とある。 

 

 少し前までの私なら、食事とはいえあくまでも優雅に文明人らしく味を確かめて食べるべき、獣ではないのだから理性をもって食事にも接するべきだと考えただろう。 

 

 だが味わってみれば、そんのものぶっ飛んで気がつけば味に酔いしれ、満足感に浸っているのだ。 

 

 俺の食レポもとい国レポは今頃12神軍はもちろん、王から王子に王妃王女、果は公爵までが、俺のこの情報を呼んでいる事だろう。 

 

 奴らの事だ、きっと羨ましさに歯ぎしりしている頃じゃないか?だってこんなにも当たりの国なんて、そうそうないのだからな!パワー!ハッ・・・・ハッァハッァハッァ。 

 

 今日は卵を使った料理、なんでもオムライスと言う料理が出るらしく、卵かぁちょっと前なら生の卵や半熟の卵なんて出されたら怒ったもんだと思いながら料理を待つ。 

 

 すると、綺麗なドーム型に膨らんでいる黄色い物、これは卵か?若干生焼けなんじゃないかと思わせるトロトロ具合だが、この店が出すのならこれが正解なのだろう。 

 

 そこに香り高いブラウンソースがかけられている、うん?今回は箸で食うのではなくスプーンで食うのか?ハハッ私もすっかり箸に慣れたもんだ。 

 

 スプーンで掬うと、トロトロの卵の下には米が敷き詰められている、なるほど卵と米、そしてソースと一緒に食えと言う事か!?ガッと掴んでパクリと口に運ぶと、その瞬間に喉奥にごくん!・・・・・・・・あれ?今口に入れたよな?今度はしっかりと気合を入れて!ヤーーー!バクリ!モグモグ、ごくん!うん?何故だ!?数回噛んだだけで喉奥に運んでしまう!こうなったらもう一度だ!!やああああああああああああああ!!!パクリ!もぐもぐもぐもぐもぐ!うん今度はしっかり味わえている。 

 

 おほほん!とろとろの卵の味!クリーミーで美味い!そこにソース!濃い旨味の強いソース!酸味もありながら肉肉しい味の濃さを感じる、そしてやはりきたか!八百万名物とも言ってもいいだろう!少なくともここら辺でまともな米を食わせてくれる店は八百万だけだ!トマトの甘味と酸味!ソースとはまた違う味なのに多次元的に口の中に広がっていく!旨味のアナザーディメンション!卵!ソース!米!これらが複雑に幾重にも味の織りなす次元を変える、あああ!油断していると異次元に飛ばされてしまう! 

 

 とろとろ感もあって口の中で滞在している時間が圧倒的に少ない!数回の咀嚼をもって喉が早くこっちに運んでくれ!もうがまんできねぇんだわ!そのトロトロの奴喉奥に運んでほしいんだわ!と私の口の中で喧嘩をする、そうはいくかとしっかりと味わって噛んで噛んで噛んで、味を確認しているつもりなのだが、気がつけば口の中には何も入っていない! 

 

 我慢しているのに!味わおうとしているのに美味すぎて飲み込んでしまう!飲み物なのか?飲み物じゃないのか?どっちなんだ!?ううううんん!筋肉ルーレットで決めよう!行くぞいおおおおおお、筋肉!ルーレット!やあああああああああああああああああああああああああああ!

 

 立ち上がって筋肉と対話していたら、いつも通りねねちゃんに金属のお盆が俺の顔の形に変形する力で叩かれた事で我に返って席にまた座る。 

 

 なんて美味い料理なんだ!それこそ飲み物と同じくらい簡単に飲めてしまう!それでいて、この複雑な味をしっかりと味わえるのだから人間の舌というものは素晴らしい! 

 

 まだだ!まだ私は帰らないぞ!もっと料理や酒を楽しんでから帰るんだ!そう言え!筋肉達よ!Uえ!Uえ!Uえ!Uえ!おっといかん、また盛り上がっていたらねね殿におこられてしまう。 

 

 食事はみんなの邪魔にならない様に、個人個人楽しんでしなければいけない!! 

 

 ドティは知らない、ドティの食レポや国レポは意外と人気と信頼度がある事を、国民はもちろん十二神軍の将軍達はもちろん公爵家、王族から王様にいたるまで、ブリタニアに遊びに行く口実をどうしようかと考えている事を、この男はまだ知らない。 

 

 

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