第52話祭りの終わり
休憩も終わり、観客の熱も冷めぬ中5大英雄の深紅の衝撃 聖女クリスタ対 カラミティークィーン 暴虐姫ニーアの試合が始まろうとしていた。
「さぁ今回の試合最高のカードのぶつかり合いですが、どう予想しますか?ギムレッドさん!」
「二人ともそれなりに今回の大会意識してますからね。一撃で終わるというよりも楽しませる戦い方をするんじゃないかと思います。特に斗真さんにいい所見せたいとはりきっておりました。それなりの技の応酬がみれるのではと思っております」
「とても楽しみですね。さぁ両者武舞台の上にあがった!試合開始の合図が鳴り響く!!」
「ニーア・・・・」
「クリスタ・・・・・いくぜ!おい!!」
一気に間合い詰め二人はぶつかり合った。
「両者凄まじい拳と拳のぶつかり合い!超近距離での打ち合い避けあいだぁ!目まぐるしく動く攻防のその速さ!なんとかとらえる事が出来る!」
武舞台との観客席の距離は十分にあるのに、二人の拳のぶつかり合う音が尋常じゃないほど響き渡る。
まるで出来損ないの楽器の様に、バチバチガンガンと到底拳と拳のぶつかり合いには聞こえない鈍い音が鳴り渡り、一発一発がぶつかり合うごとにぶつかり合うインパクトの場所から輪の様な衝撃派がギャンギャンと広がり、花火のように見えて来る。
「輪舞 千人組手!!」
「打ち抜かせてもらうわ!!ドラゴニックアンタレス!!!」
「四方八方からの千人の攻撃をもいなす、千人組手をドラゴンの一撃が打ち抜く!千人組手でもいなしきれなかったかニーア選手大幅に後方に後退したあああああ!」
クロスしたニーアの腕にはくっきりと赤い痣が残る、ガードの隙間から見えるニーアの顔は龍族特有の目を光らせて獰猛に笑う。
「ふふっ燃えるぜ」
「貴方と戦ってると嫌になるわ、渾身の一撃も軽く防いでくれちゃって・・・・・それじゃあ・・・・・・・ギアをあげるわ!!」
クリスタがニーアに飛び掛かる、さっきとは速さも体の動かし方も違う動きで襲い掛かる。
「ブラッティスカーレット!」
踊るかの様に繰り出される打撃の数々、ニーアをどんどん追い詰めていく。
「こっちからもいくぞ!」
クリスタの打撃の連打を回避して、足元から深く入り込むと、下から腰に向けて拳を打ち上げた。
だがクリスタもただではやられない、飛んでくる拳を打ち落とそうと膝を合わせるも、ニーアの拳の威力を抑える事はできず、ぶつかり合った膝をそのまま拳で空中に打ち上げられる。
空中に投げ出されたクリスタをまっていたのは、八人に分身したニーアの神速の攻撃だった。
「止めだ!ライトニングファング!!」
龍の形をした雷が口をあけ、クリスタに襲い掛かる。
爆発と共に立ち上る煙、その煙が晴れると輝く鎧に包まれたクリスタが姿を現した。
「これは聖鋼気!聖人!聖女だけが具現化させる事ができる絶対なる気!神が纏う神気にもっとも近い物!まさかこの大会で拝めるとは非常に縁起がいいです!!」
「ちぇ~・・・・武舞台から落ちちゃったわ、今回はあんたの勝ちね」
「おっとクリスタ選手敗北宣言か!」
「私とニーアがその気なら決着にまだまだ時間がかかるわ、お祭りなんだからそんな長ったらしいのも嫌でしょ。お互いに決めあっての決着だしね」
「ではクリスタ選手の場外でニーア選手の勝利とします!」
二人の勝負は意外な形で終わりを告げた。
そして次の試合、アーサー対ミニャの試合になるはずだったのだが、ミニャが面倒がって試合を拒否、アーサーが決勝に上がる事が確定した。
「一位から5位のメニューが復刻するなら、こんな試合に興味ないにゃ!いつ敵になるかもわからない連中に手の内見せるほど、私は馬鹿じゃないのにゃ!!」
そして準決勝最終戦、ラーメンクィーン対精霊姫エーテルの試合。
前の試合で結構な消耗を見せたのか、エーテル選手はかなり不調の様だった。
「エーテルさん、貴方に棄権する事をお勧めするわ。そうこまで消耗しているのに私と戦う事はある意味で私にも無礼よ」
「そんなのわかってますよ!相手が貴方だから上がってきたんです!ほら帰りますよ姫!種族は違えどハイエルフの高貴なる血筋なんですから!」
「はて?なんの事かわかりませんわ!いくら私が高貴なハイエルフの姫、ハイリューン・ヒルデガルドに似ているからといって・・・・・・人違いですわ!」
「なんにつられて出て来たのかは知りませんが、知ってしまった以上私の保護下に入ってもらいます!」
「でもここで私まで棄権したら、アーサー様が何もしないで優勝になりますわよ?観客がそれで許すと思う?」
「姫以外にもニーアさんがいるじゃないですか!?」
「ニーア様も先ほどクリスタ選手と一緒に棄権しましたわよ」
「嘘!?」
全員が解説のアナウンサーに集中すると。
「えぇ本当ですね。クリスタ選手とニーア選手二人とも棄権した事になっております。ええとなんでも八百万メニューが1位から5位まで復刻されるなら、大会に出る意味はないと・・・・」
これを聞いていた観客全員が納得した。
確かに八百万のメニューが好きなもんが食えるって話で大会に参加した人間は多い、それこそ黙っていて復刻されるならもうこれ以上戦う必要はないだろう。
「ここで私まで棄権してしまっては、流石に・・・と思い残っていたのですが、メニューが復刻するなら私も試合には興味ありませんの、空間のエスメラルダ様に結界が張られているとはいえ、コロッセオはコロッセオ、戦える技も繰り出せる技も限りがありますわ。それもコミコミでみんな力を抜いて戦っていたのですが。貴方だって対広域殲滅魔法なんて使っていないでしょ?」
「まぁそうですけど」
「そも、冒険者たるものいかなるシュチュエーションで戦う事になってもある程度力が出せなければいけません。狭いダンジョンならダンジョンでの、広い丘や山、海に火山に氷河に溶岩に空中戦、それぞれに答えてこその冒険者と思い、観客がいるこのスタイルにも合わせて戦っていましたが、やはり対人戦は窮屈ですわ。それに八百万のメニューが復刻されるなら、別に優勝者に報酬でもなければ参加しませんわ。例えば優勝者の願いを一つ叶えるとか八百万の店主さんを我が国に招待するとか・・・・・・・」
シーンと静まり返った沈黙が流れる。
とここで斗真が出てきて、斗真の考えを伝える事に。
「俺が八百万の店主なんだけど、俺なんかを招待してくれるならもちろん王都やグラナダ領にもいってみたいし、危険がないなら他国を除いて見てみたい気持ちもあります。その間店おやすみになっちゃうけど、でも俺なんか招待してもいい事なんもないと思うんだけど・・・・・・」
そこにアーサーが割って入った。
「斗真殿の旅行については、それこそ私だけの一存で決める事はできない、それこそ王に直接お伺いしなければな。今回の祭りはこんなもんでいいのではないだろうか?」
なんだかうやむやになったが、大きな歓声と共に武道大会は終了した。
新たに建設された、宿屋街や食堂街、酒場街なども満室になるほど混雑したが、沢山のお客さんで賑わって街の活気はそれは凄いもので、夜になっても酒瓶片手に道を歩いている人や、朝方まで空いている酒場が何件もあるくらい、祭りの熱は落ち着かず、八百万の宿と施設も24時間営業で大賑わいした一日だった
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