第44話夜の部 八百万 タイタンのレックス 輝き鳥の焼き鳥に鳥刺し 冒険者受付嬢 ラーナの為の日替わり弁当

 夜の部 八百万  

 

 夜の部が始まる前に、みんなで晩御飯を食べるのだが八百万に定期的にダンジョンの食材などを、大量に手に入れた時におすそ分けしてくれる人などを呼んで一緒にご飯を食べる事もある。 

 

 今日のお客さんはレックスさん、輝き鳥のしかも肥えて脂の乗った極上品を店に分けてくれた冒険者さんである。 

 

 もちろんいつもの夜の部にも常連としてレオンさんと一緒によくうちに飲みにくる。 

 

 輝き鳥のお肉にフォアグラ化したレバーは使ったけど、まだまだ内臓類が余ってるし、何より美味い!レックスさんを呼んでお客さんより先に輝き鳥の内臓を味わっちゃおうという魂胆だ。 

 

 タレも塩もある、そう今日は焼き鳥だ! 

 

 米を食う文化の強い俺は、どうしても米がほしくなるけど、今回は焼き鳥だけで腹いっぱいになる様にしこたま、仕込んだので米抜きでもいいと思う、けど物足りなくなったら米を食おうと思った。 

 

 「今日は焼き鳥だよ~、ももに皮に砂肝につくね、レバーにちょうちん、やげん軟骨、ぼんじり、とさかにねぎまにせせり、ハツももちろんあるよ」 

 

 「お肉!輝き鳥のお肉祭りだぁ!」 

 

 「美味そうだなぁ~タレが特にいい匂いで!」 

 

 「お米は!今日はないの?斗真おにいちゃん」 

 

 「一応炊いてるよ。たまにはお肉でおなか一杯になるのもいいと思って」 

 

 「はぅ~贅沢です~!」 

 

 リリはお米が好きになったのと、嬉しいとはぅ~って声が出る事が最近になってわかった。 

 

 「すまないな、家族の団らんの時に邪魔して。俺は店側でもいいんだが」 

 

 「何言ってんのレックスさん!今日の主役はレックスさんだよ!その為に用意したやきとりなんだから!」 

 

 「そうそう!輝き鳥なんて高価な鳥あんなに沢山くれたんだもの!遠慮しないで食べたほうがいいよ!」 

 

 「食べよう!早速食べよう!」 

 

 レックスさんに真っ先に食べてもらおう! 

 

 「このネギの奴から・・・・うん!甘めのタレに引き締まった肉質があう!ネギもシャキシャキしながらもタレとは違う甘味をだしているな!これは酒が欲しくなる!」 

 

 「そういうと思っていいお酒用意したよ。お祝いや記念の日なんかにぴったりで、癖がなく料理を引き立ててくれる白瀧酒造の上善如水と言うお酒だよ。それこそ水みたいに飲めちゃうって評判なんだ」 

 

 「見た目もそうだが、俺はこんなにも透き通って澄み切った酒を生まれてから一度も飲んだことがない、本当に水の様な清涼感でありながら、しっかりと味わい深い、貴族でもこれほどの酒飲めるかどうか・・・・くぅ!美味い!」 

 

 お酒の世界は凄いよね、ウィスキーもワインも美味しい日本産の物があり、そしてなんといっても日本と言えば日本酒!ネットでは見る事も出来ない日本酒や地酒のビールが各地にはまだまだあるんだ、職人さん達の飽くなき探求心と最近では若い人達も、跡を継いだりと日本酒の世界を終わらせない様に努力していたりするんだ。 

 

 「くぅ!斗真の出す酒はいつも美味いなぁ!知ってるか!これって米で作ってるんだってよ!」 

 

 「ああ、俺も夜の部で何度か味わったが、いつもは手ごろな酒を出しているって斗真は言うが、その酒も十分美味いと思って飲んでた。だが今日のこれは飛び切り美味いな、本当にするする飲める、きっと値の張る事だろう」 

 

 「お酒の事はねね達わかんない、お肉むっちりで美味しい!甘いタレもいいけどお塩も美味しいよぅ!」 

 

 「塩は氷山塩の塩だね。味が分子レベルで揃ってるとか言う美味い奴だよ」 

 

 「皮の脂とくにくに感がお米を欲しがっている・・・・・」 

 

 リリが遠くを見つめ始めた。 

 

 「皮はこっちも美味しいと思う」 

 

 「どれ・・・おっこっちはくにくにしてた皮の食感と全然違うパリパリのサクサクだな!これはつまみにいいじゃないか!」 

 

 「つくねと卵黄のあえた奴!間違いなくうまいぞこれ!」 

 

 「やげん軟骨もこりっこりで美味しい!塩が最高だよ!」 

 

 「ぼんじりのじゅわじゅわ出る脂がまた美味い!これは人気が出そうだ!砂肝にハツ!こいつらも酒好きにはたまらないだろうな、心臓と聞いて驚く事だろう。二つともコリコリとした食感だが、それぞれ違ったコリコリ感だ!これは食わないとわからんだろうな!美味い!」 

 

 「でも特に美味いのがレバーだ!普通の鳥の赤いねっとりしたのとは全然違って、脂っこくて濃厚なのに血の風味が全然しない!これを食った後だと普通のレバーのあの血の風味が嫌に感じるんだよなねとねとしてんのも」 

 

 「輝き鳥の鳥刺しもワサビと醬油でどうぞ!でも絶対他所の店では食わない事!」 

 

 「これはなんとも言えない歯ざわりだな、噛むと身にざっくりと歯が入ってもちもちとしている様でザクザク感もあり、醬油とワサビがあう!」 

 

 「このちょうちんってのも美味しいよ!卵の味もする!」 

 

 「とさかも美味い!こりこりしてる。でもよくとさかが食えるってわかるよなぁ」 

 

 「これだけの内臓達だ。美味く食う為に手間も大変かかっただろう。初めてこの店で内臓を食ったときにも思ったもんだ。変な臭みや嫌な匂いなんかが一切なくてなぁ、どれも食欲をそそるものになっていた。今回もそうだ。どれも大変な手間がかかってる」 

 

 「素材がいいんだよ。俺みたいな素人料理人でも手間をかけて丁寧に処理すれば美味しくなるなんて、素材の力が大きいよ」 

 

 「おにいちゃ~ん、お米食べたいよぅ」 

 

 ここでリリがお米食べたくなっちゃったか。 

 

 用意していたお出しに鳥刺しを並べて、ワサビと海苔をかける。 

 

 「お茶漬けならスルスルたべれるはずだよ」 

 

 「ねねも!」 

 

 「あたしも食いたい!」 

 

 「すまん、俺にもくれ!」 

 

 「あいよ」 

 

 最後はみんなでお茶漬けを食べて〆た。 

 

 レックスさんには大きなお風呂も堪能してもらって、そのあと店で飲みなおしてもらって今日は宿でゆっくり休んでもらう事にした。 

 

   冒険者受付嬢 ラーナ 

 

 冒険者受付嬢の仕事は過酷だ。 

 

 何が過酷かって?ギルドマスターのニーアさんが八百万で先にご飯を食べると、今日の飯はあーだった、こうだったと語るのだ。 

 

 それを聞いた冒険者達はお昼時になると真っ先に八百万に走る、最近ではニーアマスターの話を聞かずに昼時になると真っ先にいなくなる人達もいる。 

 

 そんな中業務を終えて列に並ぶも、まず時間が足らない!! 

 

 怒られる事を覚悟で並ぶも、材料切れで売り切れ!なんて事最初の頃よくあった。 

 

 店前で泣く私達の為に、八百万の店主、斗真さんがニーアさんに私達のお昼をもってきてくれるようにしてくれてから、私達は八百万のあの長蛇の列に並ぶ事をしなくても良くなった。 

 

 それからはみんなが羨ましがる様な、八百万の特製弁当を食べる事になったのだ! 

 

 もちろんラーメンやお蕎麦なんかは八百万でしか食べれない特別な物だけど、こっちのお弁当も中々に負けてないと思う。 

 

 具が沢山入っていて、使われている素材も豪華!最初の頃こそお箸の使い方に戸惑ったけど、慣れるとこれ以上に使いやすい便利な物は中々ないと思う!

 

 今日のお弁当のご飯はどんなご飯だろうか?楽しみで仕方がない! 

 

 そんなこんなでお昼になってお弁当を開けてみると。 

 

 大きなキングサファイアシュリンプ!フライにしてある!それにグラナダ鉄砲貝も!だし巻き卵に輝き鳥のからあげ!小さなハンバーグまで入ってる! 

 

 ごはんはおにぎりにしてあって、一つがわかめ、一つが五目御飯の御稲荷さん、そしてもう一つは?タレが塗ってあるけど食べないと中身まではわからないや。 

 

 スープもいい匂い!オクラの塩漬けと煮物も入ってる!! 

 

 早速キングサファイアエビから食べる! 

 

 ぷりぷりの中の卵がぷちぷちの豪華な味!そして何より凄いのがこのタレだ!エビの香ばしい味にバターの様な乳製品の滑らかな味、少しの酸味と塩味が丁度良い味!。 

 

 次に貝、噛めばむちむちの貝が濃厚で複雑な味を出す。 

 

 やっぱりこれもタレが決めてな気がする、味の邪魔にならない様に見えて足りない所をすっかりおぎなっている。 

 

 美味しい!そんでもってわかめご飯をパクリ!優しい塩味に癒される。 

 

 わかめってこんなに美味しいんだ!わかめご飯だけでもおかずなしで食べれる。 

 

 次は五目の稲荷、甘めの味の中から少し酸味の味がするご飯が混ざり合って美味しい!シャキシャキの野菜の食感やキノコなんかもはいってるのかな?複雑な味なのに食べやすい。 

 

 輝き鳥のから揚げ、むちむちして肉の繊維がしっかりしてる!そういえばこの間七色鳥のからあげがお店で出たっていってたなぁ、いいなぁとおもっていたから凄いいいタイミングだ。 

 

 鳥の品種は違えど、輝き鳥のから揚げも極上に美味しい!。 

 

 そしてここでオクラの塩漬けをパクリのサクサク!このちょっとしたねばねばが塩で引き締まってめちゃくちゃ美味しくなっちゃってる、ああっ昆布だ!昆布の味もする!これは凄い!

 

 ただの塩漬けといいつつも十分にお米と渡り合える一品、今度お店にいったらこれだけでもお持ち帰りさせてくれないかなって思うくらい美味しい! 

 

 そして里いも、大根、ニンジン、こんにゃく、タコの煮物、これがまたいい味なんです。 

 

 どこか懐かしさも感じつつ、ほくほくとろりの里いもを食べる。 

 

 そしてミニハンバーグをぱくり、と食べると出来立てよりは冷めているけど、それでもしっとりとしてにくにくしい味が口の中に広がる。 

 

 濃いお肉の味、これはきっと牛さんのお肉だ! 

 

 ここで最後のおにぎりを食べると中は、甘いタレのついたイールのおにぎりだ! 

 

 紙にはワサビを添えてあるので、スープをいれて食べると美味しいよと書いてある。 

 

 なるほどと丼におにぎりを入れて、その上からスープをかける、それで上にワサビをちょこんと乗せれば、イールのお茶漬けが出来上がった。 

 

 このスープいい匂いがしてたけど、エビと昆布の濃い味がする!嫌味にならない丁度いい味の濃さでイールのタレとご飯が混ざり合って、ますます複雑な味に変化する。 

 

 ワサビのピリリとして一本芯が通る感覚もまた美味しい!。 

 

 あふぃー今日も美味しかった。 

 

 と一息ついていると、ニーアさんに渡された紙に目を通した。 

 

 何々?ニーアさんにマジックバックを持たせる様にしたので、これからはお店と同じメニューが食べられますよと、もしお弁当の方がよかったらお弁当でもいいし、何度もお店に来てくれたのに追い返す羽目になって本当に申し訳ない、替わりに今までのメニューが載っているからいつでも注文していいよ。 

 

 と書いてある紙と家系ラーメンにお蕎麦に天丼、ハンバーグにから揚げにすき焼きと書いてある、八百万初のメニュー表をいただき思わず硬直してしまう。 

 

 これはバレたら大変な事になるのでは?そしていくら何回も食いっぱぐれたとは言え八百万のメニュー表はかなり貴重で希少なものなのでは?冗談ではなく本気で食で戦争がおこるのではと思いつつ。 

 

 後日冒険者ギルドで家系ラーメンを食べて、本当にギルド内戦争が起こったのは言うまでもない。

 

 

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