【短歌】銀河二分の一

清水らくは

爆ぜている

歯ブラシも残さず部屋を出た人が残したポトスぐんぐん伸びる


三十年ぶりに母との二人部屋寝台列車は今下関


歩いても歩いてもまだ歩きたい まだ一歩も進めない 空


この星は丸いと聞いていたけれど躓く度に凸凹を知る


Tシャツに書かれた英字じっくりと読まれる前に踊ってしまう


恋人とギザギザしてる夜だから円周率の果てまでララバイ


百円で売られる未来知りもせず波間を巡る 魚と私


恋人であるためだけの文を書く忘れ扇にならないように


十二月二十日の夜は許される 元カレ以上親友未満


あの日から橋を揺らさぬななつ星 幾つの銀河経由してる


放たれた はずだったのに愛の矢がまだ部屋にある 何を放った


雨だからずっと観覧車に乗ろう テルテル坊主が盗まれた街


朝顔が壁一面に爆ぜている この花火なら君を誘える


枕元埃と光舞い踊る妖精たちの労働争議


網膜に焼き付くほどの夕景が夜の海へと捨てられていく

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