第26話:服を買う
「えぇぇぇ!!何!?誰!?」
「いやいやいや!?ここどこ!あんたこそ誰!?」
人形から人間になるなんて誰が思う??思わなくない?ありえないでしょ。
「クゥー」
「えっ、あぁ、うん。落ち着きましょ・・・ってあなた服着なさいよ!!」
「あっ!俺裸じゃん?!そりゃ寒いわけだ!・・・って服がない!?」
「そうよ!あなたの服ないじゃない!持ってくるから待ってて!アドラー!そいつ監視しといてね!」
「監視っておm、「クゥー!!」何しやがる!」
アドラーと謎の男性をその場に残し、ニーナの元へ。
「ニーナ!なんか適当な服ない!?」
「服ですか?ドレスならありますけど、どうしました?アンナ様の服が壊れたとかですか?」
「いえそうじゃないのよ。まぁ見てもらったほうが早いわね!ドレス持ってついて来て!」
「は、はぁ。かしこまりました。」
そしてニーナにドレスを持たせ、錬金部屋へ。
「服持って来たわよ!」
「クゥ!」
「あっ、お前!こいつを何とかしてくっ、いだだだ!!!!!」
錬金部屋に行くと、アドラーが男を組み伏せていた。
「ナイスよアドラー!」
「クゥッ!」
「どこがdあああああいたいって!」
私がアドラーをホメると、アドラーは胸を張ってどや顔し、男の背中をガシガシと踏みつけた。アドラー可愛い大好き。
「あのっ、えっと、アンナ様?この状況は一体?」
「あぁ、そうね。まずは彼にドレスを着せて挙げて。ちょっと小さいかもしれないけど、まぁ全裸よりはましよね。」
「えっ?えぇ、えっ、あっ?えっ?」
「はぁ!?よりによってなんで女物のドレスなんだよ!?おれ男だぞ!?そこの女もこのbいだだだだ!!!」
「うるさい!男物の服なんてないわよ!服があるだけありがたいと思いなさい!さぁ、ニーナ!やっておしまい!」
「かっ、かしこまりました!」
「まっ、待て!待って!お願いだからまっ!ギャーーーーーーーー!!!」
「うっ・・・ううぅ・・・もう婿に行けない・・・」
「いいじゃない。顔可愛いし似合ってるわよ。婿は無理でも嫁に行けるわよ」
「そうじゃねぇよ!」
ニーナの手でドレスを着せられ、ご丁寧にメイクまで施された男は、ぱっと見は女にしか見えない。細いとはいえ骨格が男なだけあって、少々ドレスのサイズがあってないが、まぁ、許容範囲だろう。
「で、あなた誰よ?」
「誰ってそりゃぁお前・・・?俺って誰?」
「私に聞かれても知らないわよ!」
「おっ、おぉう。えーっと、ちょっと待って何か思い出しそうなんだ。んー、鏡ある?」
「手鏡ならこちらに。」
「あ、えっとー、ありがとうございます。・・・あー!!」
「うるさい!今度は何よ!」
「思い出したんだよ!この顔なんか見たことあるなーって思ったら
「ツキミヤシュウ?誰よそれ?」
「えっ!?覚えてないの!?ほらっ!中学の時に何か書いてたじゃん!理想の来世一覧ノートみたいな奴!」
「は?ん?んー、んー・・・・」
中学の時に書いた理想の来世ノートみたいなの?そんなの書いたかしら?
「んー・・・あっ!あーーーーーー!!!!!!!!!!ちょっ、ニーナ!席を外してくれる?」
「えっ?あっ、えーっ、はい。かしこました!」
思いだした!確かにそんなの書いたわね!前世の自分が生まれ変わるならどんな姿になりたいかっていうのでこんな感じの書いたわ!確か最初は可愛い恰好をしたいのがきっかけだったのよね!でも女性には生理というのがあって大変みたいだから、なら可愛い男ならいいんじゃねってなって、最終的に男でも女でもどっちとも取れる見た目がいいってなったんだっけ!?待って、めちゃめちゃ恥ずかしいんだけど。
「お、おう、思い出したか?」
「思い出したわよ!って何であんたそれ知ってるのよ!」
「そりゃぁ俺はお前の第二の頭脳だからな!お前の過去くらい知ってるさ!思い出すのに時間がかかったけどな!」
「第二の頭脳?」
「おう!ほら、お前が
え・・・えぇ・・・、何それ。何でそんなことになったの?意味わからないんだけど。
「しかしこの人形すげぇな。俺のイメージした通りの見た目だぞ?ちゃんと体温もあるし心臓も動いてる。どうなってんだこりゃ。」
「私も知らないわよ。あなたも知ってる通りダンジョン産だからね。なんか凄い魔法具なんでしょ。あなたが中に入る前でもAIみたいに喋ってたし。」
「ほーん、そっか。」
「ところで、何でそんなに落ち着いてるの?ドレス嫌だったんじゃないの?」
「いや、ほら。確かにちょっとサイズきついけどさ。自分が理想としてた身体になれたんだぜ?だから嬉しい気持ちが勝ってさ。それに似合ってるし?」
「私は黒歴史を見せられてる気分だわ。恥ずかしいわよ。」
「おいおい、このドレス用意したのお前だろう。何恥ずかしがってんだよ」
「まさか自分の分身が中に入ってるなんて誰も思わないでしょう・・・まったく。そういやなんて呼べばいい?名前ないと不便じゃない?」
「シュウでいいんじゃね?」
「そうね、じゃぁあなたは今日からシュウよ。とりあえずあなたの服を買ってくるから、それまでここで大人くしてて。」
「ほーい」
自分の分身でもあるシュウを部屋に置いて、部屋を出てニーナを呼ぶ。
「お呼びですか?」
「シュウ・・・あの男の服を買いに行くわよ。」
「かしこまりました。ところであの男について説明をお願いできますでしょうか?何者ですか?」
「一言でいうと私の分身ね。」
「分身・・・ですか?」
それからシュウが生まれた経緯をニーナに説明する。元がオートマタであることに驚き、更に私が魔法を開花させていることにも驚いた彼女は、『まだなにか隠してることはありませんか!?』と言ってきた。失礼な。別に隠していたわけじゃない。それにこれ以上隠してるものはない・・・はず。
あ、ちなみに前世云々の話はいい感じにぼかしている。前世バレはいいとして、黒歴史がバレるのはちょっと恥ずかしいし。
「はぁ、アンナ様、私は頭が痛いです。」
「気のせいよ。ほら、行くわよ。どこで買えばいいかわからないから案内して。」
「はぁ、かしこまりました。では行きましょう。」
ニーナに先導してもらいお店へと向かう。そして案内された先はいかにも高級そうな店舗。
「ニーナ?別に高くなくていいんだけど?」
「お金はウォート様の懐より出ますのでお気になさらず。シュウ様のサイズも完璧に把握しておりますので、ご安心を。」
「そっか、ならいいよ!」
「ありがとうございます。では中へ入りましょう。」
師匠の金で服を買えるなら問題ないわね。散々振り回されたし、多少お金使っても大丈夫でしょ。にしてもいつの間にサイズを測ったのかしら?さっきの着替えで覚えたとか?さすがプロといったところかしら。
「ニーナ様!ようこそいらっしゃいました。本日はどういったご用件で?」
「こんにちわ、クルア店長。この方はアンナ様。私が仕える主人であり、ウォート・クリムゾンの弟子です。」
「おぉ、これはこれは。お噂はかねがね伺っております。私、マクスウェル商会学園都市支部の店長、クルアと申します。以後お見知りお気を。本日はアンナ様のお召し物ということでしょうか?」
「そうですね。それもありますが、本命は男物の服です。縁あって拾い物をされましたので。」
「なるほど、そうでしたか。では用意しましょう。こちらへどうぞ。」
ニーナ?私を置いてかないで。拾い物って隠語だよね?多分奴隷とかそんな感じの。それと私の服買うの?まぁ、いつも同じ服なのは味気ないけど、これ一応魔法具だよ?必要?
そんな私の気も知らず、どんどん進んでいく二人。
「男物の服と言うことならこちらでどうでしょう?」
「そうですね。彼は少し線が細いので、シルエットはこちらのスタイリッシュな方がいいですね。」
「なるほど。とするとこの辺ですかな?」
私を差し置いて次々と服を決めていく二人。言い出したのは私だけど、私が来る必要なかったかな?
「アンナ様、これらでどうでしょうか?」
そういってニーナが持ち出したのは執事服を3セット、普段着用の服、寝巻、下着をそれぞれ7セットずつ。一瞬多くないかと思ったけど、そもそも男物の服一着も持ってなかったわね。多すぎてよく見えないけどまぁ大丈夫でしょ。
なんか普段着用の服に女物も混ざってたし、なんならメイド服も見えたけど気のせい気のせい!別に私が着るわけじゃないしね!
「うん、いいね!!」
「ではクルアさん、こちらでお願いします。」
「かしこまりました。」
ふぅ、やっと終わ「次はアンナ様の服を見繕っていただけますか?」まだ終わらないのね。別に必要・・・ないとはいえる雰囲気じゃないわね。大人しくしておきましょう。
「かしこまりました。ではこちらへどうぞ。」
そしてクルアさんに店の奥へと案内される。表に置かれている服と異なり、デザインは割と大人しめ。しかし表に置いているものとは比べ物にならないほど高そうだ。
「こちらの服は全て魔導服となっております。アンナ様がお召になられている服には及びませんが、魔導服としてはどれも一級品となっております。」
「なるほど、では結界の機能が付いた服はありますか?」
「それですとこちらにあるものがそうですね。」
魔導服って何とか思ってたらニーナが答えをくれた。ようは服の魔導具ってことね。私のは魔法服ってことになるのかしら?まぁ、気にしても仕方ないわね。
「アンナ様、こちらの服を着てくださいますか?」
色々な服があるんだなぁって思ってみてたら、いつの間にかニーナが服を持って来た。所謂ゴスロリというデザインの服。全体的に黒いが、フリフリ部分はほんのり赤みがかっている。えっ、これ着るの?
「ニー「着てくださいますよね!?」、わかったわよ」
そんなキラキラした目でお願いされたら断れないじゃない。そして服を持って試着室へ。
「何でニーナも一緒に来たの?」
「一人でお着換えできますか?」
「・・・無理ね。悪かったわ。」
「いえいえ、それが仕事ですから。では失礼します。」
心なしかとてもウキウキした様子のニーナ。テキパキと私の服を脱がせ、ゴスロリの服を渡しに着せていく。ついでにメイクもほんのりと施された。どこから取り出したんだろうそのメイク道具。不思議だわ。
「こんな感じですね。」
そして着替えが終わり、その場の姿見を見て余りの変わりように驚いた。
「か・・・可愛い」
「ですよね!そうなんです!アンナ様は可愛いんですよ!」
ニーナが何か言ってるけど、よく聞こえない。普段の私は自分でいうのも何だけど、かっこいい系の美しさがあるのよ。なんだけど、今はその『カッコイイ』と言う要素は消え、可愛いという要素が追加されてるの。自分が自分じゃないみたいね。
「凄いわねニーナ!いつもと違うってこんなに楽しいのね!」
「ですよね!では次に行きましょう!」
ん・・・?終わりじゃないの?
「おお、とてもお似合いですよアンナ様。ニーナ様、次はこれなんかどうでしょう?」
「いいですね!さぁ、アンナ様、着替えますよ。」
「は・・・はい。」
その後、私はニーナの着せ替え人形にされ続けた。3時間くらい店にいたんじゃないだろうか。最終的に普段着4セット、寝巻3セット購入となった。超疲れたんだけど・・・。ちなみに購入した寝巻は全部そういう用途で使うものだ。さすがに使う機会はないと思う・・・ないわよね?
とにかく疲れたわ。さっさと帰って昼寝したいわ。
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