第125話 エッセイとSFと概念
夏の疲れが出ている今。おじさんの疲労の詳細は、文章では披露できないが、ここ数日疲れのため、すこぶる体が重かった。結局ダジャレ(笑)。
巷でAIの賛否両論が出てきた。ちょっと前までは新しい技術が出来ると飛びついていた社会やマスメディアの風潮は随分と風向きが変わった。
デジタルを科学の画期的な進歩としていた社会の風潮は、しばしばその対局で修正を促されてきた経緯がある。今回もその類似傾向がありAIが矛先になった。自然の流れを逸脱してまで電脳技術を加えるべきではない、とする流れに変わっている昨今。何処までが許容範囲かを模索しながら製品化しないとマーケットから反対や拒否される時代になったようだ。
僕個人にいたってのこと、趣味の音楽はMIDI音源、ハミングでの作曲や譜面落としまでは楽しく学んでいたが、AI利用の作曲、録音には手を出していない。まだこの分野に関して僕は自分の判断をしていない。実際に使ったこともないし、その生成過程を見たことも無いからだ。
先にも触れたが世間の反応を見ると、少し前にマスコミを中心に急発進した沸騰話題が、ここに来て失速気味。諸説あるが、散見される意見では、アレはコンピュータの乱数と同じ原理で、そこに人間の学習作業、感性や経験値は存在しないとか、「っぽい」だけでそこにロジックやティップスはない、という話を良く聞く。
困っているのはクリエーターかな? 企業にとっては安価で、それ以上のクオリティの出来映えの「それっぽい」ものが仕上がってきて節約になる。そこに安っぽさはないが、不自然感が拭えない。
このAI分野が進出しているのは、絵画、イラスト、音楽、声紋、朗読、写真技術、文章などの主にクリエーティブな分野。今まで何年もの月日をかけて、仕上げてきた芸術産業の人々にとってはたまったモノでは無い。何十万、何百万円に値する手間暇をかけてきた仕事をわずか数万円で「っぽいもの」に差し替えられてしまうからだ。
一方で人件費や支出に悩まされていた企業予算がかつかつの会社は、助け船と感じるであろう。お金さえあれば良いモノを売り出せるのに、CM制作料、パッケージデザインのダサさやおしゃれさの点で出遅れていた良品の商品を、大手企業と同じ土俵に立たせることで、より良い商品と世間に認知させる機会に恵まれるのだ。
そのAIの作り出す作品は過去のデータによって成り立っている。すなわちパッケージにイラストレーターや画家の過去の作品がパラメーターとして、サンプリング素材として取り込まれているので、それは人の脳ではないから「パクリ」、すなわち創作物ではないと判断されても仕方ないシロモノだ。
よく一九八〇年代、それ以前のSF作品ではしばしばそんな昨今のコンピュータが支配する社会なども空想ではあるが、描かれることも多かった。それは遠い未来の出来事として絵空事でいられたからだ。そこにはクリエーターの収入や技術、企業の費用捻出などの経済活動や人的交流、技術維持などのスキルが見えていなかった。
僕は拙作SFにコンピュータをメインに持ってくる物語はほぼ書いたことが無い。僕のオツムの出来の問題もあるが(笑)、インナースペースの世界は概念で描くことが多くて表現に困るからだ。キャパシティーの少ない僕には手に負えない。同じような概念モノとしてはPCではないが。概念世界を描き飛び回る作品にミヒャエル・エンデの『果てしない物語』などもある。あれは抽象物の具現化という世界での秀逸作品だ。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』や、ユニークなところでは丹波哲郎の映画『大霊界』なども抽象世界の具現化世界だろう。クリエーターの表現力が試される作品だ。
実体のない物を具現化して表現するというのはとても難しい。それを他人のデータを侵食して具現化するのが何処まで許容されるか、という問題に発展してしまったのが、ここに挙げた今現在のAIの諸問題と言えるのではないだろうか。まだ僕には判断できかねる社会現象だが、自ずと答えは示されるのだろう。僕はその時期が来るのを待つのみの立場である。
うーん、なんだろう? 今回は本当に随筆っぽい、エッセイとなった。昔読んだ至高のエッセイスト、小林秀雄さんとか、高階秀彌さん、遠藤周作さんを目指せた(?)と自画自賛。でもこのエッセイ、僕の出来の悪い脳みそで書いているので、間違いなく人の手で創作した僕のエッセイ作品である(笑)。ほら、所々人為的なミス、至らない文章のほころびがある(爆)。ではまた。
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