第95話 東門にて
「ヒャッハッハッ! 焼けろ焼けろぉー!」
火を辺りに放って街を焼いたり人を焼いたりしていた。ここでも、人の命が、踏みにじられていた。
「ウインドカッター」
「おっと」
風の刃をさっと男がかわす。
体制を整えると打ってきた相手を睨む。
「なんだぁ? いきなり打ってきやがって!」
「あんたも……人に打ってる……」
「あぁ!?」
男が凄むが何処吹く風。
冷静に話しているのはフルルだ。
「あんたの相手は、俺達暁だ!」
ダンがそう宣言して剣をその男に向ける。
「ヒャハハハ! お前達みたいなチンチクリンが、俺っちの相手ぇ? なめられたもんだなぁ」
ダンは油断なく剣を構えている。
ウィンが前に出てきて盾で牽制する。
フルルは、杖をかまえ、魔法を放つ。
「ウインドバレット!」
「風魔法かぁ。相性最悪だったなぁ?」
ニヤァと笑いながらその男は身体から炎を噴出させた。
「ファイアエレメンタル」
ボボボボッと身体にウインドバレッドによる穴が空いた。
しかし、その穴はすぐに塞がる。
「これでどうだ! 爆炎剣!」
ドオゴォォォォォンッッ
辺りを煙がおおい、前が見えない。
「やったか!?」
「それは……フラグ……」
ダンの勢いに冷静に対応するフルル。
煙が晴れてきた。
見えたのは少し肥大化した男だった。
「えぇ!? なんかデカくなってない!?」
「大きく……なってる……」
「確かに大きくなってますねぇ」
ダン、フルル、ウィンが呆れた様に言う。
「ハッハッハッ! 俺は炎を吸収することができるんだよ! ヒャハハハ!」
それが大きくなった原因のようだ。
「アースニードル!」
盾を地面に打ち付けて魔法を発動させたのはウィンだ。
魔法で対抗しようというのはいい判断だったのではないだろうか。
しかし、この男はそう甘くはなかった。
ザクザクザクッと岩の針が刺さるが、ニコニコしたまま何ともないようだ。
「俺には実体がねぇ! そんなの物理攻撃と一緒だろう!?」
「なら……ウインドストーム!」
フルルが竜巻を起こして倒そうとする。
「ヒャハハハハ! あー笑える。ありがとう。炎を大きくしてくれて」
その言葉どおりに身体が大きくなっていた。
「なに!? また身体が、デカくなってる!?」
「どうすりゃいいんです!?」
「くっ……」
狼狽える三人。
ここで戦えるのは三人しかいない。
「俺達は諦めねぇ! なにかある筈だ! 前に出る!」
ダンが前に出て剣での攻撃を仕掛けていく。
ズバッと切るが、やはり元に戻るだけ。
闇雲に切りつけているように見える。
なにか突破口は無いのだろうか。
こういう時は、ウィンとフルルが考えたりする係なのだが。
「とうしたらいいんだ……。水魔法が使える訳でもないし」
「無い物ねだり……しても……しょうがない」
フルルは黙って何かを考えている。
突破口を見つけようと必死に頭を動かし。
魔力を練っている。
「ウインドキャノン!」
大砲の様な大きな風の弾が飛んでいく。
男にドウッと当たる。
「うっ!」
一瞬ダメージを与えたかと思ったが。
ズズズズッと吸収されて男の体が更に大きくなり、遂には着ていた服が破け出した。
「ヒャハハハハ! 無駄無駄無駄ァー!」
巨人のように大きくなり、その身体でダンに攻撃している為、ひとたまりもない。
「ぐっ!」
ダンが被弾する。
大きいだけじゃなくて重量もあるようだ。やはり、相性が悪いから諦めて逃げなければいけないのか。
苦々しい顔をし始めたウィン。
フルルは黙っている。
何かを考えているのだろうか。
「俺達、一度、撤退した方が……」
ウィンがそうな事をフルルに言った。
フルルは少し黙った後に。
「あたし達が……逃げたら……誰が……アイツを止めるの?」
「そ、そりゃ、テツさんとか……ガイさんも居るし……」
「それまで……ここにいる……人達は……殺されるのは……仕方がない……?」
「そ、それは……」
ウィンは皆のことを考えてまともな提案をしているとは思うが、フルルは納得しかねるようだ。
「私は……諦めたくない……何か……」
「オラオラオラオラァ!」
炎の剣をブンブンと振り回して攻撃しているダン。敵対している男はダンダンと身体が大きくなっていく。
それを見ていたフルル。
目を見開いてハッとした顔をした。
「ダン……下がって……ウインドストーム!」
ゴォォォォォ
凄まじい音をさせて竜巻が男を飲み込んでいく。
「おぉ。おぉ。いい風だぜぇ! ヒャハハハハ!」
男は余裕そうに身体を大きくしていく。
ドンドン大きくなる身体。
だんだんと顔が引き攣ってきた。
「お、おい! そんなことしても無駄だって! 諦めろよ! 意味ねぇって!」
「何を……焦っているの? 好きなだけ……大きくなれば……いいじゃない? それとも……あまり……大きくなれない……の?」
フルルは更に竜巻に魔力を込めて大きくしていく。魔力はまだまだある。テツとの訓練で魔力量は相当な量上がっていた。
「やめろ! やめてくれ! 制御が……!」
「もっと……膨れろ」
フルルは最後のダメ押しとばかりに魔力を注いだ。もう五メートルくらいの巨人になっている。
「アァァァアアァァァ」
頭を抑え始めた男は。
内側から炎を吹き出した。
そして、一気に光り出す。
「あ……まずい……」
「俺の後ろに! アースウォール!」
盾を地面に突き刺して、その前方に土の壁を作り防ぐ体勢に入る。
カッッッッ…………ドゴォォォォォォォンンッッッ
凄まじい爆風に立っているのもやっとのようだ。ウィンが頑張って壁と盾で防いでいる。
しばらくの間止まなかった風が止んできた。
爆発したところを見るとクレーターができ、街もかなり吹き飛ばされたようであった。
「これ……私のせい?」
コテンッと首を傾げるフルル。
「あぁ。お前のせいだな」
「……うるさい」
「イデェ! ひでぇ!」
ガツンッと杖で殴られたダン。
街は破壊してしまったが、紅蓮の炎の三人がこの国を救った英雄なのは間違いないだろう。
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