第4話 冒険者登録

 アリーの家に居候させてもらう事が決まった事で、少しでもお金を稼がなければと思い話し合いをしていた。


「アリーのお父さんがやっていた冒険者というのは、金を稼げるのか?」


「はい! マノシシを素手で倒しちゃうようなテツさんは、直ぐに上のランクに行けると思います!」


「ランクというのがよく分からんが、話を聞きに行ってみるか」


「そうしましょう! 私が案内します!」


 薪割りを終えた後、冒険者登録する事にしたのであった。

 家を出て冒険者ギルドに向かっている最中に色んな人からの視線を感じた。

 ただ、悪意はない。観察するような質の視線であった。


 冒険者ギルドに着くと早速冒険者から声をかけられたのはアリーであった。


「あっ! アリーちゃん! 今日はどうしたんだ? お父さんのことでまた聞きに来たのか?」


「あっ、今日は違うんです。テツさんの冒険者登録に来たんです! マノシシに私が襲われていた所を助けて頂いたんです!」


「ほぉー。そうなんか」


 その冒険者からの視線は挑戦的な、詮索するような視線だった。

 殺し屋業界は人の視線に敏感で少しでも敵意を察知したら警戒していないとこちらが命を落とす。それが、業界の常識であった。

 そんな中で生き残ってきたテツは視線の察知に関してはかなりの察知能力を有していた。


「テツさんは強いんですよ! マノシシを素手で倒したんですから!」


「ほぉ。素手でとはなかなか」


「でしょー!?」


 自分の事のように嬉しそうに語るアリーを見てその冒険者は笑顔になった。


「はははっ! アリーはそのテツってやつが気に入ってるんだな!?」


「なっ!? ちがっ! 違くないけど、そういうんじゃなくて!」


 慌てた様子のアリーを見ていたらあまりにも、可愛らしくてニコニコしてしまった。

 それを見たアリーは、頬を膨らませた。


「あーっ! テツさんまで笑ってるー! もぉー! ほらっ! 登録しますよ!」


 手を引っ張られてカウンターに連れていかれる。

 カウンターの向こうにいる女性も知り合いのようでその人もニヤニヤしている。


「サナさん! 笑ってないで、冒険者登録をお願いします!」


 バンッとカウンターを叩きながら受付嬢へと訴える。

 微笑ましそうにこちらを見て手続きの準備をしてくれているようだ。


「では、コチラのプレートに手を乗せて魔力を流してください!」


「魔力を流す?」


 首を傾げているとサナさんとやらが困ったような顔をしている。


「サナさん、テツさんは魔力が分からないそうなんです」


「あらそうなの? なんだか隣国に召喚されてくる勇者様見たいねぇ。じゃあ、こっちの部屋にお願いします」


 案内されるがままに隣の部屋に移動する。

 真ん中に立たせられると扉を閉められる。

 サナさんと二人だけになり、何が始まるのかと不安になり少し警戒してしまう。


 それを悟られたのか、サナさんが両手を挙げている。


「何もしませんから、そんなに警戒せずに。今から魔力器官を起こします。魔力が通り始めたら魔力わ体の中で巡らせるようにイメージしてください。いいですね?」


「わかった」


「それでは、いきます」


 鳩尾の辺りにサナさんが手を当て、不思議な力を手から感じる。


「フッ!」


ブゥゥゥワァァァァァ


 身体中から不思議な力が溢れ出して嵐のようになっている。

 圧力で部屋がミシミシと悲鳴をあげている。

 バタンとサナさんが倒れてしまった。


 ヤバいな。

 体をめぐらせる?

 この不思議な力を?


 巡る。

 血液の様に体に行き渡らせればいい。

 鳩尾から左足、左手、頭、右手、右足、鳩尾。


スゥゥゥゥ


 圧が収まった。

 慌ててサナさんを起こす。


「はっ! 私……」


「魔力を解放してもらった後に気絶してしまったんだ」


「魔力圧に負けたのね。凄い魔力だったわ。属性も知らないのよね?」


「あぁ。分からない」


 立ち上がると「行きましょ?」と言って部屋を出た。


「大丈夫でした!? なんか凄い音してましてけど!?」


「あぁ。なんだか俺の魔力圧?が凄かったらしい。サナさんが倒れてしまってな」


「えっ!? そんなに? だってサナさんって……」


 そこまで言って止めたのが俺には何故か検討がつかず、受付に行くと答えがわかった。


「アリーちゃんが言いかけたのは、私が元A級冒険者だからよ。その位の強さがあると魔力圧で、倒れるなんて滅多にないんだけど」


 あぁ。そういう事か。

 そんなに強いはずのサナさんでさえさ気絶するくらいの魔力圧を俺が発したということか。

 強い力などいらんのだがな。


「それじゃ、このプレートに魔力を流して?」


「うむ」


 言われた通りプレートに手を置くと────


「ゆっくりよ! 少しずつ出してね!」


 言われた通り小さな穴から力を出すようにイメージする。

 プレートがブンッと光を放った。


「オッケーよ!」


 何やら液晶のようなものを見てタッチパネルのようなものを操作している。

 この魔力で一体何が分かるのだろうか。


「解析できたわ! テツさんの魔力総量はSランクよ。恐らくだけど、Sランクの中でもトップランクの量ね。属性は闇ね」


「闇……か」


 やはり、俺は闇で生きる事しか出来ないのか。

 この世界での生は明るく生きていこうと思っていたのだがな。


「さっすがテツさん! 希少属性じゃないですか! やっぱり素質あるんですって!」


 この世界の属性は火、水、地、風、雷が基本属性となっており、光と闇が希少属性となっているそうなのだ。

 闇属性は希少ではあるが居ないということはなく、特に邪悪なイメージもないとの事。


「これで登録は終わりよ!」


 登録は終わったが、何やら殺気が迫ってきていた。

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