完 ▲〈300字〉

 回覧板を渡すと、お隣の銀杏田さんは微笑ましげな視線を俺に向ける。

「昨日も仲良しさんでしたね」

「……失礼しました」

 早足に自宅に戻れば、首にまとわりついていた柳が怒りだす。

『何が失礼っすか! この三十年口止まりのくせに!』

「騒ぎすぎたなって」

『ボクの声が聴こえるなんて、霊感ある人っすかね?』

「本人に訊いたら、ないって。君、この三十年で力がついたとか?」

『金縛りに遭わせて無理矢理……』

「恐ろしいことを」

 たまにふらりと衝動がありつつ、三十年、殺人鬼にしては平和な日常を送っている。

『まぁ、唯我さんが死んでからの楽しみにするのもアリっすけど、違いを楽しみたいというか』

「慎みを持ってくれ」


 きっと、この先も。


◆◆◆


『きままにショートブレッド』オリキャラ達の物語、完!

 探偵は嫁の尻に敷かれながら探偵してます。

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