広がっていく染みのようなもの

 英雄に向けるは憧憬の眼差しであり、刃先なんぞ向けてはいけない。


 なのに気付けば、いつもそんな物を向けてしまう。


 どんなに遠ざけても、無意識に懐に忍ばせているし、どんなに英雄を避けても、足が勝手に向かってしまう。

 斬ってくれと頼んでも、英雄は私を手に掛けない。


 あの人の時はしたというのに。


◆◆◆


心から慕いながら、ほんの僅かに許せない英雄。

でも好き、でも許せない。

ずっとそんな感じだけれど、ちょっとずつ、微妙に、『許せない』が増していく。

英雄の行動によって、一つの命が失われたから。

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