変態女達と登校する

 見せパンをわざと見せて行動していた、新海にいみさんと本城ほんじょうさんの2人。

俺は何故か、その変態女達と一緒に登校することになってしまった。


なんで俺がこんな目に遭わないといけないんだ?



 「風祭かざまつり君って、何でこんな朝早くから登校してるの?」

俺の左隣にいる新海さんが訊いてくる。


「それ、あたしも気になってた。彰君って、真面目なタイプじゃないのにさ」

右隣にいる本城さんが話を合わせてきた。


真面目じゃないのは事実だが、お前に言われたくない。

とはいえ、質問されたら答えないとな。


「誰もいない時間に登校したいからだよ」


「何で?」

今度は本城さんが質問する。


「俺は基本的に1人が好きなんだ。他人が近くにいるのは落ち着かん」

挟まれている今の状況は、まったく落ち着かない。俺の嫌味、通じてるか?


「そうなんだ~。…早く登校しても暇だよね? 何してるの?」

新海さんが詳しく訊いてくる。


ダメだ、通じてなかった。それより根掘り葉掘り訊くなよ。うぜー。


「体育館裏とかの、人気ひとけがないところでのんびりしてる」


「ふ~ん」

本城さんがつまらなさそうに答える。


事実だから、これ以上の言葉が見つからないな。



 「お前達ばかり訊いてくるのは納得できん。俺からも質問させてもらうぞ」


「いいよ~」

新海さんが笑顔で答える。


「お前ら俺と登校してるけど、はもう良いのかよ?」

俺よりも、こいつらに合う人が見つかる可能性がある。


「それはもういいんだ~。風祭君に会えたし」

新海さんが答える。


「彰君以上にいじりがいがある子には、もう会えないと思うからさ」


いじりがいってなんだよ? 俺は本城さんのおもちゃじゃないぞ。



「それともう1つ。何であんたら、中別行動してたんだ?」

一緒に行動してたら、新海さんが携帯で呼ぶこともなかったのに…。


「早朝は人が少ないんだから、手分けしないと会えないじゃん。

彰君、質問する前にちゃんと考えなよ」


何故か本城さんに怒られる俺。…世の中、理不尽なことばっかりだ。



 「それよりもさ…」

本城さんが語気を強めて、俺の顔を観る。


なんか怒らせることしたか? 女子はよくわからん。


「さっきから『お前』だの『あんた』だの。あたし達自己紹介したんだから、名前で呼びなよ。あたし達はちゃんと君を名前で呼んでるんだからさ」


痛いところを突かれたな。この件に関しては、本城さんが正しいだろう。


「まぁまぁ。落ち着きなよ詩織。風祭君は恥ずかしがり屋だから、呼びたくても呼べないんだよ」


新海さんが俺をフォローしてるっぽいことを言う。

勝手に恥ずかしがり屋キャラにするな。


「わかった。本城さん・新海さんで良いか?」


「なんだ、言えるじゃん」


「風祭君、恥ずかしがらずによく言えたね」


2人が俺を馬鹿にした発言をする。1学年上だからって偉そうに。



 校門に着いた。2人に絡まれたから普段より遅い登校だが、周りに誰もいない。


「約束通り、一緒に登校したぞ。…じゃあな」

俺は2人を置いて昇降口に向かう。


昇降口は学年によって違うから、すぐに別行動になる。


「待って」

新海さんが引き留めた。


「まだ何かあるのか?」


「連絡先交換しよ♪」

スマホを見せてくる新海さん。


「何でだよ? そんな事する必要あるか?」


「あたし達にとって、彰君は彼氏候補なんだよ。連絡先を知りたいじゃん」


「2人にとってはそうだろうが、俺は違うぞ」

一方的に巻き込まれただけだ。


「風祭く~ん」

甘えた声を出す新海さん。


どうせこれを断ったら、泣き落としをするんだろう。だったら…。


「仕方ない、交換してやるよ。…けど俺、交換の仕方がわからん」

使わない機能のことはサッパリだ。


「ウチがやるから、携帯貸して♪」

新海さんが手を差し出したので、俺の携帯を置く。


「ありがと~」

初めていじる俺の携帯を器用に操作している。凄いな。


「あたしは恵から教えてもらうわ」


「そうか」


潔癖症ではないが、他人にべたべた携帯を触られたくない。

俺としては、そのほうがありがたいな。


「…そういえば、彰君って何組?」

本城さんが訊いてきた。


「A組だが?」

1年であることがバレているんだ。今更隠す必要もないか。


「そっか…。あたしと恵は同じB組なんだ」


「そうなのか」

その情報が役に立つ日は来ないだろう。



 「風祭君、携帯ありがと~」

新海さんが俺の携帯を返す。


「ウチと詩織の連絡先を入れておいたよ。いつでも連絡して良いからね」


新海さんはそう言うが、俺から連絡する気なんてまったくないぞ…。


「なぁ、さすがにもう良いだろ…」

2人に振り回されて、精神的に疲れた。


「そうだね。お昼どこで一緒に食べるかは、後で連絡するわ」

本城さんが訳が分からないことを言う。


「お昼?」


「一緒に食べようよ~。ね? 良いでしょ?」

新海さんがおねだりしてくる。


朝っぱらから、こんな大変な目に遭ったんだ。

1人でのんびりしたんだが…。


断ったら、新海さんが何を言ってくるかわからん。


「わかった。一緒に食べるから、早く自由にしてくれ」

場所は2人に任せよう。考える気力がわかない。


「後で連絡するからね~」

新海さんの言葉を聴きながら、俺は1人で昇降口に向かう。

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