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「やっぱり、こいつ使い込んでた!」
ドタドタと音を鳴らして、結花の証拠を探していた3人が戻ってきた。他にもあったということだ。
夫婦の部屋やリビングから、通販で買ったと思われる段ボールやブランド物の袋。領収書。買い物のレシートが出てきた。
周平は子供達に「もういいぞ、離れなさい」と強い口調になる。
子供達は結花から離れて、交代するかのように、周平と俊美と登美子が取り囲んだ。
「さぁ、これでどういいわけする?」
結花は目を合わせず体を丸める。
「ちゃんと答えて! うちの家族のお金を使うとかどういうつもり?! しかも他所の男性と遊んでるし……」
「さっさと何か言ってくれんかね?」
3人が追い詰めるように結花をきつい口調で責める。
結花の目から静かに涙があふれ出す。
「な、なんでそんなにみんな、ぎ、ぎづいの?! 繊細なゆいちゃんをいじめないで?」
顔をあげて家族に「もうやんないから!」と声をあげる。
目頭や頬が熱くなり、髪の毛を何度もふりあげる。
しかし周平は鼻をつまんで「泣いていいもんじゃねぇ」と結花の胸ぐらを掴む。
俊美と登美子は結花の態度に額に手を当てて、大げさなため息をついた。
子供達もほらでた被害者ムーブとさらに煽る。
息が苦しい。声に出せない。なんでそんな風に粗暴なやり方するの?
もう済んだ話だからいいでしょ? 謝るからもうなかったことにしてよ!
「ぶっさいくな顔だな。ほんと醜い。性格も容姿も。ただの中身ないオバさんだ。し、耳そろえて返せ」
周平は疲れたのかすっと結花の胸ぐらから離した。
結花は座りこんで周平の顔を見上げる。
「そ、そんなの出来ないよ! 専業主婦よ?! 結婚の約束忘れたの?!」
「はて? そんなのあったかな? なぁ、お父さん?」
「そうだな。前のご主人にもそうやって言うこと聞かせようとしてたけど、ここでは通用しない。あんな誓約書無効だ。恥知らず」
俊美の吐き捨てた言葉が結花の耳につんざく。
「じゃぁ、どうすればいいの?!」
「働けばいいんじゃない? まぁ、きみのような中身なんもない人を雇ってくれる物好きの会社はそうそうないけど。家にいても働いてもろくなことしないだろうな。存在が不愉快だ」
「ふ、不愉快って……そんな言い方しなくてよくない?!」
「――いい加減その幼いしゃべり方やめなさい! あなた40過ぎてるでしょう! お兄さんや元ご主人とか、あなたにとって色々、耳に痛い言葉や忠告を受けてきたでしょ? それに向かい合わなかった結果がこれ。1回やらかした人はまたやるって本当に証明してる。やっぱり根っこは変わらない。もうこの家にいないで。消えて!」
義理両親から辛辣な言葉を突きつけられても、結花はまだ悪くないやいじめないでと繰り返す。
「お前でてけ。他所でお金返すために消え失せろ」
冷たく切り捨てるように告げられた言葉は、結花の心を大きくえぐり取った。
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