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外は1月の冷たい風が結花達の体にたたきつける。
「寒いじゃん!」
朝なのに。日が出ているのにこんな寒いとは。
たかがダンボール捨てるのになんで寒空の下で外に行かないとだめなの?!
早く店の中に戻りたい! 去年の今頃はこたつでぬくぬくと過ごしてねていたのに!
福島と塩浦からゴミの捨て方と掃除を教わった。
「ねー! お嬢様に汚れ仕事させるつもり!? このネイルお金かかってるのよ! 白魚のような手が台無しよーっ!」
これ見よがしに両手をみせる。
赤を基調にあちこち蝶々のガラスが貼られている。しかも爪は長い。
結花は高校時代から毎月1回ネイルサロンに通っている。
学校の先生からネイル禁止を再三言われているにも関わらず守る気が一切なかった。
担任や生徒指導の先生達が言おうものなら、母の周子が学校に口出しの上、お金積んで黙らせようとするので、最終的に先生達は何も言わなくなった。いや、諦めたが正しい。
「まー、凄いね! おしゃれ! どこでしてるの?」
「近所のサロンです」
塩浦はしげしげと眺めていいなー、福島さんも見てと呟く。
「あのですね、素敵だと思いますが、このネイルはまずいかと。多分仕事中に壊れる可能性ありますし。それにスーパーの仕事は基本的に控えた方がいいかもしれません」
「だめなの?! いーじゃん、おしゃれなんだしー! じゃあ、力仕事なしにしてよ。これ取るのにもお金かかるのよ? 会社がだしてくれるのなら、考えてあげるけど」
思いがけない要求に福島と塩浦は会社がだすのと聞き返す。
「そうよ、当たり前でしょ。私は働いてあげてるんだから」
2人は結花の要求に開いた口が塞がらなかった。
「……それは店長か人事部長に相談してください。難しいと思いますけど」
「だって、会社からの指示なんでしょ?! それなら会社がネイルオフのお金を出すのが筋じゃない?! ね、塩浦さん?」
話を振られた塩浦は困惑して目で福島に助けを求める。
「ネイルを理由にごみ捨てしない理由にされても困ります。なんのためにここに来たんです? じゃあ、これ取ったらやってくれるんですかね?」
「考えておくわ。お金出さないならやらない。ごみ捨てもしないから」
結花の言い分に2人はこれ以上何も言わなかった。
福島と塩浦は時計を確認して「……もう今日はおしまいですね。お疲れ様です」と挨拶して持ち場に戻った。
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