第8話 そんなものは要らない
第8話 そんなものは要らない Part1(ゲーム)
類清、アブゼリード、風潤の前に、革霧が現れる。
先に進みたければ自分を倒すように言う革霧と類清は五仕旗で戦うことに。
攻撃力を操作する戦術で相手を追い詰める革霧に対して、類清はわずかな隙をつき対抗するも、革霧のエースモンスター【
**********
<回想>
まだ幼い頃。
「そうやって泣いてたって、アブゼリードは龍になってはくれないんだよ」
「待ってくれ風潤。
私は龍なのだ。ただ、見た目が少し奇抜なために悪魔だと思われてしまうだけで…」
「あ…ごめん…。
ほら、だから泣かないで。
本人が龍だって言ってるんだから、それでいいじゃない」
風潤の説得を受け入れず、類清は反論する。
「でも今、風潤は間違えてたじゃん!
見た目で判断してたじゃん! アブゼリードのこと!」
「確かに、間違えちゃったけど…」
「アブゼリードは龍だって言ってるのに!
何でみんな悪魔だって言ってくるんだよ!」
流導類清と【
人とモンスターが一緒にいるということは、この時代、珍しいことでも何でもない。
問題なのは、その見た目。
"目が合えば、こちらが何かせずとも襲いかかってくる。
機嫌が悪ければ、誰彼構わず攻撃する"
そんな勝手なイメージをつけられてしまうほど、アブゼリードの容姿は恐ろしかった。
おまけにアブゼリードは、人と会話できるモンスター。
言葉を話し、コミュニケーションをとるモンスターは数が多いわけではなかったため、それだけでも君悪がられることがあるくらいだった。
類清は周囲から距離を置かれていた。
友達がいないわけではなかったのだが、つまらないことを言ってくる者は後を絶たない。
いつもギリギリのところにいたが、ついにこの日、「ここ数日で起きている不幸は、全てアブゼリードのせい」とクラスメートに言いがかりをつけられた類清は、抑えていた気持ちが爆発した。
"アブゼリードの容姿が龍そのものならば、自分がこのような仕打ちを受けることはなかった"と彼に怒りの矛先が向いてしまったのだ。
「類清」
「何?」
いらだちながら、アブゼリードの方を見る。
「私は君から離れる」
「え…」
「ちょっと、アブゼリード、何言ってるの!」
「それで君が嫌がらせを受けなくなるのなら、私はそれでもいい」
アブゼリードが去ろうとすると、三人の背後から声がした。
「そんなくだらない理由で、別れる必要はない」
皆が振り返る。
「青充…」
類清と風潤より3つ年上で、よく二人の面倒を見てくれた。
他人に優しく優秀であったため、二人だけでなく周囲からも憧れられていた。
「類清。
アブゼリードは本気だぞ。
お前はそれでいいのか?」
「…。
嫌だ」
「そうだろ?
それに、アブゼリードがいなくなっても、何の解決にもならないだろ。
お前のことだから、自分への被害がなくなっても、"アブゼリードがいなくなったのはお前達のせいだ!"とか言って喧嘩しそうだもんな。
で、今まで以上に仲が悪くなる」
子どもとは思えない彼の考えに、アブゼリードは感心した。
「確かにそうだな。
類清が黙っているとは思えない」
「それにな。
俺のモンスターを見ろ」
青充は【
「こいつもアブゼリードと同じさ」
「え?」
「お前、こいつが何に見える?」
「龍じゃないの?」
「違うな。
【
「トカゲ!?
何で? 飛んでるのに?」
「そんなもんなんだよ。分類ってのは。
人間が好き勝手呼んでるだけ。
俺だって、こいつを龍だと思い込んでた奴らに、"騙された。裏切られた"くらいのことを言われたこともあったけどな、全然気にならなかったぞ。
だって、俺が好きな気持ちに変わりはないから。
お前もそうだろ?」
類清は照れくさそうに頷く。
「悪いのはお前とアブゼリードを悪く言う奴らだ。
アブゼリードの見た目のせいにするのは違うだろ?」
「うん。
ごめん、アブゼリード」
「私は別にいい。
ただ、私が何かすることで、余計に君と彼らとの関係が悪くなってしまうのではないかと考えると、何もできなかった。
私も早く、君と話し合うべきだったのかもしれない」
「よかったな。アブゼリードが大人で。
第一そういう奴らはな、何かしら文句言いたいだけなんだよ。
もしかしたら、アブゼリードが話せることが羨ましいだけなんじゃないのか?」
「そうなのかな?」
「そうだよ。
そんなに多くないからな、人と話せるモンスターって。
それより、今度何か言われたら少しは言い返せよ」
「言い返してるよ!
でも、キリがないから疲れたんだろ!」
「まぁ、俺に言い返せてるんだったら、もう大丈夫そうだな」
**********
「気が強そうに見えて、泣き虫だったお前が
「それはどうも」
「だがもう用済みだ。
ここで俺に敗北して去れ!
バトル!
【
【
vs
【残像のプテラノ】通常攻撃力1200
「
羽が刺さり【残像のプテラノ】が倒れる。
「うっ!」
類清の累積ダメージ:1800(0+1800)
「ターン終了」
類清は手札を1枚手に取る。
「(このカードは、後で役に立つかも。
手札が入れ替わる前に、発動しておくか)
【
【
特殊カード/残存型/射手系
発動条件:自分ターンまたは相手ターンにカードの発動が可能。
効果:自分の場の射手系モンスターは、「攻撃時に発動する効果、攻撃時に適用される効果」を迎撃時にも発動・適用することができる。
類清の場に草木が広がっていく。
「このカードが場にある限り、射手系モンスターが攻撃時に発揮する効果を、迎撃時にも使うことができる!」
しかし、アブゼリードの表情が曇る。
「無駄だ、類清。
あのモンスターの効果は…」
「え…
あっ!」
「思い出したか?
【
翼を広げ、光が放たれると、緑は次第に枯れていった。
「【
【
モンスターカード(リード)/中距離部類/固有ターン5/飛行系
召喚条件:自分の場のモンスターの内、カードに記載されている攻撃力と異なる数値の攻撃力を持つモンスターを、攻撃力の合計が1800以上になるように墓地に送ることで、リードデッキから召喚可能。
中距離攻撃力1800
中距離効果:自分ターンに1度、発動可能。
場のカード1枚を指定することで、そのカードの効果は無効になる。
(このカードが場を離れても効果は続く)
(晴天を舞い、翼の光で相手の動きを封じる
細身で翼があることから、龍のように見える)
「そうだった。
すっかり忘れてた…」
「初見のカードならまだしも、見知っているカードの効果を失念するなど、話にならない。
その程度の実力で俺に勝とうなどと、随分と甘くみられたものだ」
「くっ…」
手札
類清:3枚
青充:5枚
TURN6
(類清のターン)
「俺のターン。
【
【
モンスターカード/通常部類/固有ターン3/射手系
通常攻撃力1300
通常効果:モンスターに攻撃する場合、発動可能。
このモンスターの攻撃力は戦闘中のみ、戦闘する相手モンスターの固有ターン×100だけ上がる。
このモンスターは、装飾系カードの効果で指定されていない場合、戦闘ダメージを与えられない。
(黒を基調とした迷彩柄のバフォメット。
武器や道具を使いこなすだけでなく、元々の能力も優れている)
「戦闘する相手モンスターの固有ターンに応じて、攻撃力が変化するモンスターか。
来い。
相手になってやる」
「いちいちが偉そうだな!
バトル!」
【
vs
【
「【
攻撃力が500上がる!」
【#手練__てだれ__#のバフォメット】通常攻撃力1800(1300+100×5)
vs
【
「【
場に青空が広がった。
【
特殊カード/残存型/飛行系
発動条件:自分ターンまたは相手ターンに、カードの発動が可能。
効果:このカードがある限り、飛行系モンスターを従えるプレイヤーは次の効果を発動できる。
自身の飛行系モンスターが中距離部類以外のモンスターに攻撃を受けた場合、発動可能。
その攻撃を無効にする。
【
「これは厄介だぞ。
これでこちらからは、中距離部類以外の攻撃は届かなくなる」
「さすがアブゼリード。
類清と違って物覚えがいいな」
「うるせぇ!」
「(これが青充君の恐ろしいところ。
ターンを重ねるごとに場が完成していって、相手は手も足も出なくなる…)」
「ターン終了だ…」
手札
類清:4枚
青充:4枚
TURN7
(青充のターン)
「俺のターン。
さらに追い詰めてやる。
【ホバリング】を発動!
このカードが場にある限り、飛行系モンスターは相手の効果を受けない!」
【ホバリング】
特殊カード/残存型/飛行系
発動条件:自分ターンまたは相手ターン中にカードの発動が可能。
効果:このカードが場にある限り、飛行系モンスターは相手の効果を受けない。
「これでますます、こちらからは手が出しづらくなった!」
「バトル!」
【
vs
【
【
「お前の累積ダメージは1800。
終わったな」
「まだだ!
【モンスターズ・インターセプト】!
手札からモンスターを墓地に送ることで、その攻撃力分のダメージを軽減する!」
【モンスターズ・インターセプト】
特殊カード/護衛系
発動条件:
・自分が戦闘ダメージを受ける場合。
・自分に効果ダメージを与える効果が発動した場合、その効果の発動に対して発動可能。
効果:自分の手札・場の中からモンスターカードを任意の枚数墓地に送ることで、そのモンスターの攻撃力の合計分のダメージを軽減する。
(場のモンスターは、場での攻撃力を参照する)
「俺は手札から【レッドスケール・マテリシャル】を捨て…」
【レッドスケール・マテリシャル】打撃攻撃力700
【レッドスケール】が類清の前に立ち塞がる。
「その攻撃力700分の戦闘ダメージを減らす!」
類清が受ける戦闘ダメージ:1800-700=1100
類清は風で後ろに押されつつも、何とか持ち堪えた。
類清の累積ダメージ:2900(1800+1100)
「ありがとう、【レッドスケール】…」
赤い悪魔が消えていく。
「(攻撃を持ち堪えたとともに、これで【アブゼリード】召喚のための条件もクリアしたか)
さぁ、【アブゼリード】を召喚してかかってこい!
お前の全力をもってしても、俺に敵わないことを思い知らせてやる!
ターン終了!」
手札
類清:2枚
青充:4枚
TURN8
(類清のターン)
「俺のターン!
(【
だけど、この手札なら…)」
しばらく考える類清。
「(このターンが勝負!)
頼んだぞ、アブゼリード!」
「任せておけ」
【
モンスターカード(リード)/魔法部類/固有ターン5/加工系
魔法攻撃力1800
召喚条件:自分の累積ダメージが2500以上の場合、リードデッキから召喚可能。
魔法効果:自分ターンに発動可能。(複数回発動可能)
素材系カード1枚を指定する。
そのカードの性質を被加工系に変化させる。
(素材を加工し、新たな姿にする能力を持つ龍。
見た目は悪魔に近いが、本人は龍だと主張している)
「さらに【
このカードを【アブゼリード】と同じカードとして召喚する」
雪が降り積もり、【アブゼリード】と同じ形になった。
「ただし、効果は得られない。
さらにターン終了時、このカードは破壊される」
【
特殊カード/加工系
発動条件:自分の場または自分の墓地のいずれかにモンスターがいる場合。
効果:自分の場か自分の墓地からモンスター1枚を選び、このカードをそのモンスターと同じカードとして召喚する。
ただし、効果は失われ、このカードはターン終了時に破壊される。
「まだまだ!
来い!【調達するゴブリン】!」
【調達するゴブリン】
モンスターカード/通常部類/固有ターン1/射手系
通常攻撃力500
通常効果:このモンスターが場にいる限り、自分の場のモンスターは、自分の場の装飾系カード1枚につき攻撃力が500上がる。
(材料の調達を主な仕事としているゴブリン。
珍しい素材に対するアンテナを常に張っている)
「そして、【オアマリン・マテリシャル】を召喚!」
【オアマリン・マテリシャル】
モンスターカード/中距離部類/固有ターン3/素材系
中距離攻撃力1000
中距離効果:自分の場のこのモンスターの性質が被加工系になった場合に発動する。
このモンスターカードを以下の特殊カードとして自分の場に発動する。
<【
特殊カード/残存型/装飾系
効果:このカードの発動時に、次の効果を発動する。
場のモンスター1体を指定する。
このカードが場にある限り、そのモンスターはカードに記載されている攻撃部類を失い、追加で中距離部類を得る。
また、指定したモンスターが戦闘する場合に発動可能。
戦闘中のみ、相手モンスターの攻撃力を1000下げる。>
(見た目は龍に近い、青色の悪魔。
尾は鉱石でできていて、それを素材にした鎖で敵を拘束する)
青い悪魔が召喚される。
「【アブゼリード】の魔法効果を発動!
【オアマリン・マテリシャル】が氷を受けると、悪魔は鎖に変化した。
それを【アブゼリード】が手に取る。
「【調達するゴブリン】の効果。
俺の場の全てのモンスターの攻撃力は、装飾系カード1枚につき500上がる」
【
【
【調達するゴブリン】の通常攻撃力1000(500+500)
「バトル!
【
【
vs
【
【
「【オアマリン・マテリシャル】の効果によって指定されたことで、【アブゼリード】は魔法部類から中距離部類になっている。
これなら攻撃をかわせないだろ?」
「…」
「
凍った鎖は空に向かって投げられる。
しかし、その鎖が
「なっ!?」
【
「【
【
そして【
【
特殊カード/飛行系
発動条件:自分の飛行系モンスターが攻撃された場合。
効果:攻撃された自分モンスターは、飛行系の性質を失い、高次飛行系を得る。
さらに、自分の場の【
<このカードがある限り、高次飛行系モンスターを従えるプレイヤーは以下の効果を発動できる。
・自身の高次飛行系モンスターが中距離部類モンスターに攻撃を受けた場合、発動可能。
その攻撃を無効にする。
・自身の高次飛行系モンスターが中距離部類以外のモンスターに攻撃を受けた場合、発動可能。
攻撃モンスターを破壊する。>
「高次飛行系モンスターは、中距離部類のモンスターからの攻撃も無効にできる」
「…」
「いかなる手を使っても、もうお前の攻撃は俺には届かない。
…今度こそ終わりだ」
「終わりか…。
だったら最後にひとつ聞いてもいいかな?」
「何だ?」
「何であんたは、俺達をここまでして止めるんだよ」
「先にも言ったが、お前達では
「"不可能に近い"って、不可能かどうかはやってみないと分からないだろ!」
「やってみて負けるだけならいい。
だが、刺し違えるならばともかく、傷ひとつ与えられずに命を落としても、本当にお前達は後悔がないと言えるか?
本来、争いとは縁のない部に所属するお前達が、こんな危険な戦いに足を踏み入れる必要はない。
見知った人間が倒れていく姿を見せつけられるのは苦しいことだ。
それを見届けなければならない俺の身にもなってくれ」
「(青充君は、私達を守るために…)」
「(自ら我々を足止めしようとしたのか…)」
「それがお前の優しさってわけか。
青充、昔からお前はそうだったよな。
なんだかんだ、いつも俺達を大事にしてくれてた…」
しばらくの沈黙の後、類清が切り出した。
「でもそんなの要らねぇんだよ!」
「…」
「
それでも
こんな形で
奴を止めるために俺が行きたいと言ったら、アブゼリードや他のモンスター達も危険を承知でついてきてくれた。
風潤だって、家出までしてずっと
それでもお前は俺達に何もするなって言うのか?」
「それでもだ」
「悪いが俺は俺で奴に挑ませてもらう。
いちいち他人に指図されることじゃねぇからな」
「…そうか。
お前達の考えは分かった。
だが、この勝負でお前が負ければ、お前達はここから去る。
それは変わらないからな」
「その言葉、忘れるなよ」
「何?」
「アブゼリード、【
「了解!」
鎖は
「(…こいつ、まさか!)」
「特殊カード【
「!?」
悪天候になり、ゴロゴロと音が聞こえる。
「俺の場に残存型の特殊カードがある場合、場のカード1枚の性質を消滅させる。
これで【
【
特殊カード/落雷系
発動条件:自分の場に残存型の特殊カードがある場合。
効果:場のカード1枚の性質を消滅させる。
「【ホバリング】の効果で守れるのは、飛行系モンスターのみ。
君の【
雷が、鎖に向かって落ちていく。
間にいる
「(避雷針!)」
「さらに高次飛行系を失うことで、飛行系・高次飛行系モンスターの迎撃時にのみ効果を発動できる【
「…」
「これで中距離部類以外のモンスターの攻撃も通じる!」
「【
【
vs
【
「
冷気によって、
「…」
青充の累積ダメージ:3500(1200+2300)
類清の勝利。
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