第2話 関わりたくない奴ほど・・・
さて、バイトの疲れもあったが、なんとか睡魔との戦いに打ち勝ち、午前の授業が終えた。つまり、昼休みである。
俺は、自分で詰めてきた弁当を持って菅谷と学食へ向かう。
菅谷はいつも学食で食べている。その関係で俺も学食で弁当を食べることにしているのだ。
「さて、昼休みだ。飯にいこうぜ。」
学食につくなり菅谷は今日の定食とにらめっこしている。
A定食:生姜焼き定食 B定食:サバの味噌煮定食である。実物が飾られており、どちらもうまそうで俺もたまには定食にしようか悩むところである。コレが500円以下とは今のご時世非常にありがたい話である。
わが校の学食は各学年ごとに座れるブースが決まっている。なので、席探しにはそんなに困らない。
「今日の飯はどっちにするかな?ちなみにハジメの弁当はなん?」
「昨夜の残りの焼き鳥と金平ごぼう、厚焼き玉子にばあちゃんの漬物な。」
「うまそうだな、今度俺にも作ってくれない?元カノには作ってたじゃん」
「いや、やだよ。何が悲しくて野郎の弁当作んなきゃならねぇんだよ。あいつは料理ができないから仕方なく作ってただけだ。それに、毎食つくってわけでもないから」
「そうだったな。とりあえず、席も確保したし俺は注文してくるわ。」
菅谷は、元バスケ部だけあり背が高い、俺よりも5センチも高い180センチあるから結構目立つ。そんな奴(ランドマーク)が立ち上がれば、それなりに目立つ。
俺たちは、生徒会役員であることからそれなりに知られているし、今はだいぶ落ち着いたが、昨年やらかしたこともあり一時期は悪目立ちもしていた。
そこに来て俺の名前だ。
名前のことで昔からよくいじられていた。
俺の名前は漢字で「萌」と書く。でも、読みは「モエ」じゃない「ハジメ」である。
だが、しかし・・・・。
「お、モエ副会長、今日も学食で弁当ですか?」
「モエ君、たまにはみんなとごはん食べよ」
などと、同級生から声をかけられたりするので、
「はは、悪いまた今度な。」
俺は、苦笑いしながら都度適当に返事をする。
自分の名前は、嫌いじゃない。祖父母がつけてくれた大切な名前だ。フルネームは斎藤萌だ。新選組の隊長と同じ”さいとうはじめ”である。
誰にも言わないが、めっちゃ気に入っている。
小学生の頃から、同じようにいじられていたためさすがに慣れたが、むかつくことに変わりはない。
とはいえ、俺も高校生だ。
我慢できる・・・・・・・。と、思っていたが。
「おっす、モエちゃん。今日も弁当かい?」
無理だった。
「あ”?コラ?!だれがモエちゃんだ。俺の名前はハジメだって教えただろうがぁ!!」
俺のことをモエちゃん呼びした友人Aこと磯部の胸倉をつかみ持ち上げる。とりあえず足が浮くまでリフトしてやる。
「わ、悪かったよ、少しからかっただけじゃねーか。く、苦じぃ”。マジでヤバイ、勘弁して。」
本気で苦しがっている様子であったため、手を放してやると礒部は、尻もちをついていた。
「ハジメちゃんは冗談が通じないねぇ。そんなだとモテないよ。目つきが悪いくらいで顔は悪くないのにさぁ
・・・―ってあ、ヤベ・・・すまん。」
「謝らなくていいよ、かえって虚しくなる。それからチャン付けはやめろ。キモイ。」
というようなやり取りをしていると、菅谷が戻ってきた。
「おーい、何してんの?うるせーぞ?ていうか、生徒会副会長が胸倉をつかむな。あと、言葉遣いな、完全に昭和のヤンキーだったぞ。さっきの顔と目つきもマズいな。通報案件だ。気をつけろよ。」
結局、A定食にしたらしい菅谷から説教を受ける。
「だから、言ってんだろ。柄じゃねーんだよ。仕方がなくやってんの。」
「ハジメちゃんの悪い印象を少しでもクリーーンにするためにって学校がチャンスをくれたんじゃん。去年やらかした件、まだみんな忘れてないよ。」
「礒部、その話をここでするんじゃない。」
「悪い・・・って、さっきから俺謝ってばかりだな。」
「礒部、騒ぐのはいいが飯はどうすんだ?とけいをみてみろ。」
「あっ、ヤバっ急がなきゃ食いそびれる。買ってくるから待っててくれよぉー。」
「いや、ムリだから。ここ二人席だし。」
「とにかく行ってくるわ。おっ、菅ちゃんはAか・・・。」
と言いながら礒部は、定食を買いに行くのであった。
「さて、俺らも急いで食おうぜ。早くしないと午後の予鈴が鳴っちまう。」
「俺の定食も冷めちまう。やっぱ生姜焼きは旨いよ。しかし、礒部は口が軽いからな。ハジメも色々見直せよ。」
「おう、わかってはいるんだけどな。」
「いや、普段はここまで短気じゃないだろ・・・嫌なことでもあったのか?」
「さっきな、学食にバスケ部のエース様と瞳が入ってきてよ。エース様と目が合ってしまったんですよ。瞳のことは吹っ切れたと思っていたのだけど、まだムカついているらしいな。」
苦笑いしながら伝える。
「あ、マジか。珍しいな、ビビッてお前の前には出てこれないと思ってたよ。」
「そんなことないと思う。単純に背が高いから割と目につくということもあるけど。なんというか見せつけてくれるよな。まぁいいけど。」
そんなんことを話しているうちに礒部が戻ってきた。
「あっ、待っててくれたのね。心の友よ。って、椅子借りてこなきゃ。」
そのあとは、くだらない話をしながら昼飯を食い、教室へ戻ったのだが、戻る途中でアクシデント発生。
教室の前で、バスケ部エースこと渡辺岳(わたなべがく)が、俺のことを待ち伏せていたのだ。
なぜ待ち伏せがわかったかって?
そんなん、俺にすんごい視線向けてくるんだもん、目も合うさ(本日2度目w)。
避けて、教室に入ろうとした瞬間、
「モエ君、俺が悪かった。瞳のことは本当に悪かったと思っている。
非常に自分勝手だということも分かっている。でも、あれには理由があって・・・、話を聞いてほしいんだ。」
イケメンのエース様が、顔を青くしながら謝ってきた。また殴られるとでも思ってるのかね?
「あん?今更なんだよ?それともまたボコられたいのか?」
岳の顔色がさらに悪くなったが、俺は構わず言葉を続ける。
「あの時に自分のしたことを正当化したことを忘れたわけじゃないだろ?言っとくけど、瞳・・・いや、伊藤さんのことも頭にきているが、お前のやったことも許せない。正直、目障りだし他の生徒の邪魔になるからそこをどいてくれ。」
手で岳をどかし、教室に戻ろうとしたのだが、菅谷からまさかの言葉が出る。
「ハジメ、いい機会だから放課後に話を聞いてやれよ。岳、部活が始まる前に生徒会室にこい。キャプテンには俺から伝えておく。それから、当然俺も同席するぞ。また、以前のようなことが起こってはハジメがかわいそうだ。」
「うるせい、勝手に決めんな。でも、菅谷が言うならそれでいいか。正直、もうかかわりたくないんだよ。それと伊藤さんは連れてくるなよ。わかったな・・・?」
俺は声を低くしてそう伝えた。礒部は、俺は仲間外れなの?とぼやいていたが、こいつは、悪い奴ではないが少々口が軽いところがあるからな。意図しないところで変な噂が流れても困る。
「わかった。それで構わない、菅谷にも聞いてもらったほうがいいと思うし。話をさせてもらえるならありがたいよ。」
覚悟を決めたせいか、元チームメイトの菅谷が声をかけたからか、わからないがまだ表情は硬いものの顔色が少しよくなっていた。
さっきのやり取り、結構見てたな。
また変な噂を流されても迷惑なんだよな。マジで。
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