第4話 今日の放課後は一人で帰ると吉。
数日後の朝。学校に向かって通学路を歩いていると、携帯にメールが届く──星子さんからのメールは『今日の放課後は一人で帰ると吉。女の子からの誘いは、快く受けてあげましょう!』と書かれていた。
お誘いねぇ……どんなお誘いがあるんだろ? 楽しみだな。
──その日の夕方。俺はメールの通り、一人で帰る。すると後ろから「コーキ君!」と、星恵さんから声を掛けられた。俺は足を止め、後ろを振り返る。
「一緒に帰ろ」
「うん」
俺は歩いてくる星恵さんに合わせ──並んで歩き出す。
「あれからさぁ、釣りのルアーとか色々、調べてみたんだよね」
「どうだった?」
「正直、分からない」
「ははは、そうだろうね」
星恵さんは両手を後ろで組むと、俯き加減で「でさぁ……頼みごとがあるんだけど、今度の休みの時、一緒に選んでくれない?」と言って、恥ずかしそうに髪を撫で始める。
占いが言ってた御誘いって、この事か。こんなの「もちろん、良いよ」に決まってる。
それを聞いた星恵さんは嬉しそうな顔をこちらに向けると、両手を胸の前で合わせて「本当!? 凄い助かる!」と口にした。
「じゃあ連絡先を交換しようか?」
「うん!」
※※※
日曜日になり、俺は待ち合わせ場所の駅へと向かった──駅のベンチに座り、待っていると星子さんから『今日は素直に褒めてあげると吉!』と、メールが届いた。
褒めるねぇ……星恵さん、どんな恰好してくるんだろ? 楽しみだな。
しばらく改札口を見ていると、女性が俺に手を振り、出てくるのが目に入る。あれって──星恵さん? だよな……。
ロングヘアの黒髪をバッサリ切って、茶髪のボブヘアにし、黒縁眼鏡を外している。服装はオリーブグリーンの色をしたマウンテンパーカーに黒いインナー、ズボンはデニムのパンツを履いていて、アウトドア系の服装をしていた。
あまりの変わり様に、マジで一瞬、誰だか分からなかった……。
星恵さんは俺の前に立つと「お待たせ」と言って、ニッコリ微笑む。俺は立ち上がり「あ、うん」
星恵さんは俺と目を合わせるのが照れ臭いのか、俯き加減で「えっと……どうかな? 今日の私」と聞いてくる。
「前のワンピースも似合っていたけど──アウトドア系の服装も似合ってると思うよ」
星恵さんはそれを聞いて顔を上げると、嬉しそうに微笑み「ふふ、ありがとう。まずは見た目からと思って、買ってみたんだ」
「髪型も変えて、眼鏡も外したんだね。印象がガラッと変わって、その……可愛いと思うよ」
俺がそう言うと、星恵さんは顔を真っ赤にし、「もう……そんなに褒められると恥ずかしい」と、拳でコツンと俺の腕を優しく突いた。
そんな可愛い仕草をする星恵さんを見ていると、何だか俺まで恥ずかしくなる。俺は急いでいないのに「行こっか」と言って歩き出した。
「うん!」
※※※
釣り道具屋に到着すると、俺達はルアーを選び始める──。
「ネットで調べていたから分かってはいたけど、釣り道具ってやっぱり高いね」
「うん。だから俺はバイトしながらコツコツ揃えていったよ」
「私もそうしよう……今日はルアーだけにする。ルアーは、どういうのが良いのかな?」
「最初はこういうのかな?」と、俺はバイブレーションが並ぶ商品棚を指さす。
「色は?」
「うーん……釣れる釣れないはあるけど、俺は自分が使ってみたい色を選んでる」
「そうなんだ。じゃあ私もそうする! えっと──」
星恵さんが選んでいる間、俺も目星いものが無いか探し始める。
「あ……これ、前から欲しいと思ってたやつだ」
俺はそう呟き、ルアーを手に取る。
「買うの?」
「うーん……やめておく。今月は金欠気味で」
星恵さんは「ふーん……」と返事をして、人差し指を顎に当てる。少しして指を離すと、ピンクとシルバー色のルアーを手に取った。
「私、これにする」
「可愛らしい色で良いね」
「うん。私、トイレに行ってから買うから、光輝君は外で待っててくれる?」
俺は欲しかったルアーを元の場所に戻し「うん、分かった」と返事をして、店の出入り口へと向かって歩き出した。
──外で待っていると、星恵さんが嬉しそうに笑顔を浮かべて、釣り道具屋から出てくる。俺に近づくと「今日はありがとうね」
「うん」
「まだまだ時間は掛かると思うけど、全部そろったら一緒に釣りしようね」
「うん、楽しみにしてる」
こうして俺達は釣りを一緒にする約束をして、釣り道具屋を後にした。
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