第15話 『僕は君を殺せない』
本格的な寒さがやってきた。鈍色の雲の合間からわずかに日差しがこぼれ、頬を照らす。一向に暖かくないのを残念に思った。寒いのは苦手だ。
息子が熱を出してしまった。外出予定はキャンセル。昨日は元気にデイサービスに行っていたので、少し驚いている。
こうなると、「抱っこして」と言われて添い寝をするか、側にいるかしていないといけない。心細いのだろうか、家事をしているとぎゅっと手をにぎり、自分の居る部屋まで私を連れてくるのだ。
それを良い言い訳として、息子が熱を出したときは、看病と好きなことをしようと決めている。
認知行動療法の日記も書く暇が無かった。そもそも、看病以外の出来事が無いのだからどうしようもないか。
久しぶりに本を読む事にした。小説が読みたかったので、長谷川夕さんの『僕は君を殺せない』を読む。
オレンジ文庫の中で欲しい本を探していた時、お勧めで紹介されていたので一緒に買い求めた物。若者に話題の本を研究してみたくなったのだ。
普段読む本は思いっきり自分の好みに偏っているけれど、時々無性に話題の本を読みたくなる私はミーハーなのだろうか。
テンポよく読みやすい文体。ミステリを読み慣れている方ならば、サクッと読み進められると思う。
表題作の他に短編が二本収録されていて、『春の遺書』に心を奪われる。『Aさん』も絶妙だったけれど。表現の自由さや、表題作ではさらりと流された(独白形式なのだから当然と言えば当然なのだけれど)「人」の描写が印象的だった。
どういう人物か、というよりは、登場人物がどういう風に生きていきたのか、という点において。
映像化するととてもはえるだろうな、というシーンが多かった。
夕方。お客様と外食する約束だった夫が、家庭を優先してくれた。
今までの彼だったら考えられない事で、少し驚いてしまった。ありがたい事だ。
明日、息子の熱が下がっていますように。
平凡な日常の大切さを噛み締めながら、この日記を書いている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます