第41話 ブースC
僕たちがブースCへ移動すると、他のクラスメイトも丁度集まってきた。ここは一般のフリーブースと貸切ブースが混在していて、僕たちのブースが一番広い。段差や壁が多用されていて、各コーナーに座ると立てなくなるクッションやら、ペアシート、ボードゲームテーブルなどが混在していて、ちょっとしたリラクゼーションルームの様になっていた。
普段は一般開放ブースになっている様で、ソファに座ってしまうと案外他の人の動向が見えにくくなっている。中央にボードゲームテーブルがあるので、そこにクラスメイトが多く集まっていた。
僕はジャグジーでのぼせてしまったこともあり、キヨくんに連れられて窓際の窪んだリラクゼーションソファに座り込んだ。ソファに埋もれて起き上がれない僕を笑いながら見ていたキヨくんは、途中で取ってきた飲み物が空になっているのを見ると、もっと何か冷たいものを取ってきてくれるというので、お任せしてしまった。
目を閉じるとあっという間に眠くなってしまった僕は、ウトウト心地よい眠りに誘われた。どれくらい経ったのか、わっと盛り上がる声に、ハッとして目を覚ますと、中央の方から三浦君たちの興奮した声が聞こえてきた。どうもボードゲームをしているみたいだ。
キヨくんは見当たらなかった。きっとボードゲームのところに捕まったのかもしれない。僕が首を伸ばしてブースの下の方を覗き込むと、案の定三浦君に捕まってゲームに参加させられていた。
僕は喉が渇いたので、ブースを出てドリンクバーの方へ向かった。丁度正面から箕輪君達が漫画とドリンクを手にやって来た。
「今から行くのか?ソフトクリームみたいのもあったぞ?」
そう言う箕輪君達と別れて、種類が豊富なドリンクバーに向かった。僕はクリームソーダにソフトクリームを載せようと、ソフトクリームメーカーの列に並んだ。
「クリームソーダにするの?俺はコーラフロート。」
後ろから声を掛けられて、僕はハッとして振り向いた。一瞬露天風呂のあの人かと思ってしまったけれど、そこには従兄弟の剛くんの友人の、大学案内してくれると言った渡辺さんがいた。
僕はホッとしてにっこり笑うと、渡辺さんは思いがけない事を言い始めた。
「剛、君の事めちゃめちゃ自慢してたよ。文化祭のメイド写真、俺も見せてもらっちゃった。優勝したんでしょ。」
剛くんがどうして僕の写真を持っていたのかとびっくりして目を見開いていると、何でもOBに出回っているとの事らしかった。僕は何だか困ったことになったなと思って、あまりあれが僕だと言わないように剛くんに口止めする様に渡辺さんに頼んだ。
渡辺さんは快く引き受けてくれて、ついでにオープンキャンパスに行く際は連絡するようにと連絡先交換までしてしまった。ブースに戻りながら、何となくキヨくんにこの事は言わないでおこうと思った。バレたら絶対不用心だって怒られそうだ。
ブースに到着すると、キヨくんがキョロキョロと辺りを見回していた。僕を見つけると、ホッとしたのを誤魔化すように眼鏡を直すのを見て、何だか心臓がぎゅっとなったのは何故なんだろうか。
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