第13話
金曜日の早朝。せのんを幸福屋に預けた後で、
「かこへ せいやです ぼくはいまこのまちにすんでいます だいがくおわったらぼくとあってください まっています」
正直、改行の仕方も漢字変換も心が折れてしまい、誤変換をするくらいならオールひらがなで勝負しようと思ったのだ。むしろ文と文の間を空けているのを誉めてほしいくらいだ。偉いぞ、自分! きっと、場所と時間は風子が気を利かせて向こうから指定してくれるはずと祈りながら、打ったものだ。
そんなこんなで朝から僕はずっとそわそわしている。もしかして、風子はもう自分のことを覚えていないのではないか。覚えていたとしても、僕になど二度と会いたくないと思っているかもしれない。もしくはいたずらだと思われているかも。そもそも、メールアドレスがあっているのか。あれ? メールアドレスが存在しなかったら、送信メールが返ってくるのだろうか。手紙の世界ではそうだから、メールもそうなのかもしれない。
「風子。新しい友達、できたのかな」
できていたらできていたで僕は嫉妬とかするのだろうか。それとも、僕と同じ境遇でいたことにまたもや共感するのか。お互い、境遇に共感したからって、ふたりがふたりとも許せないことがある。
幸福屋の店主の言葉を借りるのなら、風子は僕に同情ではなく、愛情を示してくれたのだ。自分で、僕を助けたいと。でもね、確かに風子は医学部に残ることで力をつけてきたには違いない。けれど、僕はまだ風子とは結婚できない。三年間はこの街で、風子のすぐ近くには居られるけれど、三年後、十八歳になった時、風子の大学の後輩になって結婚できるかどうかはわからない。わからない。高校の勉強だって、ついていくの大変で、ひとりでよく泣く。こんなに一生懸命、勉強しているのに、進級できなかったらどうしようとか恐い。
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