11.漆黒と紅に染まっていた

 目覚めたら、暗闇の中にずっといた。光なんて感知すらできない漆黒の闇の中。

 連れ出してくれた彼は闇の中でもがく人だった。

 私はもがくこともしなかった。

 一緒に行きたいと思っていたのに。

 なのにあの人がくれたのは紅だった。

 うれしくない。

 あなたがそうなるならば私はもがきたくない。

 だからあなたともお別れをした。

 残ったのは自分自身と向き合う作業。

 見栄とか世間体とかたくさん耐えなくてはならないこともあったし、今でも耐えられえているとは思っていない。

 周りの人に多大な迷惑をかけているなと思う。

 漆黒の中にいる時間が長すぎて、リカバーリーする時間はもうないけれども。

 漆黒の中でもがくではなく、受け入れることで私の世界は真っ白になれた。

 心地いい白い空間。

 何をしても自由だし、何をしても自分の責任。

 自分が認められるうれしさをかみしめて、道を外れず歩んでいきたい。

 こんなに穏やかな世界があるなんて知らなかった。

 ありがとう。

 END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る