3.霧雨の日に

 霧雨の時に河川の近くを歩いていた少年がいた。

 霧雨の時、桜の木がきれいなんだ。

 かすかに残った桜の花。もう青葉に近くなっている。

 わずかに散っていく花がきれいなのだそうだ。

 

 そんな感性が素敵だな。

 

 私はそんなことをのんきに思っていた。

 ボッーしていたら少年は私のことを認識していたらしい。

「そこにいたら濡れちゃうよ」

「はい」

 ちょうど軒先があって雨宿りできる場所があった。

「怒られないの?」

「うん多分。ここで、桜の絵を描いているから」

 そうなんだ。

 うん。体が弱くて日光に弱いんだ。

 なんんて反応していいかなやんで

 フーンとしか言えなかった。

 もっと気の利いたこと言えばよかった。

 彼は医療施設の整っている東京に行くことになった。

 サクラを見ると彼を思い出す。

 元気にしているだろうか?

 全国新聞で、個展を開く彼の姿を見かけた。

 感性が素敵な彼だから感銘を受けた人が他にも居たのだろう。

 うまくいってほしいなとただ願う。

 END

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