語の変形

 この節では、次の項目について説明する。

  • 【かつよう

  • 【かん

  • 【

  • 【ひん

  • 【おんいんへん

  • 【けいへん

  • 【くずれ】

  • 【けいどう

  • 【だくおんげん

  • 【おん便びん

  • 【りゃく

  • 【せんもんよう

  • 【なまり】

  • 【ほうげん

  • 【かかむすび】

  • 【しゅう



      †



かつよう

 〈接続される対象によって語尾を変容させる単語〉の意。


 一般に、動詞や形容詞などがこれに当たるとされ、活用様態の類型として活用形がそれぞれ存在する。

 ただし、個々の単語においてどのように活用するかは本当に個々異なるため、いちいち唱えて不自然でないか確かめたり、辞書などで確認していくしか無い。



      †



かん

 〈活用する場合でも変容しない語の主幹部分〉の意。

 〝「行」く〟〝「行な」う〟〝「美し」い〟〝「甘露」だ〟などがこれ。



      †



 〈活用する場合に変容がおこる語の末尾部分〉の意。

 〝行「く」〟〝行な「う」〟〝美し「い」〟〝甘露「だ」〟などがこれ。



      †



ひん

 〈ほかの語との結びつき方の類型によってことばを分類したもの〉の意。


 〔〕は〈形式の決まったことば〉転じて〈単語〉〈熟語〉〈成句〉の意。

 ところで、品詞と活用に関する部分については


  • 従うのがためらわれるレベルで


 である。

 日本語が難解と受け取られるのもおそらく、〝この本則をみにしたところで実態には沿わない〟とのよしが大きく、またエスペラントで日本語が一部表現できない理由でもあるのでは、と疑われる。

 ただ、〝どのようなかたちもっとてきせつであるのか〟との議論が長い間決着していないわけだが、それはつまり適切と考えられる解釈が、とらえ方によって万別するという事だろう。

 そもそも〝日本語とは簡単に迷走できる程までに自由すぎる言語〟、という事も有る。

 実際に整理を試みたところ、限りなく純粋に機能別分類をすると〝品詞には名詞と動詞と形容詞と助詞しか存在しない〟という、にわかに通しづらい結果にもなった。

 この場でそういった再定義をろうするのはむしろ不都合が大きいのでは、と想像されたのでその掲載を割愛し、大まかな定義は本則に譲る事とした。

 一応の成果として、その整理の過程で挙がった疑念についてのみ、列挙しておく。


  • 五段動詞は語幹の形態により、活用類型が三種類に分かれるのでは?

  • 一段活用とは本来「語幹なし動詞」専用の活用で、語幹を持つ一段動詞は「{末尾母音を切り捨てた四段動詞語幹}+{語幹なし動詞}」という合成語であって、そしてその合成されている語幹なし動詞とは上一段では「る」、下一段では「る」なのでは?

  • 自他動詞など無く、それは主語を省略された自動詞で、目的語たる修飾語を主語と誤解しているのでは?

  • 助動詞など無く、それは動詞なのでは?

  • 形容詞には動詞化活用が存在するのでは?

  • 副詞とは活用なしに連用修飾機能を持つものであって、前置き修飾語全般の事、特に連用形動詞の事ではないのでは?

  • 間投詞は、感嘆詞に含まれはするがイコールではないのでは?

  • 間投助詞など無く、それは感動詞なのでは?

  • 副詞や感嘆詞など無く、それは名詞か動詞か形容詞か助詞、あるいはその複合なのでは?

  • 形容動詞など無く、それは名詞であり、〝一部の名詞は程度を表す副詞に修飾され得ない〟との根拠は「意味的な接続可能性の」を的に「接続機能の有無」としているに過ぎないのでは?

  • タリ/タルト/ナリ活用とは、名詞に接続された動詞「る/る」の四段活用で、終止形が連用形に準じるのは活用というより係り結び的な慣習なのでは?

  • 完了形という、連用形から分離されるべき活用形が存在するのでは?

  • 所存形という、未然形から分離されるべき活用形が存在するのでは?

  • 動詞五段活用では完了形に変格がみられるため、もう少し細分化したほうがいいのでは?

  • 文法を守らないと伝達に支障が生じるとうけれど、「ら抜きことば」を文法として禁則扱いする事でむしろ伝達の支障をきたしていて、かつ外国人の日本語習得をも困難にさせているのでは?

  • 文法文法とうけれど、例外が次々に発生するようなものを法と呼んではいけないのでは?


 ね、グダグダでしょ?(

 「ぶんぽうSMエスエム」をやる趣味はぼくには無いんだよなあ(



      †



おんいんへん

 〈言いやすさの都合などで語の発音が原語から変化すること〉の意。



      †



けいへん

 〈言いやすさの都合などで語の形が原語から変化すること〉の意。



      †



くずれ】

 〈おんいん変化と語形変化の総称〉の意。

 [くずし]と書いて同義。



      †



けいどう】⛏

 〈一連の決まったことばを単一の語に集約させる語形変化〉の意。

 〝まつごとまつりごと〟〝おもはかる→おもんぱかる〟〝bathバス roomルームbathroomバスルーム〟などがこれ。


 飽くまで同一の語であり、〈同じ意味になる別語〉である「どう」とは異なる。



      †



だくおんげん

 〈語頭などを濁らせることで粗さつたなさや悪さなどを演出するおんいん変化〉の意。

 〝り→り〟〝つ→ゔ(ぶ)つ〟などがこれ。


 「どうけいおん」の形になりやすい。



      †



おん便びん

 〈発声の利便のために発生したおんいん変化〉の意。

 〝はきり→はっきり〟〝くろびとくろうと〟〝さきたまさいたま〟などがこれ。


 サイタマサイタマサイタマサイタマサイタマサイタマサイタマサイタマ(突然のハッスル



      †



りゃく

 〈簡便に使う目的でことばの要素をいくらか省く語形変化〉の意。

 〝けいせいさいみんけいざい〟〝Intelligenceインテリジェンス QuotientクオシェントIQアイキュー〟などがこれ。



      †



せんもんよう

 〈専門分野における事象を簡便に表現するための語〉の意。

 〝かくしんはんほうそう専門用語)〟〝やくそく(演劇専門用語)〟〝おあいそ(接客専門用語)〟〝アレルギー(医学専門用語)〟などがこれ。


 一般に、〝その分野内においてのみ通じればよい〟との意図で作成されるもの。

 したがって、言葉のあくに最低限必要な情報までもがぎ落とされた「略語」の形となり、きちんと確認をしないとその意味が察せれないのが普通である。

 また、何らかの専門家が「言語に対してはさほどたんのうでない」場合も多い。

 しばしば不適切な語の組み立て方がされる事に起因して、無理にこれらを分野外で通用させると激しい誤解を呼ぶ。

 結果、「その語がどんな意味で受け取られるかを、発言のたびにいちいち考慮しないといけない」という、非常に面倒くさい事態までをも招く、というか招いている。

 つまり、専門用語をやみに遣うのはいきどころか、むしろ無粋なのだ。

 よって専門分野外においては、専門用語にはかつに関わらないほうがせかいへいわのためだとぼくはおもいます、

 ヘタにいきってもダサいだけというか、専門用語に寄りかかるのは見下げた権威主義だし、 いきさを演出したいなら修辞でも覚えたらいいんじゃないすか。

 後でさらっと触れますから。


 なお「かくしんはん」は、〈正義と確信して実行する勇敢な犯行〉の意。

 「悪いと確信しながら、知らぬふりで実行する」ことをぼくらは「」とうものであり、だからそのような犯行のことは素直に「はん」と言えばよい。


 また、「やくそく」は〈役柄の詰まらなさが役者の魅力を台無しにスポイルすること〉の意で、シナリオやさいはいの是非を批評するもの。

 つまり〈自分には不相応な大役〉のような意味ではなく、〈力及ばない〉と言いたいなら素直に一般語で「ちからそく」と言えばよい。


 ほか「おあいそ」は〝京都のアレ〟、つまり〈角を立てない態度を保ちつつもやや強引にお引き取り願う〉の意で、つまり〈お会計〉ではない。

 これに〝「会計時には愛想を忘れずに」という意味だ〟と反論してしまうと、会計時以外には愛想を忘れていい事になり、同時に愛想の必要なすべての接客業務が「おあいそ」と呼ばれるべき、という話にもなる。

 これも素直に「おかんじょう」と言えばよい。


 そして「allergyアレルギー」は、直訳すれば〈どうへん〉、説明するなら〈どう(=起きるべきでない場合に起きる作動)を起こすようになること〉のこと。

 カタカナ語ではなく、ちゃんと漢字の名称で通用させていれば、〈じょう反応(=ある事に対する反応の度合いが支障の出るくらいに激しいこと)〉を指したり、水が酸などのように直接はだを侵す「みずじんしん」を「水アレルギー」と呼んだりするような、激しい誤解をされる事は無かったはず。

 名称は大事、そしてここは日本だ。

 ただ、そもそも「アレルギー」「みずじんしん」ははず。

 気分的なじょう反応についても、「すごくいやがる」「おぞましく感じる」「げっこうしてわめく」のように説明付けをしたほうが、表現としてより豊かだろう。


 ほらね、ちゃんと確認しないと意味が察せれないことばばっかりでしょ。



      †



なまり】

 〈土地柄の風習や伝統などにより発生したおんいん変化〉の意。



      †



ほうげん

 〈土地柄の風習や伝統や政治的理由などにより発生した語形変化〉の意。



      †



かかむすび】

 〈特定の係助詞が主語に混じった文で述語の活用が変化する語形変化〉の意。

 〝我が世たれ 常な〟〝好き物の上手〟などがこれ。


 〝強調したい〟という欲求が発生しやすい係助詞が登場した時に、半文法的に意を強調させる慣習。


  • 「ぞ・そ」「なむ・なん・なも」「や・か」が有る場合

    → 連体形で活用


  • 「こそ」が有る場合

    → 仮定形(ぜん形)で活用


 つまり、かの有名な〝今〟の「別れめ」は、〈別れるの推量(口語でうところの「別れよう」)〉の意の「別れ」の連体形であって「別れ」ではなかったのだ! ナ、ナンダッテー(

 そういや最近の若いもんは知らんだろうが、昔の時代には『はげれば尊し』というしゅういつな替え歌が有ってだな、あれは本当にしゅういつなので義務教育の国語の時間で学ばせるべきだと思うんだ(



      †



しゅう

 〈語を巧みに用いて言葉を効果的に表現すること〉の意。


 言葉の影響力を増す「れん」を語で表現する手法を指し、ゆえに多くの手法は言語に依存する。

 日本語においては一般に、次のようなものが有るとされる。


  • :対象を直接指さず別のもので代理して面白味を出すもの

    〝月光→あんびゃく〟〝国会→永田町〟など


  • ちょう:程度を大きく言って強調するもの

    〝今日は仕事で死んだ〟〝生理的に無理〟など


  • えん:短くて済む本題を長く説明して強調するもの

    〝この料理は「ほっぺたが落ちるほど」美味おいしい〟など


  • たい:様子や音声を言語化して面白味を出すもの

    〝もふもふ〟〝にゃーん〟など


  • じん:人でない物を人であるかように描写して面白味を出すもの

    〝恋破れた私を夕立ちが優しく慰める〟〝勝手な願い事ばかりじゃ流れ星だって落ちるのがいやになる〟など


  • たいげんめ:体言を文末に置いて独特のいんを与えるもの

    〝身に染みるあなたの優しさ〟〝無頼なり宮本武蔵〟など


  • とう:文法上での一般的な記述順を逆転させて強調するもの

    〝そのこぶしふるえば泣きを見る事になるぞ! 主におれが〟など


  • てんよう:同じ事実についてとらえ方を変えて強調するもの

    〝人はいつも「ことばだまされる」→人はいつも「ことばだます」〟〝日本の「みなさん」、お元気ですか→日本の「あなた」、お元気ですか〟など


  • たいしょう:あるじょじゅつにその対照的な例を付け加えて強調するもの

    〝あいつは「自分には甘いくせに」他人には厳しい〟など


  • はん:見込みの薄い推定や事実に反する事を述べて強調するもの

    〝こんな事ってある?〟〝偉くなったものだ〟など


  • はんぷく:同一または同様の語を繰り返して語の意やしつようさを強調するもの

    〝泣く泣く〟〝力こそパワー〟〝愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル愛シテル〟など


  • おういん:同様の音を繰り返して調子を強調するもの

    〝やたらめったら〟〝いとしさと切なさといとしげさと〟など


  • へいこう:一定の類型でいくつかの事柄を列挙して調子を強調するもの

    〝うみせんやません〟〝春はあけぼの、夏は夜〟〝彼がコケた。彼女もコケた。ねこもコケたし企画もコケた〟〝世とは無情なものだ→(なんやかんや)→今日も今日とて世は無情である〟など


  • もくせつ:直接描写をしない事で推察を促すもの

    〝それはその、……はい〟〝今度ぼくは、彼女の手料理にあずかる。せいかんを祈ってほしい〟など


  • ぜんそうじょじゅつの規模を少しずつ拡縮して全容と立ち位置を説明するもの

    〝激しい雨音は聴こえていた。やがて部屋の窓が割れた。慌てて外を見てみれば空飛ぶ看板。道路も激しく水没している。TVをつければ大災害だと報じていた〟〝おれの勤務先は全国の土地開発をになう大企業! 配属部署は皆のあこがれ東京都! ……のがさわら諸島、の父島の開発支部、の雑務担当……定期便すら週一とか聞いてねえぞ(涙)〟など


  • あいまい:明確な表現をしない事で微妙さを与えるもの

    〝男性とも女性ともつかない顔立ち〟〝損したとも得したとも言える〟など


  • おり:語頭などに別語を折り込んだり、同音の別語を掛けてダブルミーニングをさせたりして、面白味を出すもの

    〝めな人。ヤな事あったら、ぐ逃げるし。ライよもう〟〝音楽ノオト(の音:noteノート)〟など


  • とんこう:説得力ある前提を落ちによって台無しにして面白味を出すもの

    〝「ぼく」とは「じゅうぼく」の事なんだから、従業員にはふさわしい。よって仕事中の人間は、自分を「ぼく」と呼称するべきなんだ! 女子も含めてな‼〟など


  • しゃくよう:既存の事柄を借用して面白味を出すもの

    〝おれ、帰ったら結婚するんだ〟〝ドクペ箱買いって、天才にでもなるつもりか?〟など


 借用は、知らない人にはまったく通じないので、乱用は避けたほうがよい。

 それについて〝こんな事も知らないのかよ〟とめるのは、ものを伝えるはずの立場としてははなはごうまんと言える。


 なおこの中で、最も気を払われたいのは「たいしょう」だ。

 まずは一般に、全く同じ情報のれつであっても、後に述べられた事のほうが強い印象を受ける。

 語というものが一次元情報であるだけに、後から来たほうが記憶に新しく、そしてそれに沿うものか、日本語の文法的にも修飾が前、目的が後に来やすいためかとは思われる。

 これを対照の場合で見てみると、まず例えば


  • 味覚とは食べ物の味のみによって左右されるものではない

  • 食べ物の値段はその味と直接関係が無い


と競合するような事実は、たとえ登場箇所に距離が有ったとしても、ただ同じ文章内でじょじゅつされるだけで、つもりが無くとも対照として成立する。

 この場合ならば、前者を後に述べると「満足度には食べ物の味より付加価値のほうが大事」の意、後者を後に述べると「結局は付加価値によって味が変わったりはしない」の意と、完全に異なる意味合いの主張と化す。

 これは、登場箇所に距離が有ればあるほど筆者が見落としがちで、かつ受け手には〝その場その場で言っている事が変わる〟という印象を与えやすいので、十二分に気をつけられたい。


 ちなみに、係り結びもあるいはこの修辞に含まれる、と考える事もできる。

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