第21話

「厄介だね、あの転校生。要を困らせるだなんて」

「うぉんっ」

 撫でる手に、犬は返答した。

 校舎の屋上から、一瞬の怪人騒動を眺めていた刺青の男は、青い衣のヒーローに目を細める。

 その背後で、じゃり、と地面を踏む音が鳴った。

「ここは関係者以外立ち入り禁止だ。ましてやペットの持ち込みも、儂じゃなかったら出禁ものだぞ!」

「そうだね、あんたじゃなかったら、死んでたとこだ」

「つっ」

 熱田はガジェットを構える。

「うぉん」

 犬の返答。変身するよりも早く、生暖かく赤い闇は大きな口で、熱田を飲み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る