第2話 クリスマスには雪を
そうっと天界へと戻ったライですが、先生に見つかって授業をさぼった事で叱られ、反省するように言われました。
「そんな難しい事知らなくても、天使の仕事、できるっての」
ライはふてくされたましたが、反省したふりをしてお小言からどうにか解放されました。
そして次の日もやっぱり、昨日のもっくんたちと遊ぼうと地上にこっそりと降りて行ったのでした。
そんな風に、はっちゃんたちの放課後に待ち合わせて、毎日ライたちは遊んでいました。ライはどこの子かと訊かれましたが、「気にならなくなるような」術をかけておきました。勉強は嫌いですが、役に立つものだけは覚えているのです。
「明日はクリスマスだな」
そうとんとんが言い出したのは、並んで近くの焚火に当たっている時でした。
「今年はゲーム機をプレゼントに欲しいって言ってあるんだ」
とんとんは目を輝かせて言います。
「ぼくは昆虫図鑑」
もっくんはそう言って、枯れ葉を焚火の中に入れました。
「オレは自転車!」
もっくんはそう言って歯を見せて笑いました。
「ライは?」
訊かれてライは困りました。天界では、クリスマスにプレゼントをもらう習慣なんてないからです。
「ううーん。オレは、勉強しないでいい権利!」
だから、かなえてもらいたい願いを言いました。
「それ、いいな!オレもそれがいい!」
もっくんもそう言ってライと肩を組む。
「それは願いだよ。
でも願いなら、雪が降ればいいなあ。この辺は積もるほど雪は降らないから」
「そうだよな。一度でいいから、雪合戦したりとか、雪だるまを作ったりとか、してみたいなあ」
とんとんも遠くを見るような目をして言いました。
同じ国でも、たくさん雪の降る地域もあれば、降らない地域もあります。ここは降らない地域のようです。
「そうかあ。ここは雪が積もらないのか。雪合戦も楽しいし、雪で大きな像を作るのも楽しいぞ」
ライが言うと、もっくんたちもそれを想像して、やってみたくなりました。
「いいなあ」
「やってみてえ」
「雪国は遠いもんなあ」
それで、雪が降ったらしたい事、食べたいものを色々とあげて、その日は別れました。
(そうか。雪か)
ライはいい事を思いついたと、にっこりと笑いました。
天界へ戻ると、こっそりと抜け道を通って制御室へ向かいます。
見習いの天使は前にここへ見学に来た事があり、機械の使い方をライは覚えていました。
うまく中へ忍び込むと、制御盤の前に立ち、いつも遊びに行っている地域を指定し、天気を決め、強さを入力し、スイッチを押します。
「シシシ!あいつら、明日の朝は驚くぞぉ」
ライは、
「オレからのクリスマスプレゼントだ!」
と笑い、友達の嬉しがる顔を想像しながらこっそりと部屋へ戻って行ったのでした。
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