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回文短歌風(目標(366)が見える・350まで)五十首詠


01(301)

 引く松の 千歳の陰葉 春日野か 菅は遠の瀬 土地の褄食ひ

 ひくまつの ちとせのほとは かすかの(か すがはとほのせ とちのつまくひ)


 ひくまつの-ちとせのほとは-かすかのの-わかなもつまむ-ものにやあらぬ

  能宣集[花山院献上本](よしのぶしゅう・かざんいんけんじょうぼん)

  成立年時未詳(※991年)

  作品八十三


02

 七夕の 心地こそねれ 熱る穂 通れね底地此 処の田は涙

 たなばたの ここちこそねれ ほとぼる(ほ とほれねそこち ここのたはなだ)


  ほとぼり【熱り/余熱】


03

 遺伝だと あれ人肉か 薬入り 直ぐ確認し レアと断定

 いでんだと あれじんにくか くすりい(り すぐかくにんし れあとだんてい)


04

 毒す人 仇と暮らす ネアカ馬鹿 姉すら口説き 高跳び直ぐと

 どくすひと かたきとくらす ねあかば(か あねすらくどき たかとびすぐと)


05

 叶う愛 ヨガのスタジオ 直ぐ出来て クズ押し出すの 通い合う仲

 かなうあい よがのすたじお すぐでき(て くずおしだすの かよいあうなか)


06

 打ち出づる 涙の氷 溶けば山 気取り鋒の田 実成る築地裏

 うちいづる なみだのこほり とけばや(ま けどりほこのた みなるついぢう)


07

 帰化人が 日本安心 見出した 移民新案 帆に漢字書き

 きかじんが にほんあんしん みいだし(た いみんしんあん ほにかんじかき)


08

 人災だ 直ぐ解散だ 相異ない 嘘断裁か クズ退散し

 じんさいだ すぐかいさんだ そういな(い うそだんさいか くずたいさんし)


09

 過ぐ罪を 漕ぎ行く船の 結指す座 地下の合歓崩ゆ 貴児を見尽くす

 すぐつみを こぎゆくふねの けちさす(ざ ちげのねぶくゆ きこをみつくす)


10

 疫に加護 水神祭 月の夜の 屹立卍 何処かに消え

 えきにかご すいじんまつり つきのよ(の きつりつまんじ いずこかにきえ)


11(311)

 午後パージ 彼縛る技 レア過ぎず アレ触るは死 レガシーは此処

 ごごぱーじ かれしばるわざ れあすぎ(ず あれさわるはし れがしーはここ)


12

 噛む演技 諫める舞台 レアで待て アレいたぶる目 最近Mか

 かむえんぎ いさめるぶたい れあでま(て あれいたぶるめ さいきんえむか)


13

 タフタ着る ブタが留守では 立たないな 直泊てするか ダブル着たブタ

 たふたきる ぶたがるすでは たたない(な ただはてするか だぶるきたぶた)


  タフタ【taffeta】細い横畝(よこうね)があり、光沢と張りの強い薄地で平織りの絹織物。

  ただ‐はて【▽直▽泊て】 まっすぐ目的地へ行って泊まること。


14

 珠買うと 付ける外人 ペリドット リベンジ怒る 決闘かまた?

 たまかうと つけるがいじん ぺりどっ(と りべんじいかる けっとうかまた)


15

 唐草は 花嫁様の 葛藤と 束の間覚めよ 那覇は桜か

 からくさは はなよめさまの かっとう(と つかのまさめよ なははさくらか)16


16

 弟子ガナる 有り得た浮気 機微示し 退際歌え リアルな歌詞で

 でしがなる ありえたうわき きびしめ(し ひきぎわうたえ りあるなかしで)


17

 松に来る 人しなければ 冬の日の 夕晴れ貶し 音簸る苦に妻

 まつにくる ひとしなければ ふゆのひ(の ゆふはれけなし とひるくにつま) 


18

 飢餓の宮 野辺に小松を 引きに来に 黍を妻子に 家の闇の餓鬼

 きがのみや のべにこまつを ひきにき(に きびをつまこに へのやみのがき)


19

 霞立つ 春日野の辺の 若菜かな 川の上の野が 縋った水か

 かすみたつ かすがののへの わかなか(な かわのへののが すがつたみずか)


 かすみたつ-かすかののへの-わかなにも-なりみてしかな-ひともつむやと

  後撰集(ごせんしゅう)

  天暦九年-天徳元年(955-957年)

  巻一:春上、作品八


20

 春雨の ふらはの山に 交じり入り 島に真野の葉 裸婦の召さるは

 はるさめの ふらはのやまに まじりい(り しまにまやのは  らふのめさるは)


 はるさめの-ふらはのやまに-ましりなむ-うめのはなかさ-ありといふなり

  後撰集(ごせんしゅう)

  天暦九年-天徳元年(955-957年)

  巻一:春上、作品三十二


21(321)

 深緑 棘葉の松の影に 来に怪我の 妻の婆 気取り富籤(とみ)買ふ


 ふかみどり とげばのまつの かげにき(に けがのつまのば けどりとみかふ)

  ば【婆】

  とみ【富】 3 「富籤 (とみくじ) 」の略。


22

 夕毎に 咲き優る雪 華やぐ屋 名は消ゆる様 詭詐に常冬

 ゆふごとに さきまさるゆき はなやぐ(や  なはきゆるさま きさにとこふゆ)


23

 穂の増ゆる 霞の三日は 瞞(まやかし) か 山は神の身 縋る夕の火

 ほのふゆる かすみのみかは まやかし(か やまはかみのみ すがるゆふのほ)


24

 太々し 隙行く駒の 映ゆる春 弓場の馬子蹴ゆ 舞ひし蝶々

 ふてぶてし ひまゆくこまの はゆるは(る ゆばのまごくゆ まひしてふてふ)


  ※ ひま-ゆく-こま 【隙行く駒】

    映ゆき時


25

 駆る血気 戦う女 苦役解く 厄難謳歌 叩き付けるか 

 かるけっき たたかうおんな くやくと(く やくなんおうか たたきつけるか)


26

 金利問う 総理大臣 左翼抜く 予算強いたり 有象と稟議

 きんりとう そうりだいじん さよくぬ(く よさんしいたり うぞうとりんぎ)


27

 覚悟出来 リタイアしたし ドブ川か ふとした試合 他力で漕ぐか

 かくごでき りたいあしたし どぶがわ(か ふとしたしあい たりきでこぐか)


28

 厳しくも 桃の初花 満つる春 罪な初端の 腿も櫛引き

 きびしくも もものはつはな みつるは(る つみなはつはの もももくしひき)


29

 晴れな夜の 右手に闇の 光借り 華美の宮にて 君の世なれば

 はれなよの みぎてにやみの ひかりか(り かびのみやにて きみのよなれば)


30

 貼る弓に 床身の母の 際の背の 萩の葉々のみ 古都に見ゆるは

 はるゆみに とこみのははの きはのせ(の はぎのはばのみ ことにみゆるは)


31

 照りつ空 此処に忌有る身 浸かりきり 且つ見る秋に 心映りて

 てりつうろ ここにきあるみ つかるな(る かつみるあきに こころうつりて)


32

 依怙の恋 麻薬日々にと 苦難譚 泣く戸に響く 山彦の声

 えこのこひ まやくひびにと くなんた(ん なくとにひびく やまびこのこえ)

 

33

 晴れて谷 戦ぎし命 身も一日 紅葉の一色 余所の裁てれば

 はれてたに そよぎしいのち みもひと(ひ もみぢのいしき よそにたてれば)

 

34

 叢摘みも 妻の裸足の(端の刃出しの) 気は張れば(際貼れば) 萩の下葉の まつも見つらむ

 むらつみも つまのはだしの きははれ(ば はきのしたはの まつもみつらむ)

 

35

 斑弓は 咲けて魅すかも 魔や化けは 山も霞みて 今朝は見ゆらむ

 むらゆみは さけてみすかも まやばけ(は やまもかすみて けさはみゆらむ)


36

 綴れ蝸廬 十取る罌粟を また移し 霊を湿気ると 驚かれつつ

 つづれかろ とおとるけしを またはれ(ば たまをしけると おとろかれつつ)


  か‐ろ【蝸廬】

   蝸牛(かたつむり)の殻のように小さい家。また、自分の家をへりくだっていう語。

 

37

 皆血降る 弓取ったりよ こそばれ(ば 其処より立つと 見ゆる淵波

 みなちふる ゆみとったりよ こそばれ(ば そこよりたつと みゆるふちなみ)


38

 囃子間々 死招く鳴り輪を 吹け払らば 今日をわりなく 悪しまましやは

はやしまま しをくなりわを ふけはら(は けふをわりなく をしまましやは)


  朝忠集(あさただしゅう) ※966年 00043

  はなたにも-ちらてわかるる-ものならは-けふをわりなく-をしまましやは


39

 消えぬ死ぞ 益に遠きし 荒春は 久しき程に 消えぞ死ぬ疫

 きえぬしぞ えきにとほきし さひはる(は ひさしきほどに きえぞしぬえき)


40

 取る弓矢 舞二度杯の 間合い問い 天岩戸に 隙や見ゆると

 とるゆみや まひにとはいの まあいと(い あまのいはとに ひまやみゆると)


41

 吉の世の 黄蟻蹴りかけ 優形か 清けかりけり 秋の夜の月

 きつのよの きありけりかけ やさがた(か さやけかりけり あきのよのつき


42

 姿退かば 枚も得なり 黄泉の世の 身寄りなくとも 今は甲斐なし

 しなひかば まいもとくなり よみのよ(の みよりなくとも いまはかひなし)


43

 切り刺せば 依怙の香りよ 利と墓場 鳥より他の 声はせざりき

 きりさせば えこのかほりよ りとはか(ば とりよりほかの こえはせざりき


44

 カヌラして 理如かぬガキが 釘裂きさ 聞くか聞かぬか 知りて知らぬか

 かぬらして りしかぬがきが くきざき(さ きくかきかぬか しりてしらぬか)


  くき【×岫】

   1 山の洞穴。2 山の峰。

45

 続けよと 夜這る寄る夜の 皆遣れや 波の寄る寄る 早よと避けつつ

 つづけよと よばるよるよの みなやれ(や なみのよるよる はよとよけつつ)


46

 長友だ 変わる通貨の 裂く過去か 草の香移る 若袂かな

 ながともだ かわるつうかの さくかこ(か くさのかうつる わかたもとかな)


47

 夢なら去れ 民は問いの樹 悩み食み 家無きの井戸は 乱れさらなむ

 むならされ たみはといのき なやみは(み やなきのいどは みたれさらなむ)


48

 二度小冬 差あり泣く夏 葉陰池 蛙なくなり 朝夕毎に

 にどこふゆ さありなくなつ はかげい(け かはづなくなり あさゆふことに)


49

 村を庇護 川ぞ玉手で 他へ示し 隔ててまたぞ 我が恋をらむ

 むらをひご かわぞたまてで たへしめ(し へたててまたぞ わかこひをらむ)


50

 村草の 名は果て危機を 回向乞う 声を聴きては 花の咲くらむ

 むらくさの なははてききを えこうこ(う こえをききては はなのさくらむ)

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