第8話 武士の道
バサラを見送り、
もしかしたら目覚めたらもとの世界か、と淡い期待を抱いて起きたが景色は変わっていなかった。そんなことはあり得ない、とわかってはいてもまだ期待してしまう。
(いい加減、おれも受け入れないと)
バサラは難なく受け入れ、新たな目標を定めてしまった。その目標へ向かって走ろうとする彼に置いていかれたようで、焦りと寂しさはある。
しかし、焦っても仕方がないのだ。
二つともこの部屋に置かれていたもので、
(確か、光明さんはここによく居るって。……あ、いた)
幾つかの廊下と渡殿を通り過ぎ、一度侍女に道を訪ねた。彼女は快く、
目の前に目当ての人物がいる。しかしながら、
「……何をしている?」
「えっ」
思わず
「そこで棒立ちになられていても、邪魔なだけだ。用件があるのなら入って来なさい」
「……っ、はい」
ギシッと床が音をたてる。
「あのっ」
「……信功様から伺ってはいる。だが、きみ自身の言葉で用件を言いなさい」
「はい」
「……」
あくまで静かな光明の物言いに、
「おれに、刀以外で戦う術を教えて下さい」
「刀、以外でか」
呟く光明の声に、
「おれは、バサラのように動ける訳じゃありません。血を見るのも誰かを殺すのも、正直怖いです。だけど、そんなおれでも和姫はこの国を救う人物だと言って、呼んでくれた。彼女の思いに応えるためにも、おれなりに戦う術を身に付けたいんです」
お願いします、と
他人に全てを頼るのは、寄りかかるのはあまり良いことではない。それをわかっているからこそ、
「……」
「……」
「……
「はい」
「
だから、と光明は
「見定めさせてもらう。お前たち二人が、真に信じるに値する人物なのか。そして、姫様が判じた通りの人物なのか」
「――はい」
「……まずは、私の仕事を手伝え。戦い方には武器を持つ以外にもあるということを教えてやる」
「……え?」
ぽかん、と
いつまで経っても傍に来ない
「何をしている。やるんじゃないのか?」
「や、やります。やらせて下さい!」
「だったら来い。言っておくが、私は厳しいぞ」
「はいっ」
光明の傍に行った
恨めしげに光明を見れば、
(これくらい、やってのける!)
午後になり、
昼餉の間、ほとんど喋らず黙々と食す光明につられて黙っていた
「あの、光明さん」
「ついて来ればわかる。……私の仕事の一つだ」
「はい」
無口な光明を追い、
それを知ってか、光明は少しだけ歩く速さを抑えてくれた。
やがて着いたのは、信功の自室前。昨日の今日で流石に覚えていた
首を傾げる
「信功様、光明です」
「ああ、入ってくれ」
信功の許可を得て、光明は
敷居をまたいで部屋に入った
「よく来たな、
「あの、お館様。これは……?」
「新たな戦が近付いているんだ。それを知らせる
「私の仕事の一つに、我々の戦略を構築するというものもある。……どれだけ犠牲を払わず、勝利に持ち込めるのか。私たちの戦いはな、ここでするんだよ」
ここ、と言いながら光明は自分の額を指す。つまり、頭脳戦ということだ。
「烏和里のような小国が鉄を狙う国と渡り合うためには、鍛え上げられた兵力と共に作戦が重要な意味を成す。わかるな、
「……はい」
現代日本の男子高校生である
時にはあっと驚くような作戦が功を奏し、またある時は裏を掻かれて失敗する。どんな戦いであれ、参謀が重責あることに間違いはない。
どうすれば、バサラたちを無事に烏和里へ帰すことが出来るかを。
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