第75話 勇者誕生

「イルナ様大変です。神殿へ行きましょう」


 聖騎士団第四番隊、隊長のエマさんに案内されて神殿の中に入った。

 聖女が秘密にされているので、神殿の祭壇へは、関係者以外立ち入り禁止になっている。

 神殿の祭壇の横には左右二個ずつ柱の上に四つの玉が乗っている。

 左側の玉は勇者を示し、右側は聖女を示す。


 その神殿の祭壇の左側の柱の上の、光が消えていた玉が赤く輝きだしている。

 勇者の玉が青い光と赤い光で輝いているのだ。


「これは、新たな勇者が誕生したということですね」


「はい、すでに教祖様は探索隊を出しました」


「当然、私の事も秘密にしているくらいだから、秘密にしているのでしょうね」


「はい」


 私は、祭壇の右側の玉も確認した。

 こちらはまだ、黄色に光る玉があるだけで、もう一つは光っていない。

 黄色に光る玉が、天帝の聖女の存在を示している。


「どうなるのでしょうか」


 私は心配になってエマさんに質問した。


「恐らく、天帝の勇者には内緒にされて、新たな勇者が強いとわかれば、天帝の勇者と戦争を始めるのではないかと推測します」


「とんでも無いことになりましたね」


「まったくです。では、学校へ行きましょうか」


「えっ、こんな大変な時に学校なんて……」


「うふふふ、大変な事ですが、直接イルナ様には関係ありません。学校を休む理由にはなりませんよ」


「ふぐうう……」


 私は学校が嫌いなので、ことあるごとに休もうとします。

 でも、エマさんはどうしても行かせたいらしいので、休ませて貰えません。もう涙目です。


 私の通う学校は、王立の学校で国内最高の学校です。

 私は、この年になるまで学校に通った事がありませんでした。

 だから、劣等生です。

 教室も席も成績順なので、私の教室は学年で一番最後のクラスで、席も一番後ろです。

 つまり、成績の一番悪い落ちこぼれです。


 何で「お前が、この学校にいるのか?」と皆に言われます。

「聖女だから無理矢理、教団のコネで行かされているんだー」と言ってやりたいです。

 でも、聖女ということは絶対の秘密なので言えません。


 ――だから学校なんか行きたくないんだーーー!!!!


 叫んで学校なんか休みたいです。つらいです。


「おはよう、イルナちゃん」


「おはよう、アンちゃん」


 アンちゃんは私の、隣の席の女の子です。

 つまり、私が来るまで成績が一番悪かった女の子です。

 アンちゃんだけは、私にとても優しいです。

 でも、あいさつを交わすくらいで、友達と言えるほどの関係まではいっていません

 チリチリの天然パーマの赤毛で、そばかすが一杯あってメガネをしています。笑顔がとても可愛い女の子です。


「あのね、イルナちゃん今日の放課後、私の誕生会があるの、来てくださらないかしら」


「えっ……」


「やっぱりダメよね。私、学校で呼べる人が一人もいなくて」


「い、行きたいです。行かせてください」


「ほ、ほんとー、いいのー」


 私は、嬉しかった。誕生会なんて始めて誘われたー。

 招待状をもらって、うきうきしました。

 はじめて学校に来てよかったと思いました。

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