第37話 使者と領主
「取り次がぬつもりかのう。それじゃと領主様から怒られるかもしれんのう」
「お前達を取り次いだ方が怒られるわ!!」
「何故じゃ?」
「一人は、裸みたいな服を着たお色気ムンムンの美女エルフだし」
美女と言われて、コデルさんはくねくねして、行動不能になった。
「一人は、この世の物とも思えぬ程の絶世の美女だし」
シュラさんを見て褒めるから、シュラさんと、フォリスさんがくねくねして行動不能になった。
僕もシュラさんが褒められてくねくねして行動不能になった。
「一人は、いかつい、魔王の大将軍みたいな男だし」
魔王の大将軍と言われてクザンがくねくねして行動不能になった。
「二人は、ちびっちゃい、がきんちょだし」
がきんちょと、言われて僕とフォリスさんが正気に戻った。
「ねえばあちゃん、どうする。取り次いで貰えないってさ」
僕が、コデルさんに話しかけたら、コデルさんが、ばあちゃんと言われて正気に戻った。
「では、仕方が無いのう、無理矢理門を壊して入るかのう」
コデルさんが両手を挙げると巨大な魔法陣が現れて、ゴムゴムとレムレムが現れた。
「おおおおおおお」
まわりにいる人達から驚きの声が上がった。
「ほれ、アスラちゃんも、蛾のさなぎを出さんかい」
「蛾のさなぎじゃないよ、スザクだよ」
僕がスザクを呼び出した。
ゴムゴムが両手を挙げて門を破壊しようとしたら、城の窓から顔が出て叫び声をだした。
「まて、まてーーーー!!」
城のバルコニーに贅沢な服を着た、かっぷくのいい髭づらの男が現れた。
恐らく領主ルチョウさんだろう。
「ばーさんが何をしに、いまさらこんな所に来たんだよ」
顔は笑顔だった。
「ふふふ、魔王様をお連れしたのさ」
「なに!!」
ルチョウさんの顔がみるみる怒りの表情になり僕たちを見た。
そして、両手を挙げると、真っ黒な魔法陣が現れた。
「ライジング、ダークネス」
真っ黒な稲妻が僕に落ちてきた。
「バニッシュ」
その暗黒の魔法が僕の右手に吸い込まれた。
「なっ!!」
ルチョウさんが驚いている。
ルチョウさんは魔王が嫌いな人なのだろう、本気で殺すつもりだったのかもしれない。
そんなルチョウさんは、両手両足を折られて一瞬で僕の足下に転がっている。
大賢者フォリスさんが怒り、襟首を持ち連れてきたのだ。
手に暗黒の爪を装備している。どうにか殺すのだけは思いとどまってくれたようだ。
「まてまて」
コデルさんがルチョウさんと、フォリスさんの間に入ってくれた。
フォリスさんは怒りに、全身が震えている。
「魔王、お前はレベル1じゃないのか」
ルチョウさんは、鑑定が使えるらしい。
「きさまー、最初に言う言葉がそれかー!!」
フォリスさんが激怒している。
「うっ」
十二歳の少女姿のフォリスさんの剣幕に、大の大人がひるんでいる。
「フォリスちゃんが怒るのも無理ないのう。ルチョウ、今ここでこのまま死ぬか、わしの話しを聞くかどちらか選択せい」
「ちっ」
ルチョウが舌打ちをした。
「うわああああーーーー」
フォリスさんが、泣きながら暗黒の爪を突き刺そうとした。
僕が慌ててフォリスさんを止めた。
「なぜ、止めるのですか。アスラ様許せません、許せません!!」
「ルチョウ、あんた、本当に死にたいのか。鑑定でこの少女を鑑定してみな」
「なっ、九百九十九」
「あんたが、どれだけ魔王を嫌いなのかは知らないけど、僕はその魔王とは別人です。それでもなお、話しも聞かず殺そうとするのなら、僕もあなたを許しません」
ルチョウは、コデルさんの顔を見た。
「わしが、森から出てまで協力しようと思ったのじゃ。先入観なく話しを聞いてはくれんか、なあルチョウ」
「……うむ、わかった」
僕は、ルチョウさんを治癒してけがを治した。
ルチョウさんは一瞬不思議そうな表情をしたが、すぐに立ち上がった。
「お前達、武器をしまえ。この方達は私の大切な客人だ。失礼のないようにしろ」
僕たちを囲み、槍を構えている衛兵達に、武器をかたづけるように指示した。
そして城内に案内された。
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